4月20日付の「現代ビジネス」に、「いま日本で急増する「マンション保険料」高騰のウラ事情…「入っても地獄」「入らなくても地獄」の実態を明かす」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
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◾️ 築30年以上の高経年マンションにおける保険事故の請求は、漏水関係が約5割以上を占めており、管理組合が負担する保険料が大幅に値上りしている。
◾️ このまま値上げが進めば、保険を継続できない管理不全マンションが増える恐れがある。このようなマンションを増やさないためにも、管理組合は漏水など共用部分の損害事故に対して適正に対応していく必要がある。
◾️ 現在のマンション保険の保険料は、事故件数の多い・少ないで保険料が変動するように料率が設定されおり、専有部分で発生した事故にも管理組合の個人賠償責任特約を使用していると、更新時に保険料が大幅に値上がりする仕組みになっている。
◾️ 被害宅の原状復旧工事等の損害賠償は、本来加害者宅の保険で対応すべきところ、共用部の火災保険の付帯条件に含まれている「個人賠償責任特約」が積極的に使われていることが多い。
◾️ 保険料の大幅な値上がりを避けるには、居住者が自ら負担する個人賠償責任特約の加入率を上げていくことが必要不可欠である。
◾️ 加害者個人で加入している個人賠償保険を優先的に使用することで、管理組合が加入している保険契約の事故カウントが抑えられ、結果的に保険料が安く抑えられるからだ。
◾️ マンション保険に付保されている個人賠償責任特約は、
①一般的にマンションの居住者本人や家族等が日常生活または居住者戸室の管理不備等で他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまったとき
②線路へ立ち入り等により電車を運行不能にさせてしまったとき
③他人に借りた物を国内外で壊したり盗まれたとき
など、さまざまなケースで保険金が支払われる。
◾️ たとえばマンションの敷地外でペットが居住者に噛みつくなどの危害を与えた場合でも、マンション保険の個人賠償責任特約から保険金を支払うことが可能である。
◾️ マンション保険の個人賠償責任特約の被保険者は「居住者」となっており、マンションの敷地内か外かを問わず包括的に補償しているケースが多いため、敷地外の事故だとしても断れない可能性があるという。
◾️ そのため、ある保険会社では、個人賠償責任特約の補償範囲をマンション敷地内に限定する選択肢を設けている。
◾️ また、保険金の請求回数によって更新時の保険料が変わるため、まずは、各居住者が加入している、自宅(専有部分)の火災保険や自動車保険、県民共済、クレジットカードの個人賠償責任保険を利用してもらい、管理組合が加入している保険はなるべく使わないように居住者に協力を呼び掛けているマンションも増えているという。
◾️ 近年ではマンション管理組合保険の個人賠償責任特約には最初から加入しない管理組合も増えている。ただし、その場合は漏水の原因となった住戸の区分所有者が、個人賠償責任保険に入っていなければ、被害を受けた住戸が損害賠償を受けられず、原状回復工事できないなどのリスクを孕むことになる。
◾️したがって、管理組合が個人賠償責任特約に加入しない場合は、居住者向けにあらかじめ説明会を開催するなどして理解と協力をお願いし、居住者全員に各自で個人賠償保険に入るようにするルール作りなどが必要不可欠である。
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下表のとおり、管理組合が加入するマンション保険は、主契約の「火災保険」に加えて、「施設賠償責任特約」と「個人賠償責任補償特約」の2つの特約を加えて基本3点セットで構成されているのが一般的です。
個人賠償責任特約が付帯している理由は、上記の記事でも紹介されている通り、専有住戸間で漏水事故が発生した場合に、被害者を速やかに救済するためです。
つまり、上階住戸の居住者が、被害者である下階の居住者に原状復旧の賠償責任を負うことになった際に、この保険の適用を申請することによって円滑に賠償問題を解決できる可能性が高いからです。
ただし、マンションの敷地外で管理と全く関係のない事故でも包括的に適用されることが一般的なため、安易に使われてしまうと管理組合の負担がいたずらに増えてしまい、結局管理費の負担増に跳ね返ってくるかもしれません。
そのため、個人賠償責任特約もマンションの敷地内で発生した事故に対象が限定されるタイプを選択したり、あるいは、まずは個人で加入している保険を優先して使ってもらうように誘導するといった運用を行う管理組合もあります。
個人で加入しても年間2千円程度の保険料でかなりの補償が受けられるので、それが徹底できれば管理組合でわざわざ加入する必要はないのは確かです。
ただ、万が一、酷い漏水事故が起きた際に、加害者である居住者が保険に加入していなかったら、困るのは被害を受けたにもかかわらず原状復旧ができない住戸の居住者です。
そのため、個人賠償責任保険に加入しないという決断はなかなか勇気が要る話です。
実際には、保険金額の上限を1千万円程度に抑える、(保険会社の)免責額を1件あたり10万円設定するなどの「折衷案」で対応しているケースが多いのが現実です。
<参考記事>
村上 智史
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