マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
当社がコンサルしている都内のマンションでは、「電気料金削減コンサルタント」と称する会社と10年間におよぶ長期契約を締結していることがわかりました。
その契約の基本的なスキームは以下のとおりです。
(このコンサルタントを「C社」と称します。)
(1)電子ブレーカーならびに蓄熱式暖房機の導入による共用部電力料金削減に関するシステム利用契約(10年間)を締結。
(2)C社は、マンション共用部に「電子ブレーカー」と「蓄熱式暖房機」を設置。
(3)上記機器の設置後に、C社は受電契約変更の手続きを代行する。
(4)受電契約の変更によって、共用部の電気料金負担が減少する。
(5)管理組合は成果報酬型の契約にもとづき、(3)の削減成果の一定割合を「システム利用料」として支払う。(1年目:削減実績の180% 2年目以降の9年間:削減実績の 40%相当)
(6)中途解約する場合には、残期間分のシステム利用料の70%相当額を解約金として支払う必要がある。
なお、中途解約の際の付帯条項として、以下の定めがあります。
「中途解約した後に本システム以外の方法に変更しようとする場合、信義誠実の原則に従い、管理組合は資料を開示し、C社が十分に協議等を行えるよう協力し、他の業者と同等程度の提案の機会を管理組合が提供しなければならない。」
このマンションの場合、電気料金の削減効果が年間約40万円です。
したがって、このコンサルタントに10年間で支払う「システム利用料」のトータルは、削減実績の405%(=180%+25%×9)に相当する162万円になります。
したがって、管理組合の10年間のネット・キャッシュフロー(収入ー支出)は、
40万円 ×10年ー162万円=238万円 です。
一方、「電子ブレーカー」と「蓄熱式暖房機」をもし購入したらどうなのでしょう?
両方の合計が実売価格で70万円のため、管理組合のNCFは330万円(=400万円ー70万円)となり、かなりの「お得」であったことがわかります。
つまり、買取りの方が管理組合の剰余金は約100万円増やすことができたのです。
この「100万円」のことを、経済学的には「機会損失」と言います。
「機会損失」とは、ある取引きにおいて、もっとも儲けの出る選択をしなかったために「儲けそこなった利益」のことです。
また、そもそも論の話として、
事前調査をすれば「電子ブレーカー」と「蓄熱式暖房機」を導入すればどれくらい電気料金を削減できるか正確に把握できるので、「成功報酬型」の契約をする必要もありませんでした。
さらにこの契約で問題なのは「C社との関係は10年では終わらせにくい仕組みになっている」ということです。
まず、2週目の11年目に入ったら、設備の経年劣化を理由に、「電子ブレーカー」と「蓄熱式暖房機」の買い替えを求められ、また当初と同様の成果報酬型のシステム利用料を支払い続けることになります。
では、契約の更新を拒否したらどうなるのか?
契約期間の満了に伴い、管理組合が本契約の終了を希望した場合には、以下のような条文が定められています。
・本契約を終了させる場合、電力会社への再申請等の「復旧費用」として契約満了日の翌日から復旧工事完了までの期間の削減実績相当額をC社に支払う。
・C社は契約終了の書面を受領した日から6ヶ月後に復旧工事を実施する。
要するに、このマンションの場合契約を終了させるためには、年間40万円の削減効果の半分に相当する20万円をC社に追加で支払わなくてはならないということです。
そこで、管理組合に以下のような助言・提案を行ったところ、早速行動に移すことになりました。
1)他社の買取プランへの変更を検討中のため、C社に対し中途解約を検討中である旨を伝える。
2)C社でも買取りプランの提示が可能なら提案を依頼する。(契約の条文どおりに対応するため)
3)両者の提示条件を比較検討し、より有利なプランを選定する。
さて、これに対してC社がどのような反応をしたのか?
それは、下の記事をご覧ください。
<参考記事>
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