「マンション管理適正化診断サービス」で発覚した法令違反とは?

先日都内の某マンションで実施した「マンション管理適正化診断」でのお話です。

 

診断の目的はマンション保険の更新期を迎えるにあたって、新規引受け保険料の見積りを取得することにありました。

 

「日管連」からの依頼にもとづき、私がこのマンションの診断を担当することになりました。

 

この診断では、各種法定の設備点検の実施状況だけでなく、

・改善や修繕が必要な箇所の有無に関する指摘事項の有無

・指摘事項に対するその後の是正状況

について確認を行います。

 

そのため、消防設備点検の最新の実施状況を確認すべく、報告書を閲覧させて欲しいと申し出たところ、同席した管理会社のフロントが2018年に実施した報告書を提示してきました。

 

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「すみませんが、最新の点検報告を見せて欲しいのですが?」

 

管理会社

「このマンションでは消防設備点検は3年ごとにしか実施していません」

 

消防設備点検は年2回実施する義務があると思いますが?」

 

管理会社

消防署への報告義務は3年ごとなので、その頻度で実施しています。」

 

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皆さんは、この会話での両者の主張がズレていることが分かりますか?

 

・消防設備の点検義務は年2回

点検結果の報告義務は3年に1回

 

実は、主張している内容自体は、以下の通り「おおむね」どちらも正しいのです。

 

■ 消防法によって、消防用設備等を設置することが義務づけられている建物の関係者(所有者・管理者・占有者)は、設置した消防用設備等を定期的に点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告するが義務があります。

 

点検の種類と実施頻度の義務

・機器点検:6ヶ月に1回

・総合点検:1年に1回

 

総合点検は機器点検と兼ねて実施するため、都合年2回実施する義務があります。

 

■ 点検結果の報告

特定防火対象物 :1年に1回

非特定防火対象物:3年に1回

 

マンションのような共同住宅は「非特定防火対象物」に該当するので、「3年に1回」の報告義務あり。

 

ただ、管理会社の主張が誤っているのは、

「消防署への報告が3年に1回だから、点検の実施も3年ごとでよい」

と考えている点にあります。

 

このマンションの管理委託契約書で消防設備点検の実施頻度を確認したところ、当初は法定通りの頻度で実施していたものの、数年前に3年ごとの実施に変更されていることがわかりました。

 

当時の経緯は不明ですが、コスト削減の一環で「改悪」されたようです。

 

このマンションは、区分所有者の居住せず賃貸している割合が高く、住戸内の点検実施率が低いのですが、それも要因の一つになっているのでしょう。

 

ただ、点検自体が3年ごとにしか行わないのに、その1回を受検しなければ仮に室内の煙感知器の不具合が発生していても、その状態が最大6年間放置されるリスクがあります。

 

また、このマンションはすでに築20年を超えているにもかかわらず、

雑排水管洗浄の実施も3年ごとであることがわかりました。

 

ちなみに、2年前に洗浄した際の住戸内の実施率は、全体の6割を切っていました。

 

雑排水管洗浄は、築10年超の場合毎年実施するのが「標準」で、少なくとも隔年での実施は必要とされています。

 

ワンルームタイプのような投資マンションをはじめ賃貸比率の高いマンションでは、賃借人である居住者の協力が得られず、住戸内の消防点検や排水管清掃の実施率が押し並べて低いケースが少なくありません

 

それでも業務委託費は全住戸分を実施する前提で見積もられるため、投資マンションでは無駄な費用を削減しようと実施頻度を落とす傾向が強いのが実情なのです。

 

しかし、今回のように法令違反を割と堂々と行なっているマンションには初めて遭遇したのでかなり驚きました。

 

診断レポートにはその点をしっかり指摘しておきたいと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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