長期修繕計画の見直しで、修繕積立金の増額を抑制することはできるか?

築10年を超えると、マンション管理組合も修繕積立金の大幅な増額を迫られることから、その対応策を検討し始めます。

1つは、管理委託費など維持管理コストの削減によって剰余金を増やし、修繕積立金会計に振り替えることで負担増を抑制するという方法です。

もうひとつは、長期修繕計画の見直しです。

25年から30年に及ぶ長期修繕計画をもとにして、必要な修繕積立金が決まるわけですから、長計を見直して必要な資金を減らそうという発想があっても何ら不思議なことではありません。

長期修繕計画において、マンションのライフサイクルコストを決める主な要素は、次の3つです。

1) 修繕・設備更新の周期

2) 工事価格

3) (新技術の採用を含む)修繕方法の変更

国交省の長計作成ガイドラインでは、12年の周期で大規模修繕工事を実施する設定になっています。

これを仮に3年ずつ伸ばして15年周期に変更すれば、ライフサイクルコストは当然下がります。これは他の設備更新についても同様です。

<参考記事>

ただ、新築時の工事がいい加減だった場合などは、逆に想定した時期よりも早めに改修工事を迫られるリスクもあることを含んでおく必要があります。

工事価格も、計画上はいわゆる「定価」レベルの設定になっているので、相見積もりを取ることで2割くらい下げられる可能性もあり、それをもとにあらかじめ調整することは可能です。

しかし、長期にわたる計画である以上、将来のインフレリスクを考慮する必要もあります。もちろん、将来的に消費税が上がる可能性も高いでしょう。

また、修繕方法について言えば、築30年を目安に給排水管の全面的な更新を想定することが多いですが、実際にはより安価な更生工事(管の内側に樹脂を塗布するライニング工法など)によって延命させることでライフサイクルコストを下げることができます。

エレベーター設備も、全面更新すると高額なコストがかかるうえに利用できない期間も長期化するため、カゴ部分や乗場扉などまだ利用できる一部設備は残しつつ、制御盤・モーター・ロープなどを中心に交換する「制御リニューアル工事」を採用する方法が今はむしろ主流です。

また、6階以下の低層マンションであれば公共水道から増圧ポンプなしで直接給水することも可能な地域もありますので、既存の貯水槽を撤去して更新費用を節約できる可能性があります。

<参考サイト>

横浜市 水道局 給水のしくみ

このような見直しを行っていけば、ライフサイクルコストを大きく下げることも決して不可能ではありません。

ただ問題は、このような専門的な知識を要する見直しを正しく理解して実施するだけでなく、それを長期にわたって継続的にマネジメントできるのか? ということです。

素人役員さんが輪番制によって毎年のように交代していく中、一度作成した長期修繕計画が見直されることもなく風化しているのがほとんどの管理組合の実態であることを考えれば、それは至難の技だと考えます。

ガイドラインに沿って作成された長計はあくまで「計画」として参考しつつ、実際に大規模修繕や設備更新を検討すべき時期を迎えた時に「実施時期」、「修繕方法とその範囲」、「工事価格」の3つを見極める体制を確立する方がよほど生産的だと思います。

そして、まずは「割高な管理委託費の適正化」を実現することが先決です。

これは比較的短期間で解決できる課題ですし、長計の見直しに比べてはるかに容易ですから、こちらをお勧めします。

<参考記事>

note.mu


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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