マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
6月16日付けの「NHK News Web」で「耐震性ある老朽化マンション建て替え所有者5分の4合意で可能へ」という記事が掲載されていました。
本記事の概要は以下の通りです。
■ 耐震性を有する場合の老朽化マンションの建て替えを促進するための法改正案が16日の衆議院本会議で可決・成立した。
■ その結果、建物と一体で敷地を売却する場合の要件である「所有者全員」の合意が「5分の4以上」に引き下げられることになった。
■ 耐震性が不足している老朽マンションについては、すでに建物や敷地の売却が所有者の5分の4の合意で可能となっていたが、耐震性があるマンションの場合は所有者全員の合意が必要で、老朽化が進んでいても合意形成が進まないことが課題となっていた。
■ 6月16日に成立した改正法は、今後1年半以内に施行される。
マンション建替えに関する現行法の状況は、下の図の通りです。
ご承知の通り、マンションの建替えは、管理組合の決議によって区分所有者全体の5分の4以上の賛成がないと成立しません。
それだけでも十分ハードルが高いのですが、建替えを実現したくても、容積率の割増しなどの優遇措置がないと区分所有者の資金不足がネックになって合意形成が進まないという問題ものしかかってきます。
そのため、老朽マンションの建替えは一向に進んでいません。
実際のところ、築40年以上の老朽マンション56万戸のうち、建て替えが実現したのはたった3%(1.8万戸)に過ぎません。(2016年国交省調べ)
そのため、現実的に建替えが難しいならば、いっそのこと建物を解体して敷地売却したうえで管理組合を清算するという選択肢もあったほうがよいわけです。
しかし、マンション解体後の敷地の処分に際しては、(区分所有建物がないので)区分所有法のもとではなく、民法の定めに従うことになります。
そのため、民法の「共有物の処分」に該当し、敷地の共有者(=元区分所有者)全員の賛成が必要になるというわけです。
そうなると、ますます区分所有者間の合意形成が困難になるのは明らかで、事実上老朽マンションは建替えも敷地売却のどちらにも進めない「出口なし」の状況に陥ってしまいます。
そこで、2014年の法改正によって、旧耐震でかつ耐力が不足しているマンションについて、建物解体後の敷地を「5分の4以上の賛成」により売却できる制度が施行されたのです。(下記ブログ参照)
そして、6年前の法改正に続いて、今回は敷地売却の要件緩和の対象が、耐震性のあるマンションまで拡大されることになったのです。
ただし、「外壁がはがれ落ちるなど周辺に危険性があるマンション」という要件を満たす必要があるとのことです。
この要件が意味するところとは、
資金不足のために維持修繕が満足にできなかったり、管理組合が適正に運営されていない管理不全のマンションなども対象にするということでしょう。
新耐震基準を満たす建物は、1981年6月以降に確認申請していることが要件とされています。
つまり、新耐震マンションの最高齢は、今年で築39年を迎えることになります。
したがって、新耐震基準を満たしていても、資金面や運営面で問題を抱えるマンションも対象に、建替え以外の出口戦略を用意しなければならないのは当然でしょう。
今後は、わが国もますます人口減少の傾向が強まり、地価を含む不動産価格が下がることはもはや避けられないと思います。
地価が大幅に下がれば、老朽マンション解体後にそのまま同じものを建て替えなくても、たとえば戸建て住宅として再開発することも考えられるようになるでしょう。
「老朽マンションの出口戦略」については、建て替えに固執せずに現実的な選択肢を提供するよう適宜見直してもらいたいと思います。
<参考記事>
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