マンションの本当の「寿命」って、どれくらい?

 

「新築であれば一生住めるのだろうか?」
「築30年の物件を買ったらすぐに建て替えになるの?」

住宅ローンを組んでマンションを購入する際に、その建物が何年持つか、つまり「寿命」は気になりますよね。寿命として考えられる具体的な指標をいろんな角度から探ってみましょう。

 

法定耐用年数

マンション寿命を考える一つの目安として、「法定耐用年数」があります。

これは「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定められたもので、「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造」の住宅用建物は、47年と定められています。

ただし、これは会計の資産評価上の寿命なので、これを超えたからといって取り壊さなければならないわけではありません。ただし、その法定耐用年数さえ持たないマンションもあります。

 

取り壊される理由

取り壊される理由には、不適切なメンテナンス、あるいは天災地変などの多くの要因が考えられます。中でも、以下の2つが多いといえるでしょう。

1.給排水管類の寿命

上下水道などの配管類の寿命は、構造躯体のコンクリートよりも短く、30年前後といわれています。そのためこれらをコンクリートに埋める施工方法の場合、設備更新ができないので、取り壊しとなります。

ただし近年では、このようなことがないよう、配管類の交換が容易な構造となっており、今後の寿命は鉄筋コンクリートの強度に左右されるようになるでしょう。

2.鉄筋コンクリートの強度低下

鉄筋コンクリートの強度を維持するには、コンクリートの「中性化」を防ぐことが重要です。コンクリートは最初アルカリ性ですが、空気に触れることで毎年表面から0.5㎜ずつ中性化していきます。

一般的な鉄筋からコンクリートまでの厚み(かぶり厚)は3cmなので、60年で鉄筋まで中性化することになります。コンクリート自体は、中性化してもその強度が落ちることはありませんが、空気や水分が浸透しやすくなり、中の鉄筋が錆びやすくなります。これが強度の低下につながるのです。

このような中性化を防ぐ方法には、「かぶり厚」を厚くする、外壁タイルなどの外装材を劣化に強いものにする、特別に強度の高いコンクリートを使用する、といったことが考えられます。

 

客観的に寿命を判断する方法

上記のような対策を講じたマンションかどうかを、簡単に見分ける方法があります。それは「住宅性能表示制度」です。これは、国がマンションのさまざまな性能を等級で評価するもので、大手デベロッパーが供給する分譲マンションでは、ほとんどがこの等級を公表しています。

その中で、寿命に関する評価項目は、「劣化対策等級」で判断することができます。

劣化対策等級ごとの耐用年数

等級3:75年から90年
等級2:50年から60年
等級1:建築基準法に定めるレベル

 

ほとんどの新築物件では、最高レベルの「等級3」をクリアしていますが、すべてではないので購入前に確認することをおすすめします。

 


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椎名 前太
住宅ジャーナリスト・宅地建物取引主任者。雑誌の広告営業やキャリアカウンセラーとして大学講師など複数の職業を経験。在職中に自宅を建築し、大満足したことから「多くの人にこの充実感を味わってほしい!」と住宅ジャーナリストに転身。「消費者目線」と「キャリアカウンセラースキル」を活かし、法律・税制関係でも中学生がわかるように書くのが得意。出版に関わった住宅関連の書籍は10冊以上。ブログ「こだわりの注文住宅比較」は月間約15万ページビュー。

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