
神戸市が、全国で初めてタワーマンションの空き部屋を対象とした「空室税」の検討を始めたという記事が話題になっていますね。
<参考記事>
神戸市で検討されている「空室税」とは、タワーマンションの適正管理を維持する観点から当該マンションの「空き部屋の区分所有者」に対して条例にもとづき課税する「法定外税」とされています。
タワーマンションの空室は、転売を目論んでいる投資家が購入しているケースが多く、竣工後も居住されずに空き家のまま放置されている事例が目立っているようです。
そのため、将来への懸念として、タワマンに空室が増えると修繕や解体の際の合意形成が困難になり、修繕積立金の引き上げもできない恐れがあるとの指摘が挙がっているとのことです。
そのため、マンションの適正管理を促すとともに長期的に持続可能な都市づくりを目指す神戸市では、これらへの対応の財源として「空室税」の導入を検討しているようなのです。
新聞記事等によると、「空室税」の税収の使途について、神戸市は以下の目的を想定しています。
・マンション管理の専門家派遣
・防災、防犯整備費用
・修繕費用の補助
この制度を聞いて思い出されるのが、
2015年に施行された「空き家対策特別措置法」です。
空き家が適切に管理がなされていない場合、「保安上危険」「衛生上有害」「景観を損なっている」という理由で、行政から「特定空き家」に指定され、かつその後も行政の助言や指導にも従わなかった場合、(固定資産税の居住用地への軽減特例が受けられなくなるため)固定資産税と都市計画税の負担が6倍に増える、というものです。
なお、2023年12月の法改正により、「特定空き家」の前段階である「管理不全空き家」に指定された場合も、同様の措置が取られることになりました。
今回のタワマンの空室税は、これと類似した制度のように思われます。
ただ、タワマンの場合、上記の管理不全空き家の制度と決定的に違う点があります。
それは、たとえ空室のまま放置していたとしても、その区分所有者は維持修繕のためのコストとして管理費と修繕積立金を管理組合に納付する必要がある、ということです。
その区分所有者が管理費等を滞納しない限り、少なくとも建物共用部分の維持修繕問題は基本的に発生しないはずです。
また、「空室税」の使途として、建物の修繕費の補助や防災費用などが想定されていますが、これも一義的にはそのマンション管理組合の責任問題です。
ちなみに、私が考える分譲マンションの「空き家」問題とは、所有者が亡くなった後、相続放棄されたことで区分所有権を承継する人が見つからないため、管理費等の滞納が溜まっていくことで財政が悪化していくケースだと思います。
<参考記事>
なお、「空室税」の課税に関する実務的な問題として、所有する部屋に住もうが住むまいが、セカンドハウスで使おうが、他人に貸そうが、それぞれその時々の個人の事情もあるにもかかわらず、何を判断基準として課税するのかについてはいろいろと疑問も湧いてきます。
もし、投資目的のマンション購入自体が好ましくないと考えるのであれば、マンションを販売するデベロッパーを対象にしかるべき規制を検討すべきではないでしょうか。

村上 智史

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