「駅前再開発型」マンションの購入は慎重に!

マンションを選ぶ際に立地など利便性を重視する人は多いでしょう。しかし、駅前や駅近の用地は限られ、好立地で新規に供給されるマンションは、むしろ希少価値があるといえるかもしれません。

そのため、駅前の再開発などで建てられるマンションは人気が集まりやすく、相場より割高でありながら即日完売する事例も多いようです。ところが、再開発ならどこでもうまくいくというわけではなく、特有の問題が生じてしまうケースもあります。

 

駅前の再開発マンションでは、地権者の姿勢が将来性を左右する

再開発に着手する前は「古くからある駅前商店街だった」という場合が多く、そのときは地主や商店主などが地権者(権利者)として再開発事業に加わることが少なくありません。「等価交換」によって無償で、再開発後のマンションの1階や2階または地下階に店舗を持ったり、住宅部分の1部屋あるいは数部屋を得たりするのです。

そして、もとの地権者は再開発で新たに得たお店や住まいに家賃がかからないため、あまり繁盛しなくても生活に困らず、経営に身が入らないこともあるようです。余った部屋を第三者に貸して賃料収入があればなおさらです。さらに、再開発前が寂れた商店街だったときには、地権者らがもともと商売センスや熱意を持ち合わせていない人たちのこともあるでしょう。

そのような人たちが再開発マンションの下層階で店舗を開くことにより、完成してから数年のうちにマンションそのものが寂れた印象になってしまうこともあるのです。地権者の店舗部分も管理費や修繕積立金は負担するわけですが、次第に寂れて客足が遠のき、経営が危なくなってくると、それらが滞納される事態も考えなければなりません。

以前、自らの店舗経営を諦めた複数の地権者が、相手先を考えずにこぞって貸し出したため、消費者金融業者の店舗ばかりになってしまった駅前再開発マンションの事例もありました。

また、もとの地権者用の店舗を優先した動線設計とすることにより、一般居住者用のエントランスが建物の裏側に設置されるなど、思わぬ不便を強いられることもあります。

マンションの印象を大きく左右する店舗部分に活気がなくなったり、おかしな方向に向かったりすれば、将来的な資産価値にも少なからず影響を及ぼしそうです。

 

店舗併設の再開発マンションは、商圏の将来性も考えてみるべき

もちろん全体の割合や確率で考えれば、成功する再開発マンションのほうが多く、もとの地権者が原因となる失敗のリスクはそれほど大きくないのかもしれません。しかし、「駅前再開発なら価値が高い」とばかりに飛びつくのは危険だというべきでしょう。

もとの地権者などが、しっかりとした経営者揃いだったとしても、これからの人口減少など社会構造の変化の中で、衰退が免れないケースもあるのです。

もし、これから駅前再開発による新築マンションの購入を検討するのであれば、「再開発以前はどのような状態だったのか」「地権者などが再開発後のマンションにどう関わるのか」「店舗などが今後も継続できる商圏を抱えた街なのか」「その駅自体の将来性はどうなのか」などについて考えてみることが欠かせません。

 


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平野 雅之

平野 雅之

不動産コンサルタント会社リックスブレイン代表・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター。東京・神奈川を中心に20年以上にわたり不動産売買取引の仲介業務に従事。豊富な実務経験をもとに、現実に即した実践的なアドバイスなどを一般消費者向けに提供しています。総合情報サイトAll Aboutで「不動産売買」のガイドを務めるほか、HOME’S、Yahoo!不動産など数多くのメディアで情報を発信。不動産購入、売却などに関するセミナー講師も担当しています。

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