マンション修繕積立金の大幅増額を避けるには「管理コストの適正化」が一丁目一番地
2026/07/05

近年、マンション管理業界では、
などを背景に「理事会を設置せず、管理会社が管理者を兼ねるスキーム」
(=管理業者管理者方式)が急速に増えています。
特に投資用のワンルームマンションでは、区分所有者がほとんど総会に出席しないため、理事会が実質機能せず、管理会社に「お任せ」状態というケースが多いのが実情です。
もちろん、管理会社は管理組合にとって重要なパートナーではありますが、
管理会社も営利企業です。
管理会社に「丸投げ」のような状態が長期間続いた場合、
管理組合の利益を損なう不利な契約等が固定化するリスクがあります。
今回は、本記事で紹介されている事例をもとに、
について解説したいと思います。
本記事を要約すると、以下の通りになります。
1)「管理業者管理方式」の実態
・都内にある築十数年の投資用マンションでは、区分所有者が一度も組合の代表者である「管理者」に就任せず、デベロッパー系管理会社が務めていた。(区分所有者以外でも就任できる規定)
・現行の管理規約には、「理事会」の規定自体がなく、監事や副理事長といったチェック機能が存在しない構造になっていた。
2)「自己発注・自己承認」行為の横行
・その結果、管理会社が「発注者」と「受注者」の両方を兼ねることになり、発注内容やコストの適正性に対する疑念が生じた。
・たとえば損害保険や植栽管理、排水管清掃などについて、相見積もりすら取っていなかった。
3)区分所有者が管理者就任した後の管理会社の対応
・区分所有者のA氏が立候補して管理者に就任した後、管理会社にコスト削減を求めると、管理会社は別の区分所有者を抱き込んで管理者の交代を画策し始めた。
「理事会設置」の議案を否決させるため、他のオーナーの総会参加を意図的に阻害した疑いがある。
4)購入時の注意点と教訓
・マンション購入時に、現行の「管理規約」や過去の「総会議案書」まで読み込み、管理体制や組合の運営実態を確認することが不可欠。
・区分所有者が無関心なまま放置すると、管理会社に過剰なマージンを搾取されるリスクがある。
「管理業者管理者方式」は「第三者管理方式」に含まれる一つの形態です。
【第三者管理方式】
区分所有者(オーナー)以外の第三者(マンション管理士、弁護士、管理会社など)が、管理組合の運営を担う方式
【管理業者管理者方式】
第三者管理方式の中で、特に「マンション管理業者(管理会社)」が「管理者(理事会が設置されない管理組合の代表者)」に就任する方式。
このスキームは、投資用マンションではまったく珍しくありません。
なぜなら、
というケースがもっぱらだからです。
その結果、
「管理会社に任せられるなら、手間もかからなくてよい」
という空気が生まれやすくなります。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
管理会社は、あくまで営利企業です。
当然ながら、「自社の利益を最大化する」という動機が常に働いています。
その結果、管理組合が「無関心」で「お任せ」状態に陥った場合、
管理組合と管理会社の間で「利益相反リスクが顕在化しやすい」のです。
ちなみに、「利益相反」とは、
本来は相手方(顧客)の利益を優先すべき立場の者が、自社の利益を追求することによって、判断の公平性が損なわれたり、相手方に不利益が生じるおそれがある状態
を指します。
上記記事の例では、A氏が管理者に就任した後、さまざまな問題が見えてきました。
たとえば、マンション保険については、
この管理会社系列の代理店を経由していました。
しかしながら、改めて管理者が別の代理店経由で相見積もりを取得したところ、
同等の補償条件にもかかわらず、保険料が安くなることが判明しました。
また、植栽管理、排水管清掃など他の管理作業についても、
管理会社が管理者として見積もりの取得から発注の承認を単独で行っており、
その結果、管理会社自身が元請けとして受注している実態が判明しました。
まさに、「管理組合側のチェック機能が働いていなかった」のです。
さらに問題なのは、過去見積書や再委託先の資料について管理会社が十分に保管していなかったという点です。
これでは、発注内容や価格の適正性について検証することができません。
誤解してほしくないのは、
「第三者管理方式=悪」ではないということです。
冒頭でも紹介した事情もあって、
管理者に外部専門家を起用するスキームへのニーズは高まっています。
問題は、「管理業者管理方式」のような「管理者の自己受注行為」に対して
管理組合側の「チェック・監視機能」が存在するかどうかです。
実際、国土交通省も
「管理会社管理者方式における利益相反リスク」を重要な論点として扱っています。
つまり、国も「管理会社に完全に任せ切るのはリスキー」だと認識しているのです。
それでは、利益相反リスクを避けるために
区分所有者としては何をすべきなのでしょうか。
本スキームが導入されている、もしくは導入を検討している場合は、管理業者との利益相反リスクの顕在化を避けるために、以下の体制が制度的に確保されているかを確認するようにしてください。
| チェック項目 | ポイント |
| ◾️「監事」の独立性 | 管理会社と利害関係のない外部専門家(マンション管理士等)が選任されているか |
| ◾️事前承諾の範囲 | 高額工事や重要契約の際、管理者の独断ではなく区分所有者の事前承諾を得るルールになっているか |
| ◾️資金の監視体制 | 監事が通帳や印鑑(電子承認権限)の管理状況を直接チェックできているか |
| ◾️情報の閲覧権 | 組合員名簿や会計帳簿、契約書等をオンライン等で容易に閲覧できる環境があるか |
| ◾️管理者の解任・変更の自由 | 不適切な運営があった際、区分所有者主体で解任・会社変更ができる手続きが明文化されているか |
留意してほしいのは、今回取り上げた事例は、
コンプライアンスに反する行為が行われたわけではないことです。
なぜなら、管理規約や区分所有法に則って、諸々の契約行為等が行われているからです。
区分所有者が長年管理組合の運営に無関心であり続けた結果、
利益相反リスクが「自然に」顕在化しただけです。
区分所有者が無関心であるがゆえに、管理会社に「丸投げ」した結果、
管理会社の行動をチェックしない「不作為」の状況を作ってしまったのが原因です。
また、これは投資用マンションに限ったリスクではありません。
程度の差はあっても、あなたのマンションも同じ状況に陥るリスクが十分あります。
上記で提案したように、
いくら管理規約を含めて制度的なインフラを整備したとしても、
実際にそれらが適切に運用されなければ「元の木阿弥」です。
マンションの資産価値を守れるかどうかは、
管理組合(区分所有者)が「主体性」を持って「チェック機能」を果たすか
にかかかっているのです。
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