マンション保険の「見直し」で保険料を4割超削減できたワケ
2026/01/05

7月24日付けの日経新聞に、「マンション駐車場はお荷物? 車離れで「機械式」維持費重く」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
======
◾️ 機械式駐車場の扱いに悩むマンション管理組合が増えている。車離れで稼働率が落ち、必要費用を賄えなくなる例が多い。
◾️ 千代田区のマンションでは、利用者のいない5台を収容する機械式駐車場設備を撤去し、平置きに変えた。
◾️ 撤去のための工事費等で約700万円かかったが、主としてマンション外の人が使う時間貸し駐車場などに改装したことで年間約350万円の収入になり、逆に維持費はほぼ不要になったという。
◾️ 都市部では車離れが進んでおり、首都圏や大阪府の自家用乗用車の世帯当たり保有台数は10年前と比べ軒並み下落した。東京都に至っては0.41台と全国最低水準にある。
◾️ 国土交通省によると、マンションに機械式駐車場が本格普及したのは1990年代後半から。この時期から機械式は一貫して40〜60%程度となっている。
◾️ 機械式設備には定期的なメンテナンス料金に加え、設置後25年前後で設備を入れ替える例が多い。これらの費用を合計すると概算でパレット1台当たり年10万〜15万円程度かかる。
◾️ 駐車場の空きが増えた場合の対策は、原則として駐車場使用料を値上げするか、マンションの修繕積立金等から補填するかの二択。ただ、車を使わない所有者は駐車場への高額支出へ難色を示す例が多いため、話し合いは簡単にまとまらない。
◾️ 居住者以外に駐車場を貸す方法もあるが、課題もある。外部に貸す場合、通常組合総会の決議が要るが、安全への懸念から反対される例もある。
◾️ また、駐車場を外部に貸した場合、その収益に税が課されるため、申告などのため税理士報酬も必要になる場合があり、そのコストや手間を敬遠するケースもある。
◾️ 機械式の設備を撤去し、平置きにすれば維持費は下がるが、多額の撤去費がかかる。また、 機械式から平置きに変更する場合、マンション共用部分の大きな変更に該当するため「特別決議(4分の3以上の賛成)が必要になる。
◾️ 撤去・平置き工事を実施したマンションの理事長は「工事費は多額だが、維持費削減で長期的には積立金財政に約2400万円のプラスがあると説明会で提示して合意につなげた」と振り返る。
◾️ 機械式駐車場の入れ替え時期である築25年前後は、マンション建物の修繕費も膨らみ始め、管理組合の財政が厳しくなる例が多い。
◾️ 駐車場の空きが多く、外部貸しなども難しいなら早期に平置き化を決断した方が最終的な金銭面の打撃は少ない。
◾️ 駐車場を減らしたい場合も自由に行えるとは限らない。自治体が条例で、一定の駐車場設置を義務付けている場合があるためだ。
◾️ ただ、このルールにも変化が訪れている。国は3月、こうした自治体条例のひな型を改正。条件を満たせば、駐車場台数を減らせる規定を設けた。各自治体の条例が新しくなるのはまだ先の見込みだが、都度状況を確認してほしい。
======
首都圏のマンションでは、全住戸数に対する駐車場設置率は2007年をピークに下落に転じ、2016年以降は4割台まで落ち込んでいます。(下図参照)

冒頭の記事にもあるとおり、この背景には顕著な「車離れ」があり、その結果、既存マンションの駐車場の稼働率がおしなべて低下し、空き区画増加の問題が顕在化していることが影響していると思われます。
空き区画が増えると、管理組合の収入が減少する一方、保守点検費や維持修繕費は稼働率に関係なく負担するため、定額の管理費収入で運営している管理組合は、これを放置すると財政難に陥るリスクが高まります。
また、設備の経年劣化が進むと、設置後30年を経過した頃から多額の設備更新を迫られます。遊休化した設備がある場合、そのまま改修すべきかどうかという難しい意思決定に直面することになります。
駐車場の空き区画対策としては、以下のようなステップで検討することが多いです。
1)収益改善のための外部利用者への貸出し
サブリース業者を介して賃貸を検討する場合、利用者の募集や営業の代行業務のほかに、一定の収入の保証もしてくれます。
ただ、家賃保証を求めると、近隣の市場相場に対して概ね半分程度にしかならないのが一般的です。
また、マンションの住人以外に駐車場を貸し出す場合には「収益事業」と判定されるため、法人化していない管理組合でも「みなし法人課税」の対象になってしまいます。
ざっくり言うと、その賃貸収益に対して3割程度の税金を納めなくてはなりません。さらに、その申告を税理士に委託すれば、その代行費用(年間5万円程度)もかかります。
駐車場の空き区画数や料金水準にもよりますが、経済効果はあまり大きくないうえ、外部の人間がセキュリティ面でも懸念される点もあります。
2)長期的観点でのコスト削減策
遊休化した駐車設備の維持管理コストを軽減する方法としては、
やはり「設備の撤去・平面化」が最もお勧めです。(下記画像参照)
<設備を撤去後、鋼製板による平面化工事を実施した後の状況>

具体的には、パレットをカニクレーンで撤去し、その後ピット内に梁と柱を組み立て、その上に鋼製板を敷き込んで平面化したスペースに改装するという工事です。
その代替案としては、設備を撤去した跡のスペースを砕石で埋め戻し、アスファルト舗装で表面を仕上げる方法もあります。
ただ、こうした「埋め戻し工法」の場合、ピット自体が砕石の重さに耐え切れるかどうかという問題があります。
マンション敷地の地質の状況(地盤の硬さ、水位)によっては、埋戻し後に地盤沈下や地下水の逆流を引き起こす事例も一部見られ、施工業者もその部分は保証しないため、リスクがあることからお勧めしていません。
3)駐車場設備の撤去・平面化は、総会の「特別決議」が必要
駐車場設備の撤去は「共用部分の大きな変更」に該当するため、総会の特別決議事項となります。
その場合、全区分所有者の4分の3以上の賛成が必要です。そのため、いきなり総会に議案を上程するのはリスキーです。
そのため、顧問先のマンションでは、これまでの理事会での検討経過から撤去・平面化の具体的なプランならびに経済効果の試算(下図参照:32台のパレットを撤去し、12台分の平置きに改装したケース)などを盛り込んだうえでご意見を伺う機会として説明会を開催したり、アンケートを実施しています。
イニシャルの工事費はかかりますが、長期的には設備一式の更新費用、その後の部品交換費用、そして保守点検費を確実に減らすことが可能なため、「先憂後楽」のプランになります。

なお、冒頭の記事にも紹介されていますが、自治体によっては、駐車場の附置義務条例が制定されている場合があるため、平面化を検討するに際には事前に自治体の担当窓口に相談するなどの留意が必要です。
附置義務条例は、過去に都心部等で駐車場不足が問題となったことで制定されたもので、大規模な商業施設やマンションを新設する際には、収容できる駐車台数を一定数設けることを義務付けています。
そのマンションが建つエリアによっては、この条例に該当する可能性があり、機械式駐車場の撤去によって収容できる駐車台数を減らすと、条例に違反するおそれがあります。その結果、場合によっては罰金等の行政罰が課されるリスクがあります。
実際に、顧問先マンションでは、都の附置義務条例の対象になるため、2年くらいの準備期間を経て実施しました。(下記記事参照)
以上、検討のステップを紹介しましたが、設備や工事の専門知識が必要なうえ、管理組合の財政状況に関する理解も不可欠です。
また、総会の決議要件も厳しいため、住民のコンセンサスを得るための準備や根回しも求められます。
理事会が自力で実現していくのはかなり難しいテーマだと思いますので、経験豊富な専門家に相談されることをお勧めします。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.