コンサルタントは、マンション管理の「質」まで保証できるの?

コンサルタントとして「管理委託契約を見直して、割高なコストを適正化しましょう」と話すと、管理組合の役員さんから厳しい質問をいただくことがあります。

「その後の管理の質が下がらないのか?」
「あなたはその保証ができるのか?」

といったものです。

管理の「質」を決める尺度の一つとして

管理委託契約には「管理仕様」が必ず記載されています。

たとえば、

◆管理人の勤務日とそれぞれの勤務時間、ならびに業務内容
◆エレベーター、給排水設備、防火設備などの保守点検の実施頻度
◆清掃業務の対象範囲と実施頻度
◆事務管理業務(出納請求、会計決算、総会・理事会の運営など)の内容

といった内容です。

上記の仕様を落とした場合、もちろん容易にコスト削減はできるでしょう。

 

しかし、たとえば清掃や設備の保守点検の回数を一定のレベル以下に減らせば、管理の質は下がる可能性が高まります。

なので、

私がマンションの管理委託費を適正化しようとするとき、原則として現状の管理仕様をキープすることを前提に考えます

その理由の第一は、

「安かろう悪かろう」になっては意味がないから。

第二は、

仕様を下げなくても十分コスト削減ができる余地があるからです。

<ただし、マンションの中には過剰な仕様のケースも少なからずあります。>

管理委託費とは、《 価格 》 と 《 管理仕様 》の掛け算で決まります。

《 価格 》とは、作業1回あるいは1時間などの単位あたりの費用
《 管理仕様 》とは、月あるいは年あたりの作業回数や時間

《 管理仕様 》を一切変更せず、前者の《 価格 》を調整するだけなら、少なくとも委託契約上における「管理の質」は変わらないはずです。

このように説明すると、

「管理人や清掃員がさぼったり、対応や態度が悪くなったらどうする?」
「設備のメンテナンスがいい加減になったら、安全性が心配だ!」

という懸念や心配の声も時折聞こえてきます。

しかし、

それは管理委託費の適正化(削減)が原因とは必ずしも言えない問題です。

なぜなら、それは現場に配置されたスタッフの属人的な問題であったり、管理会社内の労務管理や品質管理が行き届いていないためといった可能性も考えられるからです。

そして、もしこうした契約上明記した事項以外で問題が生じた場合には、管理組合が望むレベルを管理会社に明確に伝えて改善を要求すべきです。

管理会社の「生殺与奪権」を握っているのは、顧客たる管理組合に他なりません。

組合の要求に応えてくれない管理会社なら、リプレイス(管理会社の変更)を検討すればよいのです。

それと清掃や設備保守をはじめ管理業務の大半は、管理会社が専門業者に再委託しているのが実情です。

管理委託費の《 価格 》の適正さを判断する際には、専門業者にとって採算がとれる水準以上をキープすることが「管理の質」を担保するために大切だと思います。

一方で、

管理会社は管理委託費と再外注費の差額マージンを過剰に得ていることが多く、その率といえば3〜5割は当たり前で、業務によっては直接原価の倍くらいを請求しているような酷い例もあります

こうした管理組合にとって過剰に搾取されている中間マージンの部分を中心にトリミングすることが、管理コストの適正化であると考えています。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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