5月5日付けの日経新聞に、『タワマン、築30年以上が1割に 迫る「2つの老い」』と題した識字が掲載されていました。
本記事の要約は以下のとおりです。
◾️ 建物の老朽化と住民の高齢化という「2つの老い」がタワーマンションに忍び寄る。◾️築30年以上になる物件は全体の約1割を占める。
◾️ 大規模修繕工事などの多額の費用の捻出や住民間の合意づくりに苦労する事例が見られ、タワマンの「影」の部分が見えつつある。
◾️ 竣工から48年が経過した「タワマン第1号」と呼ばれる「与野ハウス」(さいたま市463戸)では、現在4回目の大規模修繕工事中であるが、費用は3億円以上かかるという。
◾️ エレベーターをはじめ設備も古くなっており「値上げしないと積立金はいずれ不足する」という。また耐震性にも問題があるため、建て替えも検討するという。
◾️住戸の半数以上は70歳以上の高齢者で、15人いる役員のうちは50代の3人が最若手で、75歳以上が中心という。役員の成り手も不足しており、「第三者管理」の導入も検討している。
◾️築30年以上のタワマンは177棟(計6万戸)と全体の約1割にのぼる。今後10年で2回目の工事をする必要が出てくる築20年以上は612棟(計17万戸)と3割に達する予定だ。
◾️タワマンの歴史はまだ浅く、管理方法は理論的にも技術的にも確立していないため、一般のマンションと比べて大規模修繕や建て替えが難しいと専門家は指摘する。
◾️タワマンの大規模修繕の受注実績がある施工業者も24%にとどまる。工事の難しさを業者に聞くと、53%が「施工計画全般」とした。仮設工事(63%)、外壁塗装(55%)、外壁タイル(50%)も多数に上った。
◾️また、費用が割高になる要因としてタワマンの特徴である「複雑な形状」「エレベーターや機械式駐車場が多い」「空調機が設置された内廊下、ラウンジ、ゲストルームの存在」「塩害を受ける湾岸エリアに近い」が挙げられる。
◾️その一方で、資金の備えは十分とはいえず、新宿区が20年に公表した区内の管理組合へのアンケートではタワマンの管理組合の約半数が今後の修繕積立金が「足りない」と回答した。
◾️タワマンの6割以上が長期修繕計画を見直し、約8割は修繕積立金の段階的な値上げを想定してるが、増額を決定する場でもある総会への出席率が低いため、合意形成が円滑にいかない可能性があるとの指摘もある。
◾️供給年代が古いほど区分所有者や居住者の管理への関心が薄い傾向がみられ、役員のなり手不足に悩む声も目立った。◾️国交省はタワマンの実態を十分に把握していない。今後、修繕積立金や総会での合意形成の現状を調べ、資金管理などのガイドラインづくりを検討する方針だ。
◾️タワーマンションは日照やビル風、景観を巡って周辺住民らと摩擦が生じることがある。地域に短期間で人口増をもたらす一方、小中学校などの受け入れ能力が不足し、通勤・通学客が増えて近隣駅の混雑が激化する懸念もある。
◾️タワマンの開発を抑制する自治体も出てきた。神戸市は中心部、三宮周辺にオフィスや商業施設を誘致するため、20年にタワマン建設を制限する条例を施行した。
◾️マンションの法定耐用年数を税務上47年とされているが、タワマンの物理的寿命は100年以上とされる。自治体は事業者や周辺住民らとタワマン開発による影響や安全対策を事前に議論した上で、100年先を見据えた街の将来像を考えていく必要がある。
タワマンに限らず、高経年のマンション管理組合が役員の成り手不足や修繕の資金不足に悩むのは珍しくありません。
一般のマンションとの違いで留意すべき点は、単に大規模修繕や設備の更新費用に多額のお金がかかることや住戸数が膨大なことではなく、「合意形成がしづらいコミュニティー」ということです。
これまでのマンションは、せいぜい10数階の高さで住戸タイプや価格も似たり寄ったりのプランになっている「金太郎飴型」が主流でした。
つまり、住戸間で世帯構成や収入レベルもさほど変わらず、住民のライフスタイルや価値観も近いのが普通でした。
そのため、管理組合内の合意形成も「話し合えば折り合える」部分が少なくなかったと思われます。
それに比べて、昨今の大規模タワマンはどうでしょう?
5階から40階以上まであり、南向きも北向きもあり、4LDKもあれば1LDKもありで、サイズも価格もまちまちです。
したがって、区分所有者の経済力や世帯構成も様々でバラツキが激しいはずです。
しかも、外国人の投資対象にもなっており、賃貸の割合も少なくないでしょう。
こういうコミュニティーではより多様な意見や要望が住民内に燻っているため、合意形成を図っていくのは決して容易ではないはずです。
そのような特性があるにもかかわらず、従来どおりのやり方(=素人の区分所有者を中心にボランティア方式で理事会役員を募る)でうまく運営できるはずがありません。
運営をサポートする管理会社の担当者が疲弊していくのが目に見えるようです。
個人的には、タワマンの管理組合こそ今流行りの「第三者管理方式」を導入すべきだと考えます。
ただ、管理会社が管理者を兼ねる場合は、利益相反のリスクがあるのも間違いなく、くれぐれも管理会社の「傀儡」にならないよう事前に十分留意する必要があります。
ついては、
現在、国交省が取りまとめ中の第三者管理方式導入のガイドラインについて、先日筆者がポイントを纏めた記事をリリースしましたので、参考になれば幸いです。
<参考記事>
村上 智史
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