民泊ビジネスの波をマンション管理組合は水際で食い止められるか?

東京・大田区で、外国人観光客らを民間住宅に有料で泊める「民泊」を認める条例が、1月29日に施行されました。

【参考記事】
分譲マンション住民 「民泊」お断り続々 大田区の認定条例あす施行

個人が手軽に空き家・空き部屋を使い、利用者を泊めることで収入を得る民泊ビジネスが世界的に普及しつつあります。

ネット上で大家と宿泊客との間を仲介するマッチング・サイトの最大手がAirbnb(エアビーアンドビー)です。すでに登録物件数は世界に150万軒以上、日本でもすでに1万3千軒〜2万軒以上にのぼると言われています。(平成27年8月現在)

わが国の場合、近年の急激な円安の影響もあり、外国人観光客の流入が大幅に増加し、ホテルの稼働率が上昇するだけでなく、宿泊施設の不足と料金の高騰にまで及んだ結果、国内のビジネス客が宿泊予約を容易に取れない事態に陥っています。

【参考記事】
あのアパホテルが一泊3万円!爆買い中国人殺到で東京・大阪は泊まるところがない

さらに、2020年の東京五輪開催に向けてインバウンド観光客の更なる増加が見込まれる中、供給対策としてのホテル建設には時間を要するため、国もこの民泊ビジネスの活用を政策として取り入れ大田区以外にも大阪府、京都市などを「国家戦略特区」に指定するとともに、旅館業法の適用対象外として規制を緩和したうえで民泊の認可とその要件を条例として定めるに至ったようです。

一方、この民泊ビジネスは賃貸不動産オーナーからすると耳寄りな話で、昨今空き家問題が深刻化しつつある中、場合によっては賃貸事業以上に収入を増やせるチャンス到来ということで注目しています。

そのため、交通便に恵まれた都心部などの好立地にある分譲マンションも、この民泊ビジネスの対象になるのは確実なのですが、そこからが問題です。

賃貸マンションオーナーにとって民泊は収益拡大のチャンスであるかもしれませんが、あくまで自己居住が目的で日々平和に暮らしたい区分所有者にとっては、決して穏やかな話ではありません。

宿泊客がマンションに出入りすることによって、騒音、ゴミ廃棄や共用施設の利用に関するマナー違反といったトラブルはもちろん、場合によっては火災などの事故、あるいは犯罪の温床になるリスクも懸念されるからです。

ちなみに、

国交省が提示している現行の「標準管理規約」では、以下のように定められています。

第12条(専有部分の用途)

区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

<※本条に則したコメントとして「住宅の使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって、利用方法は、生活の本拠があるために必要な平穏さを有することを要する。」との補足がなされています。>

そもそも民泊が旅館業法に抵触するかどうかはさておき、これを読む限り「専ら住宅」として使用してさえいれば、時折は民泊に利用してもよいと解釈できそうです。

では、管理組合として正式に管理規約に「民泊禁止」と明記したらどうなのでしょうか?

残念ながら管理規約は法律ではなく、区分所有者間で守るべき「規範」にすぎません。したがって、これに違反しても原則として刑罰や罰金の対象とはなりえません。

そのうえ、少なくとも現状における多くの管理組合の運営体制を前提とした場合、Airbnbのようなマッチングサイトで取引が成立して、部屋の鍵が貸し出されてしまったら、宿泊客の利用を水際で阻止することはまず不可能ではないかと思います。

シェアハウス問題に続いて、また管理組合は頭の痛い難題を抱えることになりそうです。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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