【理事長のギモン】大規模修繕工事の資金が足らない時はどうすればよい?

9月23日付けの東京新聞に、<プロに聞く くらしとお金の相談室>マンション修繕費が不安」と題した記事が掲載されています。

 

<参考記事>

www.tokyo-np.co.jp

本記事の要約は以下の通りです。

<相談内容>

マンション管理組合の役員に就任することになった。今後、建物の老朽化とともに修繕や改修工事が必要になるが、その資金を準備できるかどうか不安。資金繰りに困ったらどう対処すればよいか?

 

<回 答>
マンションは建物の劣化に加え、所有者の住民も高齢化するという二つの老いの問題を抱えているため、修繕計画をもと早いうちから資金準備を始める必要がある。

共用部分の修繕項目は、給水管や排水管の更新のほか、外壁や屋根防水の補修、エレベーターのリニューアル、機械式駐車場の交換、インターホンや自動ドアの更新など多岐にわたるうえ、将来的に工事費が高騰する恐れもある。

共用部分の維持管理に欠かせないのが、毎月払う管理費と修繕積立金である。工事資金を確保するためには、まずは修繕積立金の値上げもしく一時金を集める方法がある。

ただ、高齢化世帯が増えると各所有者もお金に余裕がなくなるために値上げが難しくなり、滞納の問題さえ出てくる。後になって急に値上げでするのではなく、計画的に早めに決断することが肝心。

金融機関から資金を借り入れもできるが、積立金残高が少なかったり、滞納者がいると審査の際に支障が生じることもあるので注意が必要。

そのほかに、使える資金を増やす方法として遊休化している共用施設の有効活用があある。駐車場の空き区画を外部に貸したり、自転車置場や洗車スペースにして利用料を取るという例もある。自動販売機を設置すれば売上の一部を得られ、住民の利便性も高められる。

一方、無駄な支出を抑えるのも大事。無駄な保険の補償が付いている、管理会社への委託費が適正か見直すこと。工事の発注も複数の業者の見積額を比較して検討するなど。
いずれにしても、長期的な修繕計画をきちんと作り、どのくらいのお金が必要なのかを見える化して、住民の合意をつくっていくことが大切。

 

私の顧問先では、

来年に大規模修繕工事を実施する予定のマンションが4件控えています。

 

上記のうち2件については、

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の共用部リフォームローンを活用する予定です。

 

つまり、工事用の資金に余裕がない、もしくは足らないので借入れを行うということです。

 

ちなみに、上の記事のアドバイスにもある、管理委託費・マンション保険・電気料金などの維持管理費の適正化はいずれも実施済みです。

 

また、長期修繕計画の資金需要をふまえ、修繕積立金の増額改定も実施しています。

 

「それでも借入れが必要なのはどうして?」と思われるでしょう。

 

その理由は2つあります。

 

一つは、新築当初から長期にわたって修繕積立金の徴収額が低く抑えられていたからです。

 

一般的な仕様の分譲マンションなら、1平方メートル当たり毎月200円必要なのに、50円~90円ぽっちしか集めなければいずれ足らなくなるのは小学生でも想像できる話です。

 

その結果、多くの住民が資金不足に気づく築20年目の頃には、積立金を3~4倍以上にしなくては到底追いつかないことがわかって皆さん慌てるわけです。

 

ただ、そんな組合の事情はお構いなしに建物の老化・劣化は日々進行していきます。

また、修繕積立金を増額したとしてもただちにそれが預金残高に反映されるわけではありません。

 

ここで注意してほしいのは、

資金がないからと言って大規模修繕工事の時期をいたずらに遅らせるのはリスクが大きいということです。

 

建物の劣化防止のための最大のポイントは、防水機能の回復です。

 

屋上防水、外壁タイル目地のシーリング、バルコニー・廊下・階段部長尺シートといった箇所の劣化部分を経由して雨水等が侵入すると、コンクリートが中性化します。

 

中性化してもコンクリート自体の強度は変わりません。

問題は、内部にある鉄筋が酸化して錆び始めることです。

 

これを放置すると錆びた鉄筋の体積が増えるため、

最終的にはコンクリートを破壊する「爆裂」現象を引き起こします。<下図参照>

 

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爆裂が発生したら、計画通りに予防保全的に修繕している場合よりも当然修繕費も増大します。

 

計画的に修繕する場合は、複数の業者から相見積もりを取得してコストを抑えることも可能ですが、事態が深刻化してから手を打つとなるとそんな余裕はありません。

 

さらに言えば、それは建物自体の寿命を縮めるだけでなく、場合によっては外壁等が剥落して居住者や外部の通行人に危害を及ぼすリスクも抱えることになります。

 

そのため、建物劣化診断で早期に修繕を実施すべきとの判断が下された際には、たとえ借入れしても資金を早期に確保のうえ大規模修繕を実施するよう進めるべきです。

 

住宅金融支援機構の「マンション共用部リフォーム融資」は、無担保・長期固定金利で最大10年間借りることができますし、現在1%を下回る「低金利」です。

(9月1日現在で年利0.68%)

 

なお、支援機構が発行する「すまいる債」を一口(50万円)所有していれば、上記からマイナス0.2%の金利優遇が受けられます。

 

<参考サイト>

www.jhf.go.jp

 

しかも、東京都の場合、支援機構からの融資を前提に最大1%の支払利息の助成金が受けられる制度もあるので、「実質金利負担なし」にすることもできます。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

これを利用しない手はないでしょう!

 

ただし、当然ながら「無条件」で融資を受けられるわけではありません。

 

たとえば、

・毎月の返済額が毎月徴収する修繕積立金額の80%以内になること。

・修繕積立金の滞納割合は原則として10%以内であること。

などの前提条件をクリアしなくてはなりませんので、詳細は上記サイトページでご確認ください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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