管理組合役員の輪番ルールはどう決めるべきか?

管理組合役員の改選方法については、いわゆる輪番制を基本ルールとしている組合が圧倒的に多いと思いますが、その運用方法について下記のような違いが見られます。

(1)立候補を優先しつつ、残りの理事は輪番制にもとづいて就任を要請するケース

(2)立候補は認めず、厳格に輪番リストのみで運用するケース

また、役員の任期については、1年もしくは2年でほぼ100%と思いますが、必ずしも全員が一斉に交代するケースだけではなく、任期の中間時点(半年もしくは1年)で半数ずつが交代するケースもあります。

おそらく、各組合で試行錯誤しながら最適なスタイルを模索した結果なのでしょう。

マンションごとに区分所有者の構成や価値観などは異なるので、当然ながらこれだという「正解」はありません。

しかし、役員の改選システムで考慮すべきポイントは3つあると考えています。

1)区分所有者間の負担の衡平性

やはり、役員の仕事は少なからず各人に負荷がかかりますから、薄く・広く・公平に負担することが望ましいという考え方から、輪番制で運用するのはそれなりの合理性と納得感があります。

2)理事会の継続性

管理組合の運営は数十年間にわたり続きます。新築後10年までは特に修繕もなく、規約や使用細則など運営上の問題くらいしかないので基本的に平穏です。

ただ、それ以降になると大規模修繕や修繕積立金の増額問題、駐車場の稼働率低下、役員のなり手不足など厄介な課題に直面することになります。

1年間で片付かないような継続的課題への対応としては、任期の延長や半数ずつの交代制などへの見直しが有効策になる場合があるわけです。

3)理事会のマネジメント力の維持・向上

残念ながら、管理組合の運営に関心を持ちつつ積極的に役員として参加しようとする区分所有者は極めて少数派です。

このため、輪番制や任期の調整等をもってしても理事会の経営力を長期にわたって維持することは容易ではありません

したがって、意欲のある区分所有者を理事になってもらう方が、やる気もなく理事会を欠席しがちな人よりも管理組合にとってはるかに有益であると言えます。

その意味で、特に築10年超を超えるマンションの理事会役員の改選ルールについては、下の2つの組合せがおススメです。

立候補募集プラス輪番制による補充    【1)・3)への対応措置】

役員任期は2年とし、1年毎に半数の改選 【2)への対応措置】

ただし、留意点もあります。

任期2年制は、さすがに荷が重いと拒否されるおそれがあり、はたして管理規約の改正で必要な賛成(75%)が得られるのかというハードルがあります。

また、意欲的な人材を理事に据えるのはよいとして、ほぼすべての管理組合が「アマチュア集団」である以上、中長期にわたって理事会の運営力を維持するのは至難の業です。

これらの点から、管理組合の安定的な運営を実現するにはこの役員改選システムに加えて、信頼できるマンション管理士などプロの専門家を「助っ人」として活用するこが欠かせないものと思います。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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