3年連続の委託費増額改定に堪忍袋の緒が切れたマンション管理組合
2026/02/08

1月31日付けの日経新聞に、「マンション、価格だけでなく維持費も高騰 修繕工事見直しが急務に」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
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◾️ 都心部を中心にマンションの購入後にかかる維持費用も高騰している。管理費や修繕積立金は、5年前に比べて2〜4割ほど値上がりしたとの調査もある。
◾️ 都内にある400戸超の大規模マンションの理事は、昨年末に受けた管理会社からの5年間で3回目の増額要請に頭を抱える。人件費上昇等を理由に、既に10%以上の値上げを2回受け入れているという。
◾️ 管理費と修繕積立金の上昇が止まらない。住宅情報サイトLIFULL(ライフル)によれば、23区の築10〜20年の中古マンションでは両費用が上昇しており、特に20階以上の高層マンションで費用負担が重いという。
◾️ 5年前と比較すると月額管理費は最大18%、修繕積立金は同43%も値上がりした。構造的な人手不足で上昇し、沈静化する気配がない。
◾️ 国交省の「23年度マンション総合調査」によれば、長期修繕計画に対して実際の積立金が「不足している」と回答した割合は37%あるが、「不明」と回答した20%強を含めるともっと多いと見られる。
◾️ 工事費は首都圏で過去4年、年5%ずつ上昇しているため、現時点で計画に対して「余裕あり」と回答しても、実際は足りなくなる恐れがあると言う。
◾️ 資金が不足するマンションが利用する、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」は年々利用が増え、2011年度以来で最高を記録した。
◾️ 修繕積立金については、国交省が階数や面積に応じた目安をガイドラインとして公表している。自らのマンションの現状額と比較し、不足がある場合、どの程度の引き上げが必要かを確認しておきたい。
◾️ 修繕工事の費用を抑制するには、修繕周期を見直すのが有効である。例えば築60年までを考えると、12年周期なら5回の修繕を、18年周期なら3回程度に減らすといった具合だ。
◾️ 周期を延ばすには、まずマンションの現状を専門家らに検査してもらい、これまでより高い耐久性の資材などを使う必要がある。ただし、トータルコストは下がる一方、1回当たり工事費はむしろ上昇する。こうした点を各所有者が理解するには少なくとも半年から1年程度の検討や議論が必要になるケースが多いという。
◾️ 一方、管理費は「値上げを要請されたからと管理会社を変更して対応しようとしても、うまくいかない例が大半」という。人手不足は業界全体の傾向のため、管理会社の変更を決めたものの、次に引き受けてくれる管理会社がないという例も増えている。
◾️ これからマンション購入しようという方も、積立金や管理費の現状を把握しておかないと購入後に思わぬ支出増で、家計が苦しくなる恐れがある。購入前には国の修繕積立金ガイドラインや周辺相場と比べて、積立金や管理費の設定が妥当かは確認しておきたい。
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まず、首都圏の新築マンションの管理費と修繕積立金の推移<出典:東京カンテイ>を確認してみましょう。

首都圏の新築マンションの場合、2024年時点の平均額を「m2単価」で換算すると、
管理費:月額@284円、修繕積立金:月額@131円 となります。
つまり、そもそも修繕積立金は「管理費の半分に満たない水準」なのです。
それでは、国交省の「修繕積立金ガイドライン」(2021年)で、
均等積立方式で必要な修繕積立金を確認してみましょう。

マンションの規模によって差はありますが、
おしなべて@250円〜300円程度は必要であることがわかります。
<なお、上記の金額には機械式駐車場の維持修繕費は含まれていません。>
つまり、修繕積立金の不足は、新築時点で徴収額が低すぎることが原因であり、
「インフレの前からある、古くて新しい問題」なのです。
仕事柄、これまで3桁にのぼるマンションの財政状況を診断してきましたが、
長期修繕計画の最終年度に修繕積立金の繰越剰余金残高が黒字で終わるケースには、めったにお目にかかりません。
せいぜい100件に1件程度あるかどうか、という印象です。
その原因は、上記の通り
新築時の修繕積立金が人為的に低く設定されているからです。
そのため、ほとんどのマンションでは、
段階的な増額改定を前提に、長期修繕計画を見直しているのが実情です。
先月の総会で、顧問先の管理組合(築21年目・51戸)で、
長期修繕計画の更新とともに、修繕積立金の段階的増額改定が承認されました。
このマンションでは、30年間の長期修繕計画で必要となる修繕費を
m2あたりの月額単価で換算すると、月額@358円です。
一方、現在の剰余金残高(@21円)と毎月の徴収額(@221円)を合わせても
@242円にしかなりません。
両者の差額(@116円)を埋めるには、
現状(@221円)比で50%以上増額しなくてはならない計算になります。
しかしながら、この管理組合では、管理コスト適正化に努めた結果、
管理費会計で年間2百万円の剰余金が生まれていました。
これを月額m2単価で換算すると、@49円です。
したがって、必要な資金(@358円)に対する実質的な資金不足は
358ー(21+221+49)=358ー291 ≒ @66円
となりました。
<顧問先マンションの修繕積立金の不足状況 金額は、円/㎡・月額>

つまり、管理コストの適正化によって、
修繕積立金の不足分を43%減らすことができたことになります。
このマンションでは、この差額分を一気に埋めるのか(=均等積立方式)、今後6年ごとに3回に分けて増額しながら埋めるのか(=段階増額方式)についてアンケートで希望をヒヤリングしました。
その結果、相対的に多くの支持を得た段階増額方式を選択することし、
特に反対者もなく総会で承認されたのです。
管理費会計の剰余金による「ボーナス効果」がなければ、これほどスムーズに承認されなかったのではないかと思います。
マンション管理組合にとって、
「修繕積立金の増額」は宿命的に避けられないテーマです。
ただ、いきなり組合総会で大幅な値上げを提案しても紛糾する可能性があります。
管理コストを見直して適正化(削減)すれば、
資金不足を緩和できるケースは少なくありません。
修繕積立金の見直しを検討されているのであれば、
一度、組合の会計収支を見直すことをお勧めいたします。
<参考記事>
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