マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
7月12日付の日本経済新聞に、「マンション管理組合 空き家に苦慮 住民の危機感薄く 専門家登用進まず」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は、以下の通りです。
■ マンション内の空き家が問題になり、管理組合が対応に苦慮している。住民の高齢化や役員のなり手不足で、機能不全に陥る管理組合も目立つ。
■ 国は外部専門家の登用を推奨するが進んでいない。住民の当事者意識が乏しいことが背景にある。
■ 6月下旬、都内マンションの理事会では、昨年亡くなった住民の管理費等が未納になっている。未納問題がこじれている原因は、住民の娘が相続放棄しているためだ。
■ そこで管理組合は、競売を視野に「相続財産管理人」を選ぶことを理事会で決議し、今後、臨時総会の開催日を詰めることとした。
■ 東京都マンション管理士会も、「親のマンションを子が相続放棄する例が増えている」と証言する。
■ マンションで空き家が増えると、管理費・修繕費が集まらなくなる。修繕計画など重要事項が決められなくなり、マンションの存続が危うくなる。■ 一方、住民の高齢化で役員のなり手がいないなど、組合運営が難しくなるところも目立つ。こうしら組合では、外部の専門家にマンションの運営を委ねるところも出始めた。
■ 都内のマンション(築37年・35戸)の総会では、マンション管理士が理事に就任することが決まった。住民の高齢化が進むだけでなく、区分所有者の外国人比率が半数近くを占め、総会の出席率も低迷している現状を打破することが目的だ。■ 国交省は2016年、管理組合の規約づくりのモデルとなる「標準管理規約」を改訂した。外部の専門家を理事長や役員に活用することを盛り込んだ。
■ 組合に第三者が加わることで、住民の合意形成が円滑に進むケースもある。都内のマンション(築46年)では、長らく高額の耐震工事の実施に理解が得られず頓挫していたが、2年前にマンション管理士が理事長に就任してから賛同が増え、8月の総会で工事が決まる見通しだ。
■ ただ、こうした専門家の登用はまだ少ない。国交省の18年度調査では、実際に選任した割合は3%にとどまる。
■ 外部登用が進まない理由の一つは費用だ。マンション管理士など専門家を役員に招けば月額3万~11万円の報酬が発生する。東京都調布市のマンション組合理事長は「役員にはならない、お金も出さない、といった住民が多い」と嘆く。
■ 住民と管理組合の危機意識も乏しい。自治体からの専門家の派遣を希望するのは運営に熱心な管理組合からばかりで、リスクが高い組合からの応募はないのが実態だ。
相続放棄問題については、本ブログでも、マンション管理組合にとって近い将来深刻化するのは確実としてすでに何回か取り上げています。
<参考記事>
竣工当初からの徴収額が少なすぎるがゆえの修繕積立金の不足問題など、もともと管理組合は宿命的とも言うべき大きなリスクを抱えていますが、少子高齢化の影響から所有者不明や相続放棄のリスクが今後新たに加わることは間違いないでしょう。
最大の問題は、
これを解決する主体は誰なのかが不明ということです。
管理会社はまず対応できない、でしょう。
本テーマに関する勉強も、備えもまずしていないですから、せいぜい顧問弁護士を紹介するくらいしか期待できません。(当然別途費用がかかります。)
そうなると、管理組合の役員が自ら行動するしかありません。
しかし、実際どこまでできるかはかなり疑問です。
まず、どこから手を付けたらよいかが分からないはずです。
相続放棄された住戸が現れた場合、滞納管理費の債権者として管理組合が自ら家裁に申立てを行い、相続財産管理人を選任してもらうまでのプロセスや必要な費用を理解しなければなりません。
管理人を選任するためには、100万円程度の予納金を納める必要があると言われています。
そうなると、管理組合からその出費ができるように臨時総会を開催しなくてはなりません。
こうした一連の手続きを円滑に行うことが、区分所有者間を輪番制で回しているのがもっぱらの組合役員にできるとは思えません。
そろそろ管理組合の運営について真剣に外部専門家の登用を積極化していくスキームを選べるよう国も本腰を入れる必要があるのではないでしょうか。
これまでの長らくの間、マンション管理組合の運営は区分所有者自身が主体的に行うことが暗黙の前提とされてきました。
いわば「管理組合自治主義」です。
それは、国交省が定めた「標準管理規約」を読めば一目瞭然です。
管理組合の役員は、区分所有者にしか就任資格が与えられていません。
マンション管理士などの外部専門家が理事長などの役員に就任しようとすれば、この管理規約を改正する必要が出てきます。
それを実現するには、
全区分所有者の4分の3以上の賛成を集めなくてはなりません。
しかし、本記事にも紹介されているように、外部専門家の導入が必要なマンションほど、無関心層の存在や所有者が不明などの事情でこの規約改正を実現できないという厄介な事態に直面するわけです。
したがって、現状の標準規約については、将来の運営体制転換のための大きな障害にならないよう、(区分所有法と同様に)役員の資格要件を区分所有者のみに限定しないようにするなどの見直しをすべきでしょう。
すなわち、管理組合自治主義から「所有と経営の分離」への転換を促すわけです。
そして、このパラダイム転換に備えて、実務に強くて管理組合が頼れるプロのマンション管理士を育成する仕組みを構築することが重要です。
Copyright © ilodolist All rights reserved.