マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
管理委託費の適正化診断を依頼されたマンション管理組合の直近の決算実績を確認していたら、修繕積立金会計から管理費会計に100万円強の資金組み入れが行われていることに気づきました。
修繕積立金の使途については、国交省の「標準管理規約」で以下のように定められています。
積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
1. 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
2.不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
3. 敷地及び共用部分等の変更
したがって、管理費会計の資金がショートしたからと言って、安易に修繕積立金会計の資金を流用するのはNGなのです。
この管理組合の決算データを精査してみたところ、この「資金組入れ」を行った背景にはマンション保険の契約更改があったことが分かりました。
マンション保険の場合、「1年契約」と「5年契約」の選択が可能です。
契約期間が長い方が保険料の割引を受けられるので、一般的には5年契約を締結するケースが多いと思います。
ただ、5年契約を選択した場合は、手続き上5年分の保険料を一括精算する必要があります。
もし管理費会計の「繰越剰余金残高」が4年分の前払保険料に満たない場合、あるいは剰余金があっても管理費の滞納などの理由でキャッシュが不足している場合には、管理費会計の範囲では精算できないことになります。
このマンションの場合も、まさにその通りで、繰越剰余金はそこそこあったものの、管理費の滞納も発生しているため、管理費会計だけでは完結することが当時は難しかったものと推察されます。
ただ、一時的な資金ショートであれば、「資金組入れ」という手段ではなく、「預り金」という負債勘定で処理すべきだったと思います。
つまり、本来は管理費会計にある資金で保険料全額を精算すべきところ、一時的な資金ショートが生じたために修繕積立金会計から不足分を借り入れるということです。
それによって、管理費会計から支払った前払保険料を修繕積立金からの「借入れ」で賄ったという事情が貸借対照表で明らかになるため、組合員の皆さんにも組合の財政事情が正しく伝わります。
ちなみに、この管理組合では、5年分のマンション保険料を1年の会計期間で全額を一括計上していました。
正しくは、当期分の保険料だけを費用計上し、残額(未経過分の保険料)は「前払金」(資産の部)に計上すべきです。
今回のケースは、プロであるべき管理会社が、管理規約上の制約や「複式簿記」の本質(=キャッシュフローと会計収支の違い)を理解していないことが露呈した典型的な事例だと思います。
<参考記事>
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