マンション管理組合が守るべき資金運用の「基本スタンス」とは?
2026/03/05

2月20日付けの朝日新聞に、「老いるタワマン:上 廃墟化か、資産価値維持か」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
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◾️ 2000年代に急増したタワマンの老朽化がこれから本格化する。20階以上の超高層マンションの修繕は一筋縄ではいかないことが少なくない。
◾️ 首都圏にある400戸を超える築20年ほどのタワマンでは、今後30年間の長期修繕計画の見積もりをコンサルタントに依頼し、算出結果を見て驚いた。
◾️ このままだと組合の財政は6年後に赤字になり、赤字を避けるには修繕積立金を3倍に値上げする必要がある。
◾️ 新築マンションを業者が売り出す際、買い手がつきやすいよう修繕積立金を低く設定し、段階的に引き上げることが多いが、このタワマンは新築時から一度も値上げしていなかった。5年前に1回目の大規模修繕を終え、財政が大幅に悪化していた。
◾️ 危機感を抱いた理事長は、修繕費の大幅な値上げをすべく、計6回も住民説明会を開いた。「3倍の値上げは異常だ、2倍はダメか?」「老い先短いので、値上げしないでほしい」などの意見が出た。
◾️ 最終的に、臨時総会で4分の3超の賛成で「3倍の値上げ」が決まった。また、インフレに対応するため今後5年ごとに見直すことにした。
◾️ 修繕積立金が不足した場合、住民らから一時金を徴収する方法もあるが、一世帯でも払わないと工事が難しくなる。銀行から借り入れて補うと、利息をつけて返さなければならないので最終的な負担は大きくなる。
◾️ タワマンの修繕にかかる費用は、通常のマンションよりも一般的に割高とされる。たとえば外壁作業の際も足場ではなく、上からゴンドラをつるすなど、特殊な技術が必要になるためだ。高層の建物に設置が義務づけられる非常用エレベーター、そのほか内廊下内の空調設備、免震装置などにも多額の費用がかかる。
◾️ 東京都新宿区が公表した区内のタワマンの管理組合への調査(2020年)では、48%が今後の修繕積立金が「足りない」と答えた。
◾️ 国交省のガイドラインによると、均等積立方式で必要とされる修繕積立金は月平均21,420円(専有面積70平方メートル)となっている。
◾️ 不動産情報サイトによると、タワマンは昨年11月時点で全国に約1,700棟(約45万戸)ある。そのうち築30年以上は1割弱、築20年以上は約3割を占める。これからタワマンの「老い」が本格的に始まる。
◾️ そのため、施工業者にもまだノウハウが十分蓄積されていない。そのため、専門家は、「過去の施工事例が参考にならず、当初の想定より費用が上振れする可能性もあり、一般のマンションよりも余裕を持った資金計画を立てる必要がある」と話す。
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いわゆるタワーマンション(20階以上の超高層マンション)の市場は、現在「2026年の歴史的供給ラッシュ」に向けて大きな転換点を迎えています。
不動産経済研究所の公開データによると、以下のとおりです。
ア)タワマンの供給量の推移(全国ベース)
・2025年以降に完成・発売されるタワーマンションは、270棟・約97,000戸(2025年3月末時点)に達しています。
・このうち、東京23区がその約50%(124棟・48,613戸)を占めています。
・特に、今年は資材高騰や工期の延長により「後ろ倒し」になった物件の供給が集中するため、記録的なボリューム( 85棟 ・約25,000戸)にのぼる見込みです。
イ) 新規供給に占めるタワマンのシェア
・分譲マンション市場全体が「高価格化による供給絞り込み」が進む中、大規模な超高層マンションが占めるシェアは相対的に高まっています。
・2024年の新築分譲マンション総供給戸数(59,467戸)に対し、超高層のシェアは約23.8%でした。
・今年は総供給量が回復傾向(約6〜7万戸)にあるものの、超高層が2.5万戸に達するため、シェアは30%を超える歴史的な高水準になると予測されています。
・つまり、「普通のマンション」の供給が減少する中、特に東京23区内の供給は「タワーマンションか、それ以外か」という極端な二極化が進んでいるのが現状というわけです。
上記の記事にある「割高な修繕費」以外にも、
タワマンは一般のマンションに比べていくつか「不利」な点を抱えています。
タワマンの場合、「管理コストの見直し(適正化)」の効果が一般のマンションに比べてあまり期待できないケースが少なくありません。
その理由は、大きく2つあります。
(1)「過剰仕様」のために人件費が嵩みやすい
都内のタワマン(400戸超)について管理委託費の適正化診断を行ったことがありますが、「現在の管理仕様を見直さない限り、ほとんど下がらない」という結果になりました。
このマンションの場合、管理委託費全体の7割強が、
管理員・コンシェルジュ・警備員・日常清掃に充てられていたのです。
各要員の時間当たり単価は、現在の労働市場の需給状況に鑑みればほぼ妥当であることが分かり、削減余地はほぼありませんでした。
ただ、朝から夕方までのデイタイムは毎日管理員2名とコンシェルジュ1名、警備員の合計4名が待機しています。
(夜間も管理員と警備員の2名が駐在。なお、機械警備は別途付帯されている・・)
どう見ても治安リスクがあるエリアでもないのに、ここまでスタッフを張り付ける必要があるのか甚だ疑問です。
これはマンション販売時のいわゆる「ホテルライクな生活」というキャッチフレーズに則ったものなのでしょう。
ただ、たとえ第三者から見れば「過剰な仕様」に見えても、
管理仕様を「落とす」ことについて合意形成を図るのはなかなか容易ではありません。
(2)ハイエンドな共用設備の存在
上記のタワマンでは、高速エレベーターが5台設置されていました。
また、駐車場としてタワー式の設備が2基(各60台収納)も付帯していました。
この2種類の設備の維持管理費の合計だけで年間約1千万円かかっています。
しかし、これらの設備の保守点検費用は下げることがきませんでした。
その理由は、それぞれの設備に付帯している制御関係の装置がハイエンドな仕様になっているため、それを製造したメーカーもしくはその系列の保守業者でないと取り扱いができないからです。
つまり、他の保守会社という「代替案」がないため、
結局のところ競争原理が働かないのです。
こうした2つの理由から、一般的なマンションと比べると、
タワマンでは「管理見直しによる剰余金の創出」という効果が得にくいのです。

もうひとつ、一般のマンションとの比較で留意すべき点は、
「合意形成がしづらいコミュニティー」という特性です。
一般的な分譲マンションは、
これまでせいぜい10数階で住戸タイプや価格も似たり寄ったりのプランになっている「金太郎飴型」が主流でした。
つまり、住戸間で世帯構成や収入レベルもさほど変わらず、
住民のライフスタイルや価値観も近いのが普通でした。
そのため、管理組合内の合意形成も「話し合えば折り合える」部分が少なくなかったと思います。
それに比べて、タワマンはどうでしょう?
地上40階以上、南向きも北向きもあり、4LDKもあれば1LDKもありで、
サイズも価格もまちまちです。
したがって、区分所有者の経済力や世帯構成も様々でバラツキが激しいはずです。
しかも、外国人の投資対象にもなっており、賃貸の割合も少なくないでしょう。
こういうコミュニティーではより多様な意見や要望が住民内に燻っているため、
合意形成を図っていくのは決して容易ではないはずです。
<参考記事>
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