マンションの駐車場に「空き区画」が増えている事情

 

一昔前までは、「一家に一台、車があるのは当たり前」でした。そのため、駐車場の附置率が低い新築分譲マンションは、販売に苦戦しがちでした。また、購入後の抽選に外れた人たちのために、ウェイティングリストができるのが珍しくなかったのです。

中古物件が掲載されたチラシも、駐車場の欄は「空きなし」が通り相場だったと思います。

ところが、近頃は「空き有り」の割合が、明らかに増えてきました。

私の知っている管理組合でも、この問題に直面しているところは少なくなく、ひどい場合には全体の半分近くが空いているマンションもあります。

なぜこのような現象が起きているのでしょうか? 主な要因を整理してみました。

 

●大都市圏で顕著に見られる車離れ傾向

一般財団法人「自動車検査登録情報協会」が毎年発表している「世帯当たりの自家用車保有台数」の推移を見ると、2006年(3月末)の1.112台を記録した以降、頭打ち傾向にあり、2013年(3月末)は1.083台にとどまっています。

ただ注目すべきは、大都市圏の状況です。例えば東京都では、1996年:0.58台2012年:0.48台、神奈川県では 1996年:0.82台2012年:0.75台と、全国平均に比べて保有率の減少傾向が明確に現れていることが分かります。

この原因としては、人口の高齢化、若い世代の収入減、電車等の交通機関の充実などが考えられます。

 

●機械式駐車場の制約と利便性

マンションの場合、敷地の制約がある中、建物を容積率目一杯建てることが通常なので、駐車場などの付帯施設に供するスペースがどうしても制限されます。

その結果登場したのが、2段あるいは3段のピット式に代表される機械式駐車場です。台数は確保できるものの、サイズや重量の制限があるうえ、下段部分の出し入れに時間がかかるなどの使い勝手の面で問題があります。

その結果、「同じ料金なら、外の青空駐車場でも借りるか」という方もいらっしゃるわけです。

 

●硬直化しがちな管理規約・使用細則

マンション内の駐車場をいくらで誰に貸すかについては、管理規約や共用部の使用細則で定められています。

ただ、もともと住人である区分所有者が決めた条件ではなく、分譲業者や管理会社が新築当時の周辺相場などをもとに設定した条件であるのが一般的です。

そのため、たとえ相場が下がっても、管理組合として柔軟に使用料金を見直そうという動きにつながらず、そのまま問題が放置されがちです。

管理組合の会計においては、駐車場の使用料金はその収益に少なからず貢献しているので、空き区画が一定割合を超えると、赤字に陥ることになります。したがって、最終的には管理費や修繕積立金を値上げを余儀なくされることになります。

住人の立場では「安くて便利な方がよい」かも知れませんが、結局まわりまわって自分の負担が上がっていくことになるのです。

世間動向としては、人口が減少する中、今後も車の保有率や保有台数が下がりこそすれ、回復する可能性は期待できないと考えざるを得ません。

「右肩下がり」の時代に突入したことで、マンション管理組合の運営は今後ますます難しくなり、「経営力」が求められることになるでしょう。

 


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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