マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
前回に引き続き、「電気料金削減コンサル業者」のC社と手を切るためのサポートを行なった際のエピソードをご紹介します。
<前回記事>
当社の助言にもとづいて中途解約に向けて管理組合が動いたところ、C社から機器買取りプランの見積もりと注意喚起の文書が届きました。
機器の値段は、当社で紹介した別業者に比べてやや割高な水準でした。
なお、買取りに切り替える場合でも、現契約の残期間分の中途解約費用(電気料金削減成果に応じたシステム利用料の7割相当)は確実に請求される、ということがわかりました。
それより問題なのは「注意喚起」の文書です。
管理組合宛に、「コンプライアンスは大切です。トラブルにまきこまれないようお気をつけください」と題した文書が送られてきました。<下の画像はその抜粋>
その要約は以下の通りです。
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1)新しく蓄熱暖房機と電子ブレーカーを購入しても電気料金削減効果が継続できるといった営業には注意してください。
2)中途解約した場合、「契約書のとおり」電子ブレーカーを回収し、改善前の契約種別(従量電灯・低圧電力)にお戻しします。それによって電気料金の削減効果がなくなり、電気料金が高くなります。
3)それでも他社製品の購入を検討される場合には、お客様にリスクが生じた場合の弁済保証を明記した書類を必ずもらってください。
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管理組合の役員がこの文書を読んだら、かなり動揺するのではないでしょうか?
ポイントは、上記2)の「中途解約した場合、契約書にもとづき電子ブレーカーを回収し、改善前の契約種別に戻す」という部分です。
C社から送られてきた「中途解約申込書」には、「本システム契約書にもとづく解約までの流れ」として以下の内容の記載がありました。
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・C社が電力会社に申請し、管理組合の契約種別を本システム導入前の契約(従量電灯契約と負荷設備契約)に戻します。
・これにより本システムの復旧作業が終了となり、本システムの削減効果が得られなくなります。
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しかしながら、東京電力との共用部に関する電力供給契約の主体はC社ではなく、
あくまで管理組合です。
C社と中途解約したからといっても、C社が電力会社と管理組合間で締結している契約を勝手に変更する権利はありません。
また、これまでC社から提供を受けていた機器を新たに買取りによって交換するだけなので、現在の受電契約を一旦元に戻す必要もないはずです。
そこで、東京電力を訪問のうえ、機器の買い替えに伴い受電契約の変更が必要になるのかを確認するために所轄支社を訪問しました。
<以下、東電との打ち合わせ内容>
【質問1】
蓄熱式暖房器を新たに交換する場合、電化上手契約が継続できなくなるのか?
【回答1】
現在の電化上手契約は蓄熱式暖房器を交換しても継続可能である。ただし、東電が認定している電気工事店からの申請が必要になる。
【質問2】
契約者である管理組合が望まない契約変更を、第三者である電気工事店が勝手に契約を変えようとするのを阻止できないのか?
【回答2】
受電契約はあくまで管理組合と電力会社間のものなので、第三者が勝手に変更することは原則できない。管理組合からの委任状等が無い場合は契約変更の受付を止めることもできる。
要するに、C社から送られてきた「中途解約申込書」がワナだったのです。
この申込書に記載されている内容に理事長が同意のうえ署名・捺印したら、それがC社への委任状として転用され、従前の受電契約に戻されて削減効果が得られなくなる、という寸法です。
それを阻止するために、
管理組合側で新たに中途解約申込書を作成し、以下の注意書きを加えることとしました。
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1)本システム解約後の受電契約については、管理組合もしくは管理組合の指定業者が電力会社に申請するものとします。
2)本システムの解約に伴って、共用電灯・共用動力の契約について、C社が管理組合の共用電灯・動力の契約に関して変更の手続きを行うことを固く禁じます。万が一、C社がこれに違反したことによって管理組合の得べかりし利益が損なわれた際には、その損害賠償をC社に請求します。
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C社との契約書には、中途解約の際に「C社指定の申込書でなければ無効」という定めもないので、組合側が容認できる条件内で作成しても拒否する権利はないと判断したからです。
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