マンション管理組合が守るべき資金運用の「基本スタンス」とは?
2026/03/05

”もしあなたのマンションで、相続人全員が相続放棄した住戸が発生したら、
今後管理費は誰が払うのでしょうか?”
4月14日付けのゴールドオンラインに、
「マンション管理費を3年滞納の末に死亡、親族5人は「全員相続放棄」…管理組合が遅延損害金まで「全額回収」できたワケ」と題した記事が掲載されていました。
◾️ 管理費等を滞納中の住戸で相続が発生
・築50年超のマンションで、3年分の管理費を滞納している住人が死亡した。
・管理組合が調査費用を投じて相続人を特定したが、全員が相続放棄を選択した。
・上記調査費や滞納債権が未回収となり、組合が多額の負債を抱える危機に陥った。
◾️ 滞納債権を回収できたワケ:「相続財産清算人」の活用
・同じく生前未納であった固定資産税の回収のため、市役所が家裁に申し立てたうえで「相続財産清算人」を選任していることが判明した。
・その際に、管理組合が当該清算人に対して滞納債権を届け出たことで状況が好転。
・その後、清算人が対象住戸を売却(任意売却)したことから、滞納管理費、調査に要した費用、さらには遅延損害金まで全額回収することができた。
◾️ 管理組合が知っておきたいこと
・管理費等を滞納している区分所有者が逝去したが、相続人が不在(または全員放棄)の場合、管理組合自らが家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要がある。
・その際、家裁に「予納金」(50万〜100万円程度)を納付する必要がある。ただし、当該住戸が売却によって処分されれば、その売却代金から優先的に精算される。
◾️ 「相続放棄時代」への警鐘
・築古マンションでは、居住者の死亡に伴う相続放棄のリスクが高まっている。
・このまま事態を放置すると、滞納額が膨らむ一方のため、管理組合の財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
・管理組合による主体的かつ早期の法的対応が不可欠である。
近年、マンション管理の現場で静かに、しかし確実に増えつつあるのが、
「区分所有者の死亡後の相続放棄」に伴う管理費滞納のリスクです。
これまで滞納管理費は、
売買を通じて次の所有者、もしくは相続人から回収できる
という前提で考えられてきました。
しかし今、その前提が崩れつつあります。
郊外エリアの老朽マンションやリゾートマンションなどでは、
「相続するとかえって損になるので、放棄する」
というケースが珍しくなくなっているのです。
この記事で重要なポイントは、死亡後に発生する滞納管理費の取り扱いです。
(たとえ生前に滞納がなくとも、死亡後には滞納債権が発生する可能性は高い)
この滞納管理費等は、一義的にはその相続人に包括的に承継されます。
しかしながら、その相続人が相続を放棄した場合は請求できなくなります。
そのため、次に以下の対応が必要になります。
1)次順位の相続人の有無を確認のうえ、当該人物に請求する。
2)結局相続人が見つからなかった場合、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てる。(住戸の売却処分を求め、その代金をもって債権等を回収する)
なお、その際には予納金の納付も必要なため、事前の総会決議が必要です。
これまで相続放棄等により相続人が存在しない場合は、
上記の通り管理組合が家裁に申し立てを行い、「相続財産清算人」を選任することが、滞納管理費を回収するための唯一の手段とされてきました。
ただし、相続財産清算人制度の場合、
被相続人の「全財産」を対象に調査・清算を行うため、他の債権者(金融機関や税務当局等)との調整が必要となり、手続きが長期化しやすい傾向がありました。
さらに、申立てにあたって数十万円から100万円程度の「予納金」も必要なことから、管理組合にとって大きな負担となります。
こうした課題を踏まえ、本年4月施行の改正区分所有法で新たに措置されたのが、
「所有者不明専有部分管理人」制度です。
この制度は、従来の相続財産清算人とは異なり、被相続人の全財産ではなく、
「当該マンションの専有部分に限定して」管理・処分を行うことができます。
すなわち、被相続人が所有していた「特定住戸」だけを対象として、裁判所が選任した管理人が管理・売却等を行うことが可能となるため、より迅速かつ実務的な対応が期待されます。
つまり、相続財産全体の清算を待つことなく、専有部分の処分を通じて債権の早期回収につながれば、大きなメリットといえるでしょう。
もちろん、個別の事案によっては、
従来どおり相続財産清算人の選任が適切なケースもあります。(下記参照)
<相続財産清算人制度が望ましいケース>
① 被相続人に他の資産が相当程度存在する場合
被相続人が、当該マンション以外にも預金や不動産などの資産を有している場合には、専有部分だけでなく全財産を対象とした清算を行う方が合理的です。
② 他の債権者が多数存在する場合
被相続人に対して、金融機関や税務当局など複数の債権者が存在する場合には、債権者間の公平な調整が必要となるため、相続財産清算人の方が適合性が高いといえます。
④ 税金(固定資産税等)の滞納がある場合
冒頭の記事のように、税金の滞納がある場合、課税当局が主導して相続財産清算人の選任を申し立てるケースも少なくありません。
この場合、すでに清算手続が開始されていることもあるため、管理組合としてはその手続に乗る方が効率的です。
⑤ 権利関係が複雑な場合
当該住戸に抵当権が設定されている、共有持分がある、他の不動産と権利関係が絡んでいるなどのケースでは、当該住戸単独では問題を処理しきれない可能性があります。
⑥ 専有部分の資産価値が低い場合
築古物件や地方のリゾートマンション等のため資産価値が著しく低い場合、専有部分単体では売却できなかったり、管理人を選任しても費用倒れになるといったリスクがあります。
以上の点も考慮に入れつつ、
今後は「相続財産清算人」と「所有者不明専有部分管理人」のいずれかを選択すればよいでしょう。

相続や相続放棄の発生を伴うかどうかを問わず、
管理組合としては、滞納発生に備えた日頃の予防対策と滞納が発生した際の初動対応がとても重要になります。
そのため、以下の対策を検討のうえ実施されることをお勧めします。
(1)区分所有者ならびに緊急連絡先の定期更新
区分所有者の死亡や転居が発生した場合でも、管理組合側がそれを把握できなければ、初動対応が大きく遅れます。
特に単身高齢者が増えている現在では、
「異変に気づけない」こと自体が最大のリスクです。
そのため、区分所有者の情報および緊急連絡先(親族等)の定期的な更新をルール化しておくことが重要です。
実務上のポイントは以下のとおりです。
年1回程度、定期総会の議案書送付と併せて書面で更新の確認を行う
緊急連絡先として、本人の親族等の連絡先も把握しておく
管理規約等で本書面の「届出義務」を明文化しておく
(2)滞納管理費の回収に関する規約条文の見直し
滞納発生時の対応について、理事会が迅速に対応できるよう、
あらかじめルールを明確化しておくことが極めて重要です。
そのため、必要な対応として以下の内容をご検討ください。
督促の手順(書面・内容証明等)の明確化
督促後一定期間経過後の法的措置への移行基準
遅延損害金の「利率」(不記載の場合も少なくない)および請求方法
弁護士費用等の「違約金」の請求の可否
これらを明文化しておくことで、対応の遅れや恣意的判断を防ぎ、結果として回収率の向上と組合財務の安定につながります。
(3)相続発生時の対応マニュアルの整備
区分所有者の死亡が発生した場合、管理組合として取るべき対応は多岐にわたります。しかし、これを都度判断に委ねてしまうと、対応の遅れや漏れが生じやすくなります。
そのため、相続発生時の対応手順をあらかじめマニュアル化しておくことが重要です。
主なポイントは以下のとおりです。
ア)区分所有者の死亡情報を把握した際の初動対応
居住状況、緊急連絡先や未収金の有無の確認など(管理会社との共有)
イ)相続人の調査について
戸籍謄本の取得などを誰に委任するかといった役割分担
ウ)相続放棄の有無の確認
家庭裁判所への照会や相続人への確認
エ)滞納管理費の回収方法
相続人への請求、相続放棄の際の管理人選任の申立て
このように対応手順を明文化しておくことで、理事が交代しても対応の質が維持され、「誰が担当しても同じレベルで動ける状態」を作ることができます。
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