マンション修繕積立金の大幅増額を避けるには「管理コストの適正化」が一丁目一番地
2026/07/05

マンション管理士の村上智史です。
先日、日経新聞に、
「マンション修繕不正、住人になりすまし利益誘導 渦中の社長に直撃」
と題した記事が掲載されていました。
首都圏の複数のマンションで、工事会社の社員が区分所有者になりすまして、大規模修繕委員会に参加し、自社と関係の深い設計コンサル会社を選定するよう誘導していたというものです。
都内の別のマンションでもその工事会社による同様の事件が発覚しています。
この事件の本質は、
従来から管理組合が潜在的に抱えているリスク
を浮き彫りにしたことにあります。
まずは、この事件の経過を整理したうえで、管理組合が取るべき防衛策について考えてみたいと思います。
◾️ 神奈川県内のマンションで、大規模修繕委員会に工事会社A社の社員2人が2024年頃から区分所有者になりすまして参加した。
◾️「なりすまし」の手口は、以下の通り。
・「調査モニターの募集」、「管理会社から依頼された調査」などと称し、工事会社(A社)が一般住民に接触。また、住民に報酬を支払う。
・ 委員会への出席を住民から委任された形を装って、A社の社員が代理出席。
・委員会内で設計コンサルの選定資料の作成等をサポートし、委員会の議論を誘導。
・ A社と関係の深い設計コンサル(B社)が選ばれるよう誘導。(B社社長はA社の元社員)
◾️設計コンサルがB社に内定された後、見積金額の比較表を改ざんしていた疑いが生じたことから、潜入しているA社社員に身元確認を求めた結果、なりすましが発覚。
◾️組合はB社発注直前で契約をキャンセルするとともに、A社を刑事告訴した。
◾️その後、A社社長と社員2人が偽計業務妨害および詐欺未遂容疑で書類送検された。
◾️都内マンションでも、A社の別の社員と見られる人物が、管理組合の理事と修繕委員長に就任していたことが明らかになっており、同様の事案が発生している。
◾️取材した際のA社の主張
・ 管理会社と設計コンサル・工事会社との間にはバックマージン慣行がある。
・自社はその仕組みから排除されたため、住民への直接営業に切り替えた。
・「なりすまし」は今後行わないが、住民への直接営業は継続する。
今回の事件は、直接的には以下の2つのポイントがあります。
(1)住民自身が業者による「なりすまし」を容認してしまったこと
これは、区分所有者自身が、管理組合の仕事をもはや「自分事」とは捉えず、
「他人事」とみなしているためです。
しかも、その見返りとして報酬も受け取っているのが事実なら、
区分所有者としての最低限の責任感が欠如していると言わざるをえません。
(2)「なりすまし」行為がすぐに発覚しなかったこと
これについては、管理組合の運営上、止むを得ない事情があります。
それは、「修繕委員の選出プロセス」と「恒常的な成り手不足」です。
修繕委員会のような専門委員会は、理事会の「下部組織」として位置付けられていますが、そのメンバー(委員)は、総会決議を経ないで選出されることが少なくありません。
そのため、身元確認が甘くなりがちです。
また、理事会役員は、区分所有者の義務として輪番制で交代しながら半強制的に選任することが多いですが、専門委員はボランティアで候補者を募るのが一般的です。
役員を含め「成り手の人材不足」に悩む管理組合にとって、立候補者は「それだけで有り難い存在」であり、その身元まで確認するというモチベーションが生じにくいのです。
このような事件は、今後も十分起こりうるだろうと思います。
なぜなら、管理組合には以下のように潜在的なリスクを抱えているからです。
1)当事者意識の低さ
区分所有者の一般的な意識として、
「管理組合の仕事は、管理会社や理事がやってくれるだろう」
という意識が根強くあります。
その結果、管理費や修繕積立金の値上げなどのように
直接自分の利害に関わることを除き、組合の動向や意思決定に関心を持ちません。
その結果、一部の区分所有者、あるいは管理会社など
外部の関係者が大きな影響力を持ちやすくなるのです。
2) 専門知識の不足
一般の区分所有者は、管理や修繕に関する専門知識が乏しいのが普通です。
そのため、こうした知識の基礎的な知識だけでも最初にインプットする努力をしない限り、理事会や委員会の議論を主導していくことは困難でしょう。
一方、管理会社、設計コンサルタント、施工会社は
いずれも「百戦錬磨のプロ」です。
当然ながら、情報量や経験・知見に関する彼我の差は大きいものがあり、
これが管理組合の立場を不利にさせてしまいます。
3)専門委員会のガバナンスの難しさ
上述のとおり、専門委員会は委員の選出方法が総会決議を経ないことや、任期が不明確であることなどから、少数の意識の高い区分所有者が継続して任命されることが珍しくありません。
毎年のようにメンバーが交代する理事会役員に比べて、
委員会が組合内で強い発言力や影響力を持つケースが少なくありません。
今回のなりすまし事件は、まさにその弱点が利用された可能性があります。
今回のような事件を予防するだけでなく、専門委員会の活動を有効なものとするには、管理組合はどのような対策を講じればよいのでしょうか。
<私の提案>
① 専門委員の選任について
役員と同様に、総会決議事項とする。
② 委員長の選任について
理事会の決議事項とする(委員間の互選はNG)
②委員会の出席について
選任された区分所有者本人のみが出席できる(親族を含めて代理は認めない)
②専門委員会の運営細則の制定
委員の資格要件、委員会の開催要件及び議事運営のルール、報酬条件などを定める。
③ 専門委員会の開催・運営状況について
理事会への定期報告を義務付ける
④設計コンサルタントや施工業者の選定
理事会(及び総会)の決議を必須とし、その選定プロセス・理由を可視化する。
⑤理事会のガバナンス
役員の中から専門委員会担当を選任し、オブサーバーとして参加する。
今回の事件は、
マンション管理組合のガバナンス体制の脆弱さ
が露呈したことにあります。
そして、さらにその背景には、専門知識の不足以上に
区分所有者の当事者意識の低さが影響しています。
どんな組織や集団も、メンバーに当事者意識が乏しければ、
いくら管理規約やルールを整備したところで、
「仏像作って魂入れず」です。
まずは、
「自分たちの資産は自分で守る」という覚悟が必要なのです。
マンション管理見直し本舗では、
などを行っています。
お気軽にご相談ください。
サイトページ内で以下のメニューを用意していますので、ぜひお気軽にアクセスしてみてください。
(1)無料のオンライン相談
(2)管理委託費の簡易シミュレーション
(3)設備保守・工事費の適正価格シミュレーション
(見積もりのご依頼も受け付けています)
※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/
↓ ↓
Copyright © ilodolist All rights reserved.