先日、顧問先のマンション(都内 74戸 築27年目)で通常総会が開催され、
来春に修繕積立金を現状比30%増額改定を実施する議案が決議されました。
このマンションの長期修繕計画をもとに、現状の修繕積立金を横伸ばしした場合の将来の資金収支計画を精査してみると、下図の通り大幅な資金不足に陥ることが明らかでした。
上の図は、専有面積(㎡)当たりの月額金額に換算したものですが、今後30年間で見込まれる修繕費(@330円)に対して、現状の繰越剰余金残高(360ヶ月で割り戻したもの:@91円)と毎月徴収している修繕積立金(@155円)を合わせても、@84円不足していることがわかります。
年間の修繕積立金に換算すると、管理組合全体で543万円の増収が必要で、
修繕積立金に必要な増額改定幅は54%という計算になります。
にもかかわらず、
なぜ今回現状比で3割の増額幅に抑えることができたのか?
これは、今後も段階的に増額していくつもりというわけではなく、
今回の3割のベースアップによって概ね今後30年の資金繰りの目処が立ったからです。
その理由は、前期において、管理コストの適正化を実現したことにあります。
マンション保険と管理委託費を対象に見直しを行った結果、
年間で367万円の費用削減ができました。(詳細は下記の記事参照)
【管理コスト適正化の概要】
その結果、管理費会計のうち一定の剰余金を修繕積立金会計に振り替えられるため、本来必要な金額よりも改定幅を圧縮することができたのです。
今後、管理費会計から年間350万円を修繕積立金会計に振り替えていく前提で資金収支計画を立てたところ、下図の通り資金不足額は@30円まで減少しました。
この不足分を賄うには、現状比で2割弱の増額幅(@30円)が必要な計算です。
ただ、計画最終年度(築57年目)以降も、その6年後には大規模修繕工事の予定があるため、最終年度時点で剰余金ゼロの状況では心許ない状況です。
そのため、計画最終年度に3千万円程度の剰余金を残す必要があると判断し、修繕積立金を現状比3割アップまで改定するのが望ましい(改定後:@202円)という結論に至りました。(下図参照)
本来であれば、@101円(=@47円+一般会計の剰余金分:@54円)の増額が必要なところ、半分以下の増額(@47円)で済んだわけです。
昨今の物価上昇の傾向を見ると、将来的には管理費会計の剰余金も修繕工事費も変動するリスクは少なくなく、再度の見直しが必要になる可能性はありますが、今回修繕積立金を「@200円」の大台に乗せられたのは「大きな前進」と言えるでしょう。
<参考記事>
村上 智史
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