マンション管理組合に管理会社のリプレイスを勧めたワケ
2025/02/10
4月25日付けのDIAMOND ONLINEに、「初期計画では資金不足に!大規模修繕直後に長期修繕計画を見直した郊外の大型マンションが、築22年目の今受ける評価」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下の通りです。
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◾️ 東京郊外の日野市にある6棟707戸からなる大規模マンションでは、1回目の大規模修繕の直後から「次の50年」を見据え、長期修繕計画の見直しに着手した。
◾️ 修繕積立金を「段階増額積立方式」から「均等積立方式」に変更、戸当たりにして月額平均約9000円の値上げに踏み切る。築22年目の現在も良好な管理は維持されており、再販時の評価にもつながっているようだ。新旧の理事にこれまでの経緯を聞いた。
◾️ 1回目の大規模修繕は、今から10年前の2015年。外壁塗装やシーリング工事などの補修に重点を置いた一方、屋上防水など一部急を要しない工事を見送ってコストを抑えた結果、費用は何とか当初の計画内に収まった。
◾️ だが、竣工時に販売会社が作成した「一時金と段階増額方式を前提とした長期修繕計画」では、恐らく今後の大規模修繕は乗り切れないだろうという危機感を覚えた役員が中心となり、すぐに新たな長期修繕計画の検討が行われた。
◾️ そこで、長期修繕検討専門委員会を設置し、コンサルタントの助言を得ながら、半年で計画を練り上げていく。大規模修繕を12年周期とした場合に36年後の53年(第50期)に行われる第4回大規模修繕までを1クールとして、真に必要な修繕項目とコストを洗い出した。
◾️ その結果、やはり大きな課題と分かったのが修繕積立金の水準だった。当時は月額@112円/㎡だったが、そのままでは2回目の大規模修繕予定の第25期で1億8千万円程度の不足が生じ、3回目に至る頃にはさらに大きな赤字となる。一時金で補おうとすれば、多くの住民の日常生活に影響を及ぼす可能性が高い。
◾️ 修繕積立金の増額について「均等積立方式」への移行が検討された。「均等積立方式」であれば、50年、60年にわたる長期修繕計画においても修繕費用総額から予算を作りやすく、また、将来を見据えた修繕も実行しやすい。◾️「均等積立方式」への移行を前提に算出された修繕積立金は、月額単価@210円/㎡となった。とは言え、戸当たり月額平均9,000円もの値上げとなるため、反対意見が出るのは十分予想できた。そこで住民の「納得感」を得られるよう、説明会用の資料を徹底的に作り込んだ。
◾️ 長期修繕計画の見直しには、国土交通省のガイドラインに則ったものであることを強調し、修繕積立金の積立状況と今後の見込み、増額後の水準の根拠まで具体的な数字をもとに積み上げていった。
◾️ と同時に、積立金不足で修繕が滞れば将来どうなるか、資産価値が下がっていいのかと住民たちの心に訴えかけながら、計3回の説明会を実施した。
◾️ 現在、2回目の大規模修繕に向けての検討が始まっている。築20年を超えるマンションの多くが修繕積立金の大幅な見直しを余儀なくされている中、次回も予算内で乗り切れる見通しだ。
◾️ ただし、ここ数年の工事費高騰は想定を大きく上回っていることから、これまでは大規模修繕を12年周期で考えてきたが、今後は15年以上の周期で検討している最中という。
◾️ 管理組合の理事会をサポートしているのが、同マンションの自治会だ。数多くのイベントを開催し、コミュニティー形成に尽力してきた。理事会と専門委員会を区分所有者と橋渡しし、大規模修繕に当たっての合意形成に一役買っているという。
◾️ このマンションで育った世代が、マンション内の別住戸を購入して独立しているケースもあるというのが、コミュニティーの質の高さを物語っている。
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首都圏の新築マンションについて、管理費と修繕積立金の相場動向を示すデータがあります。(下図参照)
2013年から2022年までの9年間で、管理費(㎡単価ベースに換算後)は
月額@222円/㎡ → @279円/㎡に24%も上昇していますが、
修繕積立金は、
月額@97円/㎡ → @113円/㎡ と16%しか増えていません。
問題は、この修繕積立金について@100円前後の水準が果たして妥当なのか?
ということです。
国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2021年公表 下表参照)を見ると、その階数・規模に関わらず@200円台半ば〜@300円強が必要なことがわかります。(注:機械式駐車場が附設されているマンションは、別途加算が必要。)
つまり、2回目以降の大規模修繕工事の際に資金不足に陥るのは、
新築時の修繕積立金の水準が必要なレベルの半分程度で設定されているためであり、
至極「当然の結果」なのです。
冒頭の記事で取り上げられているマンションが、@210円への増額で落着できたのは、築13年目と比較的早い時期に修繕積立金の見直しに着手したことが大きかったと思います。
1年前に弊社がコンサルティングした神奈川県のマンション(70戸)では、築25年目で修繕積立金が@90円台だったため、修繕積立金の残高が6千万円しかありませんでした。
2回目の大規模修繕工事(概算で1億円の予算)を実施するには借入れするか、一時金を徴収しないと到底無理な状況でした。
住宅金融支援機構から融資を受けることは可能ですが、融資要件として修繕積立金を増額する必要があることがわかり、従前比で3倍を超える@300円に引き上げることになりました。
ちなみに、このマンションを「均等積立方式」にするには、従前比5倍の@450円まで引き上げなければなりませんが、とても総会で承認が得られるほどの賛同は得られませんでした。
一方、管理コストの適正化によって、均等積立方式への転換に成功したマンションもあります。
都内の顧問先マンション(築28年目 74戸)では、管理委託費とマンション保険の見直しによって年間約370万円の剰余金が見込めることになりました。
この剰余金を修繕積立金会計に振り替えると、月額@54円相当の経済効果になります。
このマンションの場合、従前の修繕積立金は@155円でしたが、均等積立方式にもっていくには@239円まで引き上げる必要があるため、5割以上(@84円)の増額が必要なことが分かりました。
ただ、管理コストの適正化による経済効果(@54円分)を加味できるため、従前比2割アップの+@30円(=84ー54)の増額で実現できたのです。
修繕積立金を改定したくても、
必要な増額幅が大きいために着手できなくてお悩みの管理組合は、
まず管理コストの適正化に着手することをお勧めします!
<参考>
5月開催 マンション管理セミナー「管理コストを3割削減するための見直し術」のお知らせ
<参考記事>
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