残念なことに、またしてもマンション管理組合で横領事件が発覚したというニュースが入ってきました。
【事件の概要】
・新潟県南魚沼市の大型リゾートマンション「ツインタワー石打」(576戸)の管理組合前理事長が約16年間にわたり、組合の管理費など総額約11億円を着服していた疑いがあることが、組合関係者への取材で分かった。
・この理事長は昨年11月にすでに解任されており、組合は時効前の約4億円分について今年1月、業務上横領容疑で警視庁に告訴状を出した。
・前理事長は、99年に理事長に就任で公認会計士の有資格者でもある。昨年秋、組合が積み立てていた施設の管理費などを着服していたと別の組合員に明かし、組合の調査で就任以降に11億円にのぼる使い込みが発覚した。
・組合が調べたところ、前理事長は組合口座から自らの口座に送金するなどの手口で着服したうえに、組合口座の残高証明書を改ざんするなどして発覚を逃れた模様。
・組合に対し、「一時的に借りて株などの投資に回し利益を上げるつもりだったが、失敗して返せなくなった」などと話しているという。
この事件を聞いて不思議に思ったのは、これほど多額の横領事件がなぜ長期間にわたって発覚しなかったのか? ということです。
別のサイトでは、このマンションの管理体制を示すスキーム図(2008年当時のものと記載されている)が掲載されています。
これによると、フロントならびに会計業務は管理会社に委託していることになっています。
それが事実なら、理事長とはいえ、組合のお金を自分の口座に送金するのは容易ではないはずです。
なぜなら、組合財産の管理方法として、少なくとも銀行の預金通帳と銀行印の保管者が理事長もしくは管理会社の一方に偏ることのないよう法律で定められているからです。
そのため、通常は管理会社が通帳を、理事長が印鑑をそれぞれ保管しています。
つまり、組合口座から資金を出す際には、理事長と管理会社の両方が認識できるようになっているわけです。
したがって、まずはこの分別管理ルールが守られていなかった可能性が考えられます。
もう一つは、管理会社の存在意義に関する疑問です。
管理会社が組合会計業務を行っていたなら、もっと早い段階で横領の事実は発覚していたはずではないかと考えます。
今回の事件は、前理事長が自ら組合の口座から自分名義の口座へ送金できたうえに、残高証明書も前理事長によって改ざんされた事実から管理会社で取得していなかったものと推察されます。
過去の着服事件では、預金通帳と印鑑の分別管理は行っていたものの、理事長が預金通帳の紛失届を銀行に提出し、通帳を入手したうえで印鑑を使って預金を引き出したというケースがあります。
このような場合は、管理会社がそれをタイムリーに認識するのはさすがに難しいかもしれませんが、遅くとも決算作業の段階、つまり1年以内には着服の事実を掴めるはずです。
管理会社の運営体制がどのように機能していたのかをぜひ確認してみたいところです。
スキーム図によれば、この管理組合の理事は10名以上、監事も2名いる体制だったようです。
それは事実なら、大規模マンションの財産を管理する体制として、管理会社の業務だけでなく、理事会のマネジメントにも構造的な欠陥があり、機能不全に陥ってしまったようにも思えます。
村上 智史
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