マンション管理組合に管理会社のリプレイスを勧めたワケ
2025/02/10
4月2日付のBIGLOBEニュースに、「【管理費1㎡平均500円台】突入!5年で+34%の急騰」と題したニュースが掲載されていました。
本記事の要約は以下のとおりです。
◾️ 不動産コンサルティング会社が、都心9区で2024年に分譲された新築マンションを対象に、管理費と修繕積立金の調査を実施した。
◾️ その結果、管理費の平均は1㎡あたり500円台に達し、2019年比で34%の上昇を記録した。
■ 調査概要
対象地域:都心9区(千代田、中央、港、渋谷、新宿、目黒、品川、世田谷、江東)
対象物件:「メジャー7」による新築分譲マンション(2019~2024年分譲)
調査期間:2019年~2024年
指 標 :1㎡あたりの管理費・修繕積立金(分譲時点)
◾️ 管理費増額の背景
(1) 人件費の高騰
管理員・清掃員など人手に依存する管理業務において、最低賃金の上昇や人手不足で委託費が値上がり。
(2) 共用施設の高級化
ジムやラウンジなど、「ホテルライクな設備」が標準化したため、維持管理コストが増大。
インフレに伴うコスト増 → 資材や光熱費の高騰により、マンションの運営コストが全体的に上昇。
◾️ 修繕積立金増額の背景
分譲当初の設定額自体が上昇傾向 → 直近の負担は大きいが、「段階増額積立方式」を採用しているマンションは先々の値上げ幅としては抑えられる。(段階増額がうまく決議されることが前提)
資材費・人件費の高騰 → 工事費価格高騰に伴う将来的な維持管理コスト増加を見越し、増額傾向に。
■ 管理費削減の余地はある?
不要なサービスや稼働していない共用施設の見直しにより、管理費の圧縮が可能なケースも存在する。
■ 都心では“管理費1㎡500円時代”に突入し、修繕積立金も150円〜170円が当たり前になってきた。
■ 今後、管理費、修繕積立金の上昇傾向が日本全国で起きてくることは間違いないと予想される。物件を選ぶ際は購入価格だけでなく、月々の支出全体を見据えた判断が重要。
2024年7月24日付けのスーモジャーナルの記事(マンション管理費・修繕積立金が首都圏で月額約3万円に!?新築・中古ともに上昇し続ける要因はどこにある?)には、首都圏で分譲された新築マンションについて以下のようなデータが紹介されています。
データの出典は、東京カンテイ「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」をもとに抜粋した、とされています。
上の表中の管理費等の金額は、想定の専有面積(70㎡)を乗じたものであるため、
冒頭の記事と平仄を合わせて「㎡単価」に換算すると、以下のようになります。
・管理費 約291円 < 冒頭の記事 約512円
・修繕積立金 約125円 < 冒頭の記事 約173円
冒頭の記事で紹介されているデータとの乖離の原因については、
対象データの母集団に留意が必要と思います。
まず、冒頭記事の調査対象は、大手マンションデベロッパー(メジャー7)が都心9区で分譲した物件のみを対象としています。
(メジャー7:住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス)
また、これらの会社が都心で供給している物件の多くは、いわゆる高層タワーマンションが占めている可能性が極めて高いです。
不動産経済研究所が過去に発表した調査結果(超高層マンション動向2021)によると、全国で建設・計画されている「20階建て以上のタワーマンション」の供給量は約11万戸に達すると予想しています。
この調査結果によると、2021年以降に供給されるタワーマンションは、東京23区では約6万戸と供給量全体の54%も占めています。
さらに、、冒頭の記事にもあるように、タワマンの場合、中小規模のマンションでは見られない「ホテルライクな共用施設」が付設しているのが一般的です。
つまり、
・共用部分の割合が高い =専有部分の比率(有効率)が低い
・共用施設が豪華 =維持管理費が高い
ということなので、その経済的な負担は区分所有者にしわ寄せされ、管理費や修繕費の単価がどうしても高くなるのです。
トレンドとして、新築マンションの管理費や修繕積立金が上昇しているのは間違いありません。
価格が上昇している背景の分析も、概ねその通りでしょう。
ただ、月額管理費単価=500円/㎡というインパクトの強い相場観がこの記事を通じて「一人歩き」してしまうのはいかがなものかと感じてしまいます。
<参考記事>
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