マンション修繕積立金の増額幅を大幅に圧縮できたワケ
2025/01/06
5/31に放送されたNHKの「クローズアップ現代+」では、マンション管理組合の運営リスクに関わる最新の状況が取り上げられていました。
この番組は概ね以下のような内容でした。
■ マンションの空室が増加傾向になる中、所有者不明や管理費滞納の問題が発生している。東京都新宿区にある築30年以上のマンションでは、空き部屋の所有者が管理費などを4年半も滞納していた。理事長はマンション管理士に助けを求めたところ、部屋の登記簿を通じてようやく所有者の親族を探し当てることができた。
■ その所有者の親族によると、4年前に所有者が地方の実家に帰った後にその部屋の管理を任されたとのこと。所有者本人に売るつもりがないため、そのままにしているという。この管理組合では、所有者の親族と滞納されている管理費の支払いについて協議を続けていくという。
■ こうした賃貸や販売に出ていない「埋もれた空室」は、東京23区内で5000戸にものぼり、最も多いのは新宿区だという。
■ 世代交代による相続放棄の問題も生じている。マンションの所有者が借金を抱えて亡くなった場合、相続人が借金を嫌って相続放棄するとマンションの部屋の所有権が宙に浮くケースがある。マンション管理士が相談を受けたマンションの部屋の所有者は5か月前に死亡しており、親族からは相続を放棄したので関係ないと告げられた。
■ 管理組合自身が部屋を一旦取得して売却することも考えた。しかし、その場合には家庭裁判所への申立てが必要なため、専門家に依頼する必要があり、100万円ほどの費用がかかる。また、たとえ売却できたとしても、所有者の借金返済にも充てられて、全額を回収できない可能性がある。
■ 建設ラッシュから約10年。これから一斉に修繕時期を迎えるタワーマンションでは、修繕積立金が不足しているので修繕工事が出来なくなる恐れがある。
■ その原因として、多くのマンションでは入居当初の積立金が低く設定されており、修繕資金を賄うには段階的に増額する必要があるからだ。積立金を値上げするには都度、区分所有者の過半数の合意が必要になるが、マンションの中には理事会の反対で竣工以来値上げが一度も出来ていないケースもあるという。
■ 「段階増額積立方式」と、当初から積立金が変わらない「均等積立方式」では、現在7割のマンションでは段階増額積立方式が採用されているとのこと。
■ 都心のマンション市場にも異変が生じ始めている。2000年代に入って供給が増えたタワーマンションの人気を支えてきたのは海外投資家だったが、昨今では海外からの買いニーズが減っただけでなく、すでに取得した物件の売却相談も増えつつあるという。
■ そんな海外の投資家に代わってタワマン人気を支えているのが、職住近接を希望する共働き世代で、業界では「パワーカップル」と呼ばれている。
■ 東京都中央区ではこの20年間で人口が倍増したが、その影響で通勤時には駅に人があふれるなど、暮らしへの影響が深刻になりかねないため容積率緩和の原則廃止を決定したという。専門家は、「住宅ストックのコントロールしていないのは、世界でも日本だけ」と語った。
特にこれといって目新しいテーマはありませんでしたが、NHKでもそれなりの視聴率が得られる看板番組なので、特に所有者不明や相続放棄といった新たなリスクについては、相当のインパクトを視聴者に与えることができたのではないでしょうか。
こうした注意喚起をマス媒体を通じて頻繁に行ってもらえると、管理組合内の意識向上に確実につながっていくと思うので、今後も随時フォーカスしてもらえることを期待しています。
<参考記事>
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