マンション管理費の長期滞納者に訴訟を提起!
2024/11/18
週刊東洋経済の12月8日号では、「マンション絶望未来」と題した特集記事が組まれているので読んでみました。
特集の大まかな内容は、以下の通りでした。
■ 新築マンション販売状況の悪化に伴う「潜在在庫」増加の実態
■ 老朽化・廃墟化マンションの実態
■ 2022年がヤマ場とされる、タワマンの「修繕クライシス」
■ 大規模修繕コンサルの悪質な手口の実態
これらの記事の中で、「ちょっとおかしいんじゃない?」と思った部分があります。
後半の部分では、首都圏にある20階以上のタワーマンションのデータを収集したうえで現状の修繕積立金額を推定し、組合の財政状況を分析した結果が紹介されていました。
そしてその結論として、
「現状の修繕積立金単価(専有面積あたり)と国交省のガイドラインの水準と比較してみたところ、全体の8割強が積立金不足と判定された」ということでした。
たしかに、国交省の「修繕積立金ガイドライン」を読むと、30年間の均等積立方式を前提とした場合、「20階建て以上のマンションでは、月額@170円が少なくとも必要」と解釈できます。(下記ガイドラインの抜粋を参照)
その金額を下回っているマンション が調査対象となった物件全体の8割以上ある、というのが結論なのですが、それでは残念ながら「お粗末な内容」と言わざるを得ません。
その理由を説明しましょう。
<理由 その1> 竣工当初の修繕積立金の水準が考慮されていない!
多くの新築マンションの竣工当初の修繕積立金は、@90円台の単価で設定されており、築5、6年目を目途に1回目の増額改定期を迎えるのが標準的です。
したがって、調査した時点でガイドラインの下限金額(@170円)を超えているとしても、現在の水準に増額されるまでの期間について潜在的な資金不足が累積しているはずです。
しかし、本記事の前提条件を読む限り、
増額改定されるまでの期間にかかる資金不足分については考慮されていません。
<理由 その2> 機械式駐車場の修繕にかかる加算分が考慮されていない!
国交省の「修繕積立金ガイドライン」は、実は2部構成になっています。
まず、延床面積と階数に応じた建物本体の修繕積立金の目安が示されています。
これを見る限り、専有面積1㎡あたり@200円前後必要なことが分かります。
<修繕積立金ガイドラインより抜粋>
しかし、もう一つ重要な項目があります。
それは、機械式駐車場が附設されている場合の加算分です。
その住戸規模に対して敷地面積の狭い場所に立地しているタワーマンションの場合、おそらくほとんどの場合、地下部分等に機械式駐車場が附設されているはずです。
この機械式駐車場設備の修繕や更新の費用が、「無視できないレベル」の金額に及ぶのです。
最近の新築物件こそ、昨今のクルマ離れの傾向をふまえ住戸数に対する駐車場の付置率を3〜5割程度に抑えていますが、一昔前の物件では付置率は結構高いと思われます。
そして当然のことながら、
駐車場の付置率が高いほど、必要な積立金の加算額もそれだけ大きくなります。
たとえば、国交省のガイドラインでは
昇降横行式(パズル式)地上2段・地下2段の駐車設備の場合、1台当たり月額14,000円以上かかると見込んでいます。(築30年目で設備更新する想定)
<修繕積立金ガイドラインより抜粋>
仮に、全戸に1台分の機械式駐車場が用意されているマンション があるとします。
戸あたりの専有面積が70㎡だとした場合、機械式駐車場にかかる必要な積立金の加算額はいくらになるでしょう?
14,000円 ÷ 70㎡ = @200円 です。
つまり、このマンションの場合、均等積立方式で必要となる修繕積立金は
建物本体分:200円 + 駐車場加算分:200円 = @400円
にまで膨らんでしまうのです。
仮に駐車場の付置率が50%ならば、
@100円が加算されるので、合計@300円です。
要するに、
調査対象の物件に関する機械式駐車場の付置率もデータとして加味していなければ、分析してもほとんど意味をなさないことがわかるでしょう。
そして、こうした点を考慮すれば
ほぼ100%のタワマンが「アウト」になるだろうことは容易に想像できるのです。
<参考記事>
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