マンション管理組合に管理会社のリプレイスを勧めたワケ
2025/02/10
11月30日付の日経新聞に、「マンション保険、大幅上昇 管理組合は更新前に備え」という記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ マンションの管理組合が加入する保険の値上げが相次いでいる。老朽物件が増えて給排水管などの破損が多発し、保険金支払いが膨らんでいるからだ。
■ 損害保険各社はここ数年、火災保険の値上げを繰り返しており、この10月にも改定があった。都内の物件では今年10月分だけで20%超上がった例がある。
■ 2012年以降は築年数によって保険料に差をつける仕組みも一般化し、1年古くなるごとに保険料は数%上がるイメージという。
■ 共用部保険の期間は最長5年。今年10月以降の更新では、過去数回のベース保険料の上昇がまとめて反映される上、築年数が古くなった分を加算されるマンションもある。結果、前回契約時に比べて保険料が数倍に膨らむケースも出る。
■ 共用部用の保険は主契約が火災補償で、水ぬれなどは特約で補償する。マンションの全焼リスクは低く、保険事故の中で最も多いのは「水ぬれ」関連で、事故全体の47%を占める(2018年 日新火災調べ)
■ 築30年を超えて老朽化したマンションで給排水管が絡む事故が多発。水ぬれ関連の保険金の支払いが増えている。老朽化した給排水管修理は保険の対象外だが、水ぬれで生じた損害に対する賠償責任特約の支払いが増えている。
■ 保険料が大幅値上げになれば、管理費の上昇につながり、個人所有者の家計も圧迫する。早めに対策を考えておく必要がある。
◼︎ 最も有効なのは早めに老朽化対策を施すこと。事故の発生を減らすことで保険料の上昇を抑えることができるからだ。 日新火災では、マンション管理士が給排水管の工事実施や長期修繕計画の設定などの状況を診断し、高評価を受けると平均20~30%保険料を引き下げる商品を2015年から発売し、契約数を増やしている。
■ 他の損保大手も、10月以降はマンションの事故率で保険料を変える制度を一斉導入しており、独自基準を設けて保険料を割り引く会社も増えている。
■ ただ、一定の修繕積立金がなければ工事を計画的に実施するのは難しい。そのため、次善の策として「免責額の設定」という方法がある。
■ 共用部保険は、更新時にオプションで1万円から免責額を設定できる場合が多い。たとえば賠償特約に5万円の免責をつけると保険料が数十万円下がるケースもある。免責額以下の事故は保険金請求できないが、その分だけ事故数が減り、次回更新時の事故率算定に有利に働く。
■ ただ、保険料を抑えたいからと保険の特約自体を外すのは要注意。台風で高層マンションの地下共用部に被害が出た場合に、水災特約があれば一定の条件を満たすと補償されるからだ。
ほとんどの管理組合では、マンション共用部の損害保険については、委託先の管理会社が保険代理店も兼ねており、「お任せ状態」になっているのが実情でしょう。
そのため、実質的に管理会社が保険会社や補償プランの内容を決定して組合に提案し、総会で承認されているのが一般的です。
つまり、管理組合(理事会)が主体的に保険会社や補償の特約を選択するという行動パターンにはなっていないのです。
そのため、管理組合の役員経験者ですらマンション保険について基本的な知識を持ち合わせていません。
そこで、まずマンション保険について知っておきたい「常識」を以下にまとめました。
1)今は保険会社によって引受け条件が大きく違う!
本記事でも紹介されているように、日新火災の「マンションドクター火災保険」では、管理状況や修繕の実施状況が良好な場合には保険料を大きく割り引かれるシステムになっています。
しかし、多くのマンション管理会社では、他社に比べてマンション保険では歴史の浅い日新火災を代理店として取り扱っていないケースも珍しくありません。
また、保険料が安くなると代理店としての手数料も下がってしまうことや、引受け条件査定のために「マンション管理士という第三者の専門家による診断」が新たに加わるため、管理会社のインセンティブも上がらないという事情もあり、あえて日新火災の商品を紹介していないことも多いと思われます。
その結果、管理組合に対してこうした業界情報が正しく伝わらず、なかなか保険会社の見直し機運が高まらないのです。
<参考記事>
2)保険契約は5年の長期一括払いの方がお得!
マンション共用部の保険契約の期間には1年、5年年払い、5年長期一括の3種類があります。
保険料の高い順で言えば、
1年 > 5年年払い > 5年長期一括払い です。
ちなみに、保険会社にもよりますが、
「5年長期一括払い」は「1年」よりも保険料が15%くらい下がります。
3)必要な補償がない、あるいは不要な補償が付いているケースもある!
都内の小規模のマンションでは、共用部の保険に加入しているものの、
漏水原因調査費用や施設賠償責任補償をカバーする特約が付帯していませんでした。
その理由は、分譲業者が代理店として紹介した外資系の保険会社では、いわゆるマンション管理組合向けの保険商品を取り扱っていなかったからです。
これほど極端なケースは稀ですが、下記のような事例も時折見られるのも事実です。
*********
■ 建物の竣工時期や所在地が実際とは違う
■ ハザードマップで浸水リスクが高い(低い)と判定されているのに、水災補償の特約がない(ある)
■ 建物の評価額が保険会社の定める基準額を下回っている(一部保険)ため、保険金が満額支払われないリスクがある
■ 建物の評価額に対して保険金額が大き(小さ)すぎる
**********
<参考記事>
こうした事情を踏まえ、管理組合が取るべき対策として次の4つをお勧めします。
(1)管理会社以外の相乗り代理店からも見積もりを取得する。
(その場合、日新火災も取り扱っている代理店を選択すること!)
(2)現状の保険契約について主要補償の付帯に関する過不足、契約条件の設定ミス等がないか、代理店に検証を依頼する。
(3)保険料の値上げは今後も予想されるので、改定時期が決まったら現契約の満了前でも見積もりを取って改定後の保険料負担と比較してみる。(中途解約して契約を切り替えた方が長期的には保険料がお得なこともある!)
(4)保険事故発生の予防のため、共用部の設備点検や雑排水管洗浄を定期的に実施するとともに、不具合等が見つかったら速やかに実施する。(「管理会社にお任せ」では、必要な修繕がなされずに放置されている事例も多数あり!)
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.