先月、都内になる顧問先マンション(築21年・76戸)で、駐車場設備の更新と一部平面化工事が無事竣工しました。
【設備更新後の機械3段式(8区画)のユニット】
【設備撤去・平面化後のユニット(2区画)】
このマンションでは、駐車場区画(全22台)の稼働台数が漸減傾向にあり、月極契約は半分以下の10台(平置き1台分を含む)にとどまっていました。
そのため、駐車場使用料の収入がピーク時に比べて年間350万円減少しました。
また、築20年近く経過したため、駐車設備の経年劣化に伴う修繕が必要になり、今後修繕費が嵩むことが確実な状況となったため、事実上遊休化している設備のあり方を見直すことにいたしました。
さらに、従前の設備は某中堅メーカーの製品ですが、昇降用連結シャフトが破断するなどの事例が複数発生していたため、保守専業業者が受託したがらないという評判が上がっていました。
つまり、このマンションの駐車場は「空き区画の増加による設備遊休化」と「駐車設備の事故リスク」という2つの課題を抱えていたのです。
一方、このマンションには、機械式駐車設備として2種類のユニット(16台分・5台分)がありました。
ただ、仮にすべての設備を撤去・平面化した場合には、旧機械式設備の跡地には5台分(ユニット1:3台、ユニット2:2台)の駐車場しか確保できず、平面式の1台を加えても計6台となり、現在の契約車両の台数にも届かないことがわかりました。(下図参照)
【従前の駐車場の平面図】
そのため、「ユニット2」(5台)は撤去・平面化するものの、「ユニット1」(16台)についてはこれを撤去し、8台分の駐車設備に新規入替えを行わざるを得ないとの結論に至りました。
つまり、「ユニット1」は8台収納可能な新規の設備、「ユニット2」は2台の平置き区画となるため、平地式1台を合わせて計11台とする方針となりました。
駐車区画が半減(22台→11台)することによって、今後25年間で想定される維持修繕費も、53百万円→30百万円に4割超減らすことができる見通しが立ちました。
また、設備更新(ユニット1)と設備の撤去・平面化(ユニット2)によって、駐車可能な車両の対象範囲が拡大するため、利便性も向上します。(下記参照)
<全 長> 40センチUP <車両重量> 900kgUp
<車 幅> 10センチUP <車 高> 最大45センチUP
こうして駐車設備の更新と一部撤去・平面化の混合プロジェクトにて推進する方針が決まったのですが、ここに新たに「大きな壁」が立ちはだかります。
それは、東京都の駐車場附置義務条例です。
このマンションは、最寄りのターミナル駅近傍の商業地域に建っており、新築当時、附置義務条例に則った駐車台数を確保するよう指導を受けていました。
そのため、市役所に本プロジェクトの相談をしたところ、以下のような説明がなされました。
(1)新築時の基準台数 (当マンションの場合 :20台)未満に削減する場合 は、市に事前申請のうえ附置義務緩和の認定を受けることが必要である。
(2)具体的には、市との事前協議 (1ヶ月程度)を行なったうえで、組合総会の特別決議を得た後に、正式に市に対して認定申請を行う必要がある。
(3)都の駐車場条例によると、附置義務緩和の台数制限として、過去3年間の最大利用実績台数 を下回らないこと等が定められている。
(4)この条例に違反して設備の撤去・平面化を実施したことを後に行政が認知し、原状復旧等の措置命令に対して組合が従わなかった場合は、50万円以下の罰金を課せられる。
そのため、上記(3)の規定に則ると、11台の区画に縮小するためには最短でも2022年9月以降まで待たなくてはならないことがわかりました。
その条件をクリアしたうえで、改めて自治体に事前協議のための申請を行い、その他に必要とされる諸手続き(管理規約や使用細則の改定や必要書類の整備など)の準備を行なった結果、自治体の事前了承が得られ、2022年11月に臨時総会に本議案(特別決議事項)を上程したところ、4分の3以上の多数の承認が得られ可決したのです。
しかしながら、コロナ禍等による昨今の半導体不足などの影響を受け、工事発注から着工までおよそ1年間のインターバルを余儀なくされたため、先般ようやく完成に至ったわけです。
結局、検討開始から足掛け4年もかかりましたが、
ようやく工事が完成し、感慨もひとしおです。
<参考記事>
村上 智史
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