マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
6月29日付けの日経新聞に、「マンション所有者「不明」増加 管理組合決議から除外案」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
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■ 東京都ではマンションの空室状況に関する聞き取り調査の結果、2021年末時点で1万棟弱の約30%が空室を抱えており、「空室割合が不明」と答えたマンションも約1割の1,000棟以上もあることがわかった。
■ 2018年度に実施した国交省による全国調査においても、回答した管理組合の約3割に空室があり、4%弱は所有者の所在なども不明であることがわかった。その後の老朽マンションの増加を踏まえると、所在のつかめない所有者は確実に増えている。
■ 所在不明者が増えると、管理費等の滞納で組合財政が悪化するうえ、重要事項を決める決議ができなくなるという問題が生じる。マンションの意思決定は区分所有者の多数決によるが、重要事項の決議は「全体の4分の3以上」など高いハードルが課せられる。
■ ただ、現行法では所在不明者も承認要件を判断する際の「分母」に含まれる。共用部の変更や建て替えなど賛否が拮抗する重大決定では、不明な所有者がある程度の規模に達すると、決議はほぼ不可能な状態に陥る。
■ 国もこの問題を重視し、ある政府関係者は「都市部では、マンションが地方に匹敵する所有者不明の不動産問題に発展しかねない」と危惧する。
■ 法務省、国交省も加わる有識者研究会では、所在不明の所有者をマンションの総会決議の分母から除外する方向で議論が進んでいる。
■ これが実現すれば、所在が明らかな所有者だけで一定の賛成を集めれば意思決定が進む。一方、所在不明の所有者の権利保護にも配慮し、裁判所など公的機関の関与の下で除外する方向だ。
■ ただ、何をもって所在不明と判断するか、除外する決議の対象や期間をどうするかなどはなお調整を要するため、2022年度中に論点を整理した後、法制審議会(法相の諮問機関)での法制化検討へ移る予定だ。
■ 本年4月に始まった「マンション管理計画認定制度」の認定基準には「組合員・居住者の名簿を備え、年1回以上は内容確認する」ことが盛り込まれた。管理不全のマンションの拡大を防ぐには、個人情報保護などの点から所有者情報の把握に及び腰だった管理組合が変わる契機となる政策をさらに推進する必要がある。
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管理組合の意思決定は、組合総会における多数決で行われますが、決議する事項によってその成立要件が変わります。
<下図参照 出典:日本経済新聞>
規約の変更、大きな共用部の変更は特別決議事項に該当するため、区分所有法では 「3/4以上の賛成」が必要と定められています。
上記を除く管理費等の改定や管理委託契約の締結などは「普通決議事項」とされ、 原則として「過半数」で成立します。
ただ、ここで注意すべきポイントがあります。
普通決議事項と特別決議事項では、賛成比率を計算する際の「分母の対象」が以下の通り異なるからです。
・普通決議の「分母」= 出席とみなされた区分所有者の数
・特別決議の「分母」= 区分所有者全体
ここで話をわかりやすくするため、40戸のマンションで、1戸に1個の議決権が割り当てられ、複数住戸の所有者はいないケースを想定してみましょう。
そして、このマンションで組合総会が開催され、出席者や委任状・議決権行使書の提出を含む「みなし出席者」が全体の8割に相当する「32名」だったとします。
その場合、普通決議事項については、「みなし出席者」(32名)の過半数の賛成があれば成立しますから、成立に必要な賛成は「17」以上となります。
つまり、全体戸数(40)に対して42.5%の割合でクリアできるわけです。
一方、規約の変更などの特別決議事項の場合、(議決権総数40の3/4に相当する) 30戸以上の賛成が必要になりますから、この議案を成立させるにはみなし出席者 (32名)のうち2名の反対しか許容できないことになります。要するに、総会に参加した区分所有者の中では、30 ÷ 32 ≒ 93.8%以上という非常に高い賛成比率が求められるわけです。
もし、このマンションで所在不明者が総戸数の2割にあたる8名いた場合、まさに上記と同じ状況に陥ることになり、特別決議事項を成立させるのが非常に困難になることがわかるでしょう。
一方で、この所在不明者が「分母」から除外されれば、議決権総数は40→32と減らせるので、24以上の賛成が得られれば成立することになります。
そのため、国で検討中の法改正の方向性には基本的に賛成です。
ただ、実際に所在不明の判定基準をどのように設定するかについては、私権の制限や個人情報の保護にも関わるため慎重に取り扱う必要がありますから、今後の動向に注目したいと思います。
<参考記事>
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