7月15日付けの読売新聞に、「マンション管理費が2万円突破、首都圏で初めて…サウナなど共用施設の充実や人件費の増加で 」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下の通りです。
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◾️ 分譲マンションの維持管理費が上昇している。23年に首都圏の新築分譲マンションの平均管理費(70平方メートル換算)は前年比4・1%増の月2万358円となり、初めて月2万円を超えた。修繕積立金と合わせると月3万円弱の負担になる。
◾️ 管理費を押し上げている要因は、人件費増のほかに、共用施設の充実と多様化だ。
◾️ 東京都文京区で販売中の新築マンションは共用施設の充実が売りで、屋上に共用テラスを設置しているほか、テレワーク対応のワークスペースや来客者用ゲストルームを確保している。
◾️ さらに、朝の通勤・通学時間帯には管理組合がシャトルバスを運行し、マンションと最寄り駅を往復するという。
◾️ 昨年東京・昭島市で販売された分譲物件では、共用施設に本格的なサウナを設け、全481戸が完売となる人気ぶりだった。
◾️ 共用施設の維持管理費は、エレベーターなどと同様、区分所有者から徴収する管理費でまかなわれる。最近ではスポーツジムを備えたり、フロントにコンシェルジュが常駐したりする物件も珍しくない。
◾️ 東京23区内のマンション管理費は、10年前から約6000円増加した。昨今増加している「第三者管理方式」のマンションが増えていることも一因とされている。◾️ 一方、建築資材や人件費など修繕にかかるコスト増に伴い、修繕積立金も上昇している。23年は首都圏で前年比9・9%高い平均月8729円となった。
◾️修繕積立金はマンション購入時には低めに抑えられているが、年数がたつと段階的に増額されるケースが多い。国交省の調査では、修繕積立金が計画に対し不足しているマンションは全体の36%に上り、物件によっては今後さらに負担が重くなる可能性がある。
◾️今後は住宅ローン金利も上がることも想定され、消費者には維持管理コストも含めた負担額の見極めが求められそうだ。
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マンションの高級感を顧客に訴求するために、新築物件のパンフレットで使われる常套句が「ホテルライクな空間」です。
たしかに、ホテルや旅館のような訪問客が癒しを求める場所なら、温泉やフィットネスルーム、コンシェルジュなども必要でしょう。
しかし、ホテルで過ごすのは、1年のうちせいぜい数日程度のこと。
一方、マンションは「日常生活そのもの」です。
設備やサービスのベネフィット(便益)とかかるコストを天秤にかけると割に合わなくなる場合があるのは当然です。
コストパフォーマンスや、住民の利用頻度や負担の公平性に鑑みて、ムダと思われるものを以下に挙げてみましょう。
◾️ ゲストルーム
親族などの来客が宿泊するために用意されるマンションの「ゲストルーム」。確かにその使用料金は近隣のホテルに比べて割安に設定されており、おトクなように見えます。
しかし当然ながら、室内の清掃やリネン等の交換、そして将来的なリフォーム費用が管理費に含まれています。
また、一部の利用者に利用が偏ったり、事前予約を巡って住人間でトラブルになるなど、おカネ以外の問題もあるようです。
◾️ AVルーム
機材類や工事費で軽く1000万円を超えるものもありますが、利用状況を聞くと「誰も一度も使っていない」という声が少なくありません。
◾️ キッズルーム、保育施設
最初こそ利用されるものの、子供の成長につれ3、4年もするとほとんど誰も遊ばなくなる傾向があります。
また、周囲の住戸から騒音のクレームが出たり、ケガや事故の防止対策として監督を置かなくては、厄介な問題が噴出するリスクもあります。
◾️ 噴水や人工池などの水景設備
あると確かに華やかですが、水垢が溜まるため定期的な清掃が必要です。そのほか、水道代、ライトアップにかかる電気代、修繕費の負担もバカになりません。
◾️ 温泉施設、プール
最近の新築物件ではほとんど見かけなくなりましたが、水景設備と同様、ボイラーや循環ポンプなどのメンテナンス、清掃や水光熱費等のランニングコストが重くのしかかってきます。
また、当然ながら経年劣化に伴い、設備の改修コストも必要になってきます。その一方で便益を受ける利用者が一部の住民に偏りがちという問題もあります。
これは、「フィットネスルーム」や「プール」、「ジャグジー」、「ドッグラン」なども同様です。
◾️ コンシェルジュ
各種共用施設の予約や料金精算、クリーニングなどの居住者向けサービスの受付などのために、管理人とは別にコンシェルジュを派遣するケースがあります。
しかしながら、提供できるサービスやメニューの数も中途半端であることが多く、多額の人件費を負担してまで設置すべきか疑問に感じることが多いです。
◾️ 夜間警備員
管理員、コンシェルジュのほかに、深夜の宿直対応を含む警備サービスを提供するマンションもタワーマンションなどでは珍しくありません。
一定の規模を超える共同住宅では、防災要員を配置することが法的に必要となるケースもありますが、機械警備による遠隔監視サービスもありながら、警備員を常時配置するのは「屋上屋」ではないでしょうか。
一方、マンションに「必須」と考える設備やサービスは以下の通りです。
◾️ オートロック付き集合インターホン
いまや賃貸マンションでも必須アイテムとされていますが、「TVモニター付きのインターホン」が今は標準仕様となっています。
不在時の来客者録画機能、宅配ロッカー利用時のアナウンス機能、キーレス対応など利便性を重視した仕様もあります。
これと同様に、セキュリティ面のアイテムとしては、防犯カメラ、駐車場のグリルシャッターも必須でしょう。
◾️ 宅配ロッカー
夫婦共働きが当たり前の時代、今や戸建て住宅にも導入されつつある設備です。
宅配業者の再配達をなくせるという社会的な貢献を考えれば、一番の必須アイテムかもしれません。
◾️ 集会室
意外と重要になってくるのが「集会室」。
理事会や総会など管理組合の運営や住民同士の交流を目的とした会議用スペースがあるほうが望ましいです。
(ただし、近隣に利用可能な自治会館等の公的な施設があればその限りではありません)
◾️ 24時間出せるゴミ置場
どのマンションにもゴミ置場はありますが、昼夜問わずいつでも出せるマンションは多くありません。
時間や曜日に関係なく屋内の集積所にゴミを出せて、管理員が収集日に外に出すという仕組みが、多くの新築マンションで導入されています。
「収集日の朝まで待たずに出せる」という点が、多忙な住人に好評を得ています。
◾️ 遠隔監視サービス
管理人が常駐しているマンションはごく一部に過ぎないため、管理人不在時における各種設備の不具合等が発生した場合の緊急対応が必要不可欠です。
こうした場合、機械警備による「遠隔監視サービス」があれば、異常信号の受信から25分以内(警備業法上の制限)に警備員が駆けつけ対応をしてくれるので安心です。
もし自分にとってはさほど必要とは感じない施設やサービスがあっても、それらの維持管理費は毎月納める管理費の中にしっかりと含まれています。
それだけではありません。
将来更新が必要な設備の修繕・更新費用についても、別途修繕積立金として強制的に徴収されているのです。
必要な設備やサービスに関する「目利き力」を身につけることをお勧めします。
<参考記事>
村上 智史
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