マンション修繕積立金の大幅増額を避けるには「管理コストの適正化」が一丁目一番地
2026/07/05

住宅金融支援機構は、このほど、同法人が発行する債券である「マンションすまい・る債」の今年度分の応募が過去最高ペースで推移していると発表しました。
背景にあるのは、言うまでもなく「利回りの急上昇」です。
長らく「金利のない時代」が続いたため、
管理組合は普通預金や決済用預金として預けておくのが合理的な状況でした。
しかし、ようやく金利が元に戻り始めりつつある今、
管理組合の資金運用を見直す絶好のタイミングを迎えています。
今回は、「マンションすまい・る債」の魅力と注意点、さらに現在保有している「すまい・る債」の見直しの可能性について考えてみたいと思います。
2026年度募集の「マンションすまい・る債」の年平均利率(税引前)は
2.0%となりました。
数年前まで募集されていた商品は年平均0.5%程度でしたから、
約4倍の水準です。
管理組合が運用する修繕積立金は、
区分所有者から預かった大切な資金ですから、
株式や投資信託のように元本を毀損するリスクを負ってまで
高い収益を目指す商品ではありません。
最優先すべきは「安全性」であり、
そのうえで一定の利息を確保できるのであれば、
管理組合にとって魅力的な運用手段といえるでしょう。
2026年度募集では、管理状況の良いマンションほど高い利率が適用される仕組みも導入されています。
|
商品区分 |
適用条件 |
年平均利率 (税引前) |
|---|---|---|
|
「すまい・る債」 |
すべての管理組合 |
2.0% |
|
ステップアップ すまい・る債 |
★★★★以上またはS評価 |
2.05% |
|
認定すまい・る債 |
管理計画認定マンション |
2.10% |
これまで管理計画認定制度や管理適正評価制度は、
「資産価値向上のための制度」と考えられがちでした。
しかし、今後は修繕積立金の運用利回りという
「実利」にも直結する制度となりました。
管理の質が資産価値だけでなく、
資金運用にも反映される時代に入ったといえるでしょう。
今回の注目ポイントはココです。
長らく続いた超低金利時代のもと、
「マンションすまい・る債」を保有している管理組合の中には、
平均金利0.5%前後の債券を保有しているケースも少なくないでしょう。
「もうすでに購入済みだから、満期まで持ち続けないと仕方ない」
そう考えている管理組合も多いと思います。
しかし、現在募集中の商品との利率差が大きいので、中途で換金し、
新規募集の「すまい・る債」に乗り換える方が有利なケースもあるのです。
「マンションすまい・る債」は途中で換金することも可能です。
ただし、「いつ解約しても利回りは同じ」ではありません。
たとえば、年平均利率2.0%の「すまい・る債」を
中間の5年目の時点で中途解約した場合、
実質的な平均利率は「約0.7%」にとどまります。
これは、期間の後半になるほど
利息が大きくなるよう商品設計されているためです。(下図参照)

つまり、中途換金すると、
多く受け取れるはずだった後半の利息を放棄してしまうことになります。
しかしながら、
現在保有している「すまい・る債」の利率りが
年平均0.5%前後であれば少し話は変わってきます。
例えば、
という条件に当てはまるなら、今の債券を中途で換金し、現在募集中の年平均2.0%の商品に乗り換えた方が、トータルで受け取る利息が大きく増える可能性があります。
概算ですが、1口分(50万円)の利息で比較すると、
(1)年平均利率:0.525%の商品をそのまま満期まで保有した場合
→ 利息合計額(税引前)=約26,000円
(2)年平均利率:2.000%の商品を満期まで保有した場合
→ 利息合計額(税引前)=100,000円
となり、その差は約74,000円にもなります。
つまり、金利差が従前に比べて大幅に拡大している場合は、
「満期まで持ち続ける」という考えが必ずしも正解ではなくなっているのです。
では、実際にどの時点で乗り換えると有利なのでしょうか。
たとえば、X年経過時点で旧債から新債に乗り換えを行うケース際の10年間の受取利息の合計額をシミュレーションしてみます。
すなわち、
「旧債で受取ったX年間の利息合計額」と
「新債で受け取る(10ーX)年の利息合計額」を合計し、
旧債で得られるはずだった10年間の利息合計額(26,500円)と比較するわけです。
すると、下表のとおり、運用期間を10年間に限定した場合は
4年経過時点までならば、乗り換えのメリットが認められる結果となりました。
<運用期間を10年間で限定した場合の受取利息合計額の比較>
|
旧債→新債への 乗換時期(X年) |
①旧債利息 (平均0.525%) |
②新債利息 (平均2.0%) |
合計利息 (①+②) |
|---|---|---|---|
|
1年経過時 |
300 |
78,300 |
78,600円 |
|
2年経過時 |
800 |
59,200 |
60,000円 |
|
3年経過時 |
1,500 |
42,700 |
44,200円 |
|
4年経過時 |
2,400 |
28,800 |
31,200円 |
|
5年経過時 |
3,500 |
17,500 |
21,000円 |
|
6年経過時 |
4,830 |
13,000 |
17,830円 |
|
7年経過時 |
7,210 |
9,000 |
16,210円 |
|
8年経過時 |
12,080 |
5,000 |
17,080円 |
|
9年経過時 |
18,260 |
2,000 |
20,260円 |
|
10年(乗換なし) |
26,250 |
0 |
26,250円 |
そのため、現在積立中の「すまい・る債」があれば、見直す余地は十分あるわけです。
もちろん、どんな場合にも乗り換えが有利なわけではありません。
例えば、
といった場合は、慎重な判断が必要です。
長期修繕計画と資金計画を踏まえ、
原則としては「今後10年間は運用可能な余裕資金」を対象に運用することが基本です。
さらに注目したいのが、2027年に予定されている「個人国債プラス」です。
<参考記事>
制度の詳細は今後公表されますが、
マンション管理組合も購入できる新たな国債として注目されています。
「マンションすまい・る債」は固定金利型ですが、「個人国債プラス」は
金利上昇局面にも対応しやすい変動金利タイプの商品が登場する予定です。
これまで管理組合の安全運用商品は、定期預金以外では
事実上「マンションすまい・る債」しか選択肢がありませんでした。
しかし、来年以降は新たな選択肢が増えることで、
資産配分(ポートフォリオ)という考え方も重要になってくるでしょう。
<参考記事>
私はこれまで、
管理組合の財政改善には「管理コストの適正化」が最も重要だとお伝えしてきました。
これは今でも変わりません。
しかし、金利がある時代を迎えた今、もう一つ重要な視点が加わりました。
それが、「修繕積立金を安全に運用する」という考え方です。
管理コストを見直して支出を減らす。
そして、余裕資金は安全性を最優先にしながら有効に運用する。
この二つを両輪として進めることで、将来の修繕積立金不足を少しでも和らげることができます。
「マンションすまい・る債」の応募数が過去最高ペースとなった背景には、多くの管理組合が、そのことに気付き始めたという時代の変化があるのかもしれません。
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