10年ぶりの改訂!「マンション修繕積立金ガイドライン」

10月20日付けの「スーモジャーナル」に、「あなたのマンションは大丈夫? 国交省が長期修繕計画、修繕積立金に関するガイドラインを改定」と題した記事が掲載されていました。

 

suumo.jp

本記事の要約は、以下の通りです。

■ 2021年9月28日、国土交通省がマンションの長期修繕計画作成や修繕積立金に関するガイドラインの改訂版を公表した。

■ 本ガイドラインは来年4月からスタートするマンション管理計画認定制度の認定基準となる予定でもあり、マンション所有者も購入予定者もその概要は知っておきたい。

■自分の住む(購入しようとする)マンションの長期修繕計画が適切なものなのか、修繕積立金が十分なのかを判断することは難しい。仮に判断できたとしても、計画の見直しや修繕積立金額の変更には他の所有者の合意を得る必要があるのがマンション管理の難しい点だ。
■ こうした問題解決の一助とすべく、国が示したのが「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・コメント(以下、長計GL)」であり、修繕積立金額を判断するための参考資料が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(以下、修繕積立金GL)」だ。

■ 長計GLは平成20年(2008年)に、修繕積立金GLは平成23年(2011年)に策定されたが、築古のマンションの増加や社会情勢の変化を踏まえ、今回、改訂が行われた。
■長計GLの改訂ポイント

長計に「30年以上で大規模修繕工事が2回以上」含まれていること、「5年程度」で計画の見直しを行うこと。

・マンションの省エネ性能向上の改修工事も考慮すること。

■ なお、マンションによって規模、形状、仕様、立地、所有者の意向などさまざまな条件により維持管理の内容も異なってくるため、長計も建物や設備の劣化状況の調査・診断に応じたオリジナルなものが作成されるべきだ。

■「修繕積立金GL」は、長計GLに沿った工事を行うために費用な積立金額の目安と考えればよい。(ただし、マンションの個別性があるため、必要な費用に幅が出る)。

■ 長計GLの改訂とともに、修繕積立金GLが示す修繕積立金額の目安も見直されており、少し高くなった。

■ 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査によれば、2020年度に同機構を通して成約した首都圏中古マンションの修繕積立金の平均平米単価は169円/平米だ。長期修繕計画GL沿った計画修繕には不足する管理組合も多いと思われる。

■ 注意すべきは「均等積立方式」なのか「段階増額積立方式」なのかという積立方法もにもある。

■ 「均等積立方式」とは、長計期間中の積立金の額が均等となるように設定する方式なのに対し、段階増額積み立て方式」は当初の積立額を抑えたうえで、段階的に増額する方式だ。後者の場合、当然ながら将来の費用負担が増加する。

■ なお、今回のGL改訂は、マンション管理適正化法改正に伴い来年4月より施行される『管理計画認定制度』とも関連している。

■ 『管理計画認定制度』とは、良好に管理されているマンションを認定し、価値あるストックを増やしていこうとする制度である。 この制度が浸透すれば、良好な管理が行われているマンションが、市場で評価される時代が来るだろう。

 

この記事で注目すべきは、

「修繕積立金ガイドライン」が10年ぶりに改訂されたことです。

 

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ちなみに、計画期間全体における修繕積立金(m²当たり月単価)の平均額(Z)の算出方法は、以下の通りです。

         Z=(A+B+C)÷X÷Y
A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
X:マンションの総専有床面積(m²)
Y:長期修繕計画の計画期間(ヶ月)
Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/m²・月)

つまり、現時点(計画初年度)の繰越剰余金残高を計画対象期間(30年=360ヶ月)と専有床面積(㎡)で割った金額に、現在の積立金徴収月額ならびに駐車場等の専用使用料収入月額を加えた合計額を専有床面積(㎡)で割った金額を合計すればよいわけです。

 

この説明では直ちに仕組みを理解できないかもしれないので、当社顧問先である某マンション(築15年目・105戸)を例に、必要な修繕積立金および現状の不足度合いを試算したケースをご紹介しましょう。

 

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まず、長期修繕計画にもとづく今後30年間の必要資金が770百万円で、これを計画対象期間の360ヶ月と専有床面積(7625㎡)で割り戻すと@281円/㎡・月になります。

 

一方、現時点の繰越剰余金残高が108百万円(@39円/㎡・月)、現在の修繕積立金の徴収額が30年間の合計で546百万円(@199円/㎡・月)です。

 

つまり、現在手元にある資金ならびに今後収入として確定している額を合わせて654百万円(@238円/㎡・月)にしかなりません。

 

したがって、差引き 約115百万円の資金不足となります。

この資金不足分を修繕積立金の単価ベースに換算すると@42円/㎡・月になります。

 

要するに、このマンションの場合、長計で求められる資金需要を賄うには、現状の徴収額(199/㎡・月)を241円/㎡・月に増額改定する必要がある、というわけです。

 

ちなみに、上記のガイドラインと比較すると、このマンションの延床面積からすれば、機械式駐車場を含まない目安の平均額は@252円/㎡・月・・・(ア)です。

 

一方、機械式駐車場の修繕に必要な工事費の目安も、このガイドラインで示されています。(下記参照)

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このマンションの場合、2段式の機械式駐車場が22台あります。

そのため、上の表を参考に1台あたりの月額工事費から積算し、それを専有面積で割り戻すと@19円/㎡・月・・・(イ)になります。

 

したがって、国のガイドラインに基づいて必要な修繕積立金は、上記(ア)と(イ)の合計金額である、@271円/㎡・月 になりますから、実際の長期修繕計画で求められる金額(@281/㎡・月)とほぼ変わらないことがわかります。

 

なお、このマンションでは、5年前から当社のコンサルティングがスタートし管理委託費、電気料、マンション保険料といった管理コストの適正化が実現したため、年間5百万円の剰余金を生み出すことができました。

 

そのため、管理費会計の繰越剰余金残高ならびに今後期待できる年間剰余金(3百万円)を修繕積立金会計に振り替えることを前提に、資金収支を再計算したところ、ほぼ上記不足額が解消されることが確認できました。

 

ぜひ、ご自身のマンションでも「修繕積立金の簿外債務」を試算してみることをお勧めします。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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