「マンションすまい・る債」は「年平均2%」に! 今こそ見直したい修繕積立金の運用戦略

住宅金融支援機構は、このほど、同法人が発行する債券である「マンションすまい・る債」の今年度分の応募が過去最高ペースで推移していると発表しました。

 

www.re-port.net

背景にあるのは、言うまでもなく「利回りの急上昇」です。

 

長らく「金利のない時代」が続いたため、

管理組合は普通預金や決済用預金として預けておくのが合理的な状況でした。

 

しかし、ようやく金利が元に戻り始めりつつある今、

管理組合の資金運用を見直す絶好のタイミングを迎えています。

 

今回は、「マンションすまい・る債」の魅力と注意点、さらに現在保有している「すまい・る債」の見直しの可能性について考えてみたいと思います。

 

1.年平均利率はついに2%台に!

2026年度募集の「マンションすまい・る債」の年平均利率(税引前)は

2.0%となりました。

 

数年前まで募集されていた商品は年平均0.5%程度でしたから、

約4倍の水準です。

 

管理組合が運用する修繕積立金は、

区分所有者から預かった大切な資金ですから、

株式や投資信託のように元本を毀損するリスクを負ってまで

高い収益を目指す商品ではありません。

 

最優先すべきは「安全性」であり、

そのうえで一定の利息を確保できるのであれば、

管理組合にとって魅力的な運用手段といえるでしょう。

2.「管理の質」を上げれば、利率アップの恩恵も

2026年度募集では、管理状況の良いマンションほど高い利率が適用される仕組みも導入されています。

商品区分

適用条件

年平均利率

(税引前)

「すまい・る債」

すべての管理組合

2.0%

ステップアップ

すまい・る債

★★★★以上またはS評価

2.05%

認定すまい・る債

管理計画認定マンション

2.10%

 

これまで管理計画認定制度や管理適正評価制度は、

「資産価値向上のための制度」と考えられがちでした。

 

しかし、今後は修繕積立金の運用利回りという

「実利」にも直結する制度となりました。

 

管理の質が資産価値だけでなく、

資金運用にも反映される時代に入ったといえるでしょう。

3.現在積立中の管理組合も見直すべし!

今回の注目ポイントはココです。

 

長らく続いた超低金利時代のもと、

「マンションすまい・る債」を保有している管理組合の中には、

平均金利0.5%前後の債券を保有しているケースも少なくないでしょう。

 

「もうすでに購入済みだから、満期まで持ち続けないと仕方ない」

そう考えている管理組合も多いと思います。

 

しかし、現在募集中の商品との利率差が大きいので、中途で換金し、

新規募集の「すまい・る債」に乗り換える方が有利なケースもあるのです。

4.現在積立て中でも「乗り換え」がお得な場合も!

「マンションすまい・る債」は途中で換金することも可能です。

ただし、「いつ解約しても利回りは同じ」ではありません。

 

たとえば、年平均利率2.0%の「すまい・る債」を

中間の5年目の時点で中途解約した場合、

実質的な平均利率は「約0.7%」にとどまります。

 

これは、期間の後半になるほど

利息が大きくなるよう商品設計されているためです。(下図参照)

 

 

つまり、中途換金すると、

多く受け取れるはずだった後半の利息を放棄してしまうことになります。

 

しかしながら、

現在保有している「すまい・る債」の利率りが

年平均0.5%前後であれば少し話は変わってきます。

 

例えば、

  • 購入後3年程度しか経過していない
  • 今後10年間は余裕資金として運用できる

という条件に当てはまるなら、今の債券を中途で換金し、現在募集中の年平均2.0%の商品に乗り換えた方が、トータルで受け取る利息が大きく増える可能性があります。

 

概算ですが、1口分(50万円)の利息で比較すると、

(1)年平均利率:0.525%の商品をそのまま満期まで保有した場合

→ 利息合計額(税引前)=約26,000円

(2)年平均利率:2.000%の商品を満期まで保有した場合

→ 利息合計額(税引前)=100,000円

となり、その差は約74,000円にもなります。

 

つまり、金利差が従前に比べて大幅に拡大している場合は、

「満期まで持ち続ける」という考えが必ずしも正解ではなくなっているのです。

 

では、実際にどの時点で乗り換えると有利なのでしょうか。

 

たとえば、X年経過時点で旧債から新債に乗り換えを行うケース際の10年間の受取利息の合計額をシミュレーションしてみます。

 

すなわち、

「旧債で受取ったX年間の利息合計額」と

「新債で受け取る(10ーX)年の利息合計額」を合計し、

旧債で得られるはずだった10年間の利息合計額(26,500円)と比較するわけです。

 

すると、下表のとおり、運用期間を10年間に限定した場合は

4年経過時点までならば、乗り換えのメリットが認められる結果となりました。

 

<運用期間を10年間で限定した場合の受取利息合計額の比較>

旧債→新債への

乗換時期(X年)

①旧債利息

(平均0.525%)

②新債利息

(平均2.0%)

合計利息

(①+②)

1年経過時

300

78,300

78,600円

2年経過時

800

59,200

60,000円

3年経過時

1,500

42,700

44,200円

4年経過時

2,400

28,800

31,200円

5年経過時

3,500

17,500

21,000円

6年経過時

4,830

13,000

17,830円

7年経過時

7,210

9,000

16,210円

8年経過時

12,080

5,000

17,080円

9年経過時

18,260

2,000

20,260円

10年(乗換なし)

26,250

0

26,250円

 

そのため、現在積立中の「すまい・る債」があれば、見直す余地は十分あるわけです。

5.「乗り換え」の注意点

もちろん、どんな場合にも乗り換えが有利なわけではありません。

 

例えば、

  • 大規模修繕工事を予定しており、今後数年以内に換金する予定がある。
  • 今後さらなる金利の上昇が見込まれる

といった場合は、慎重な判断が必要です。

 

長期修繕計画と資金計画を踏まえ、

原則としては「今後10年間は運用可能な余裕資金」を対象に運用することが基本です。

6.2027年に「新たな選択肢」が増える!

さらに注目したいのが、2027年に予定されている個人国債プラス」です。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

制度の詳細は今後公表されますが、

マンション管理組合も購入できる新たな国債として注目されています。

 

「マンションすまい・る債」は固定金利型ですが、「個人国債プラス」は

金利上昇局面にも対応しやすい変動金利タイプの商品が登場する予定です。

 

これまで管理組合の安全運用商品は、定期預金以外では

事実上「マンションすまい・る債」しか選択肢がありませんでした。

 

しかし、来年以降は新たな選択肢が増えることで、

資産配分(ポートフォリオ)という考え方も重要になってくるでしょう。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

7.「資金運用」と「管理コストの適正化」が財政健全化への近道

私はこれまで、

管理組合の財政改善には「管理コストの適正化」が最も重要だとお伝えしてきました。

 

これは今でも変わりません。

 

しかし、金利がある時代を迎えた今、もう一つ重要な視点が加わりました。

 

それが、「修繕積立金を安全に運用する」という考え方です。

 

管理コストを見直して支出を減らす。

そして、余裕資金は安全性を最優先にしながら有効に運用する。

 

この二つを両輪として進めることで、将来の修繕積立金不足を少しでも和らげることができます。

 

「マンションすまい・る債」の応募数が過去最高ペースとなった背景には、多くの管理組合が、そのことに気付き始めたという時代の変化があるのかもしれません。

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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