マンションが抱える「7つの大問題」のうち、まだ世間で認識されていないのは?

9月21日号の「週刊女性」に、「住人とともに“老いる”マンションの高齢化、相続放棄に修繕費「7つの大問題」」と題した記事が掲載されています。

 

<参考記事>

www.jprime.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 大問題(1)購入時と話が違う! 膨れ上がる修繕費

本来は長期修繕計画にしたがって必要な修繕費を滞りなく住人が積み立てることが理想だが、現実はそうではない。計画どおりに進まない原因は、分譲マンションの販売業者は修繕積立金の金額をわざと安く見積もってお得感があるように見せているからだ。

国交省では、修繕積立金月額を平米単価200円を推奨しているが、ネットなどで見ると現実にはその半分あるいは3分の1の金額に過ぎない物件が少なくない。

その結果、修繕積立金が3倍から4倍に増額せざるを得なくなるが、住人の反対で安いままで継続すると築30年目にはお金が足りなくなってしまうのだ。

大問題(2)管理組合不在で終のすみかの老朽化

国交省の調査』によると、マンション居住者の約6割は永住するつもりと回答している。ただ一方で世帯主の高齢化が進んでおり、70代以上の割合は2割超えている。

その結果、住人の高齢化で組合役員のなり手がいなくなり、管理不全に陥ってしまうケースが生じており、その結果必要な修繕がなされずに建物の老朽化に歯止めがかからなくなる。さらに、管理不全が居住者のモラル低下をもたらし、マスラム化するケースが増えている。

大問題(3)住み替え先で後悔!? 隣人トラブルご用心

マンションならオートロック・防犯カメラもあるので安心といった理由で、戸建てに住んでいたシニア層が“終のすみか”としてマンションを選ぶケースも増えている。

その際、気をつけなければいけないのが、マンション選び。中古で購入するなら、管理組合の運営状況をチェックすることが重要。理事会の開催頻度や管理費等の滞納がないか、長期修繕計画や理事会の議事録の内容も確認したほうがよい。

さらに内見する際、住人同士が挨拶を交わしているか、共用部分に物が散乱していないかも重要。マンション内の人間関係、ゴミ出しマナーや生活音の問題など、戸建てとは違うトラブルになる要素がたくさんあるので、住人の意識レベルを知ることも大切。

大問題(4)所有者がいない!? 悲劇の“相続放棄”

老朽化したマンションの所有者が亡くなると、親族が相続するのが一般的だが、相続しても修繕費用などの管理費用がかさんだり、固定資産税などの支払いが発生するため相続放棄されるケースが増えている。

もし相続放棄された結果、管理費や修繕積立金が滞納された場合には、その債権を有する管理組合が、家庭裁判所に『相続財産管理人』の選任を申し立てる必要がある。
大問題(5)修繕の先延ばしで結果、負担が増大!

大規模修繕工事は概ね12年周期で行われるが、外壁補修や屋上防水、給排水管の更新などの共用部分は管理組合の負担だが、専有部分は自己負担になる。

その負担を渋っているうちに定年を迎えて収入が減り、住戸を担保にお金を借りなくてはならない場合も出てくる。

余計な借金を背負わないためにも、適切な長期修繕計画を作成し、それに基づいて算出した修繕積立金を積み立てておくことが必要。

 

大問題(6)天国と地獄!? 管理会社の選び方

管理組合員の高齢化と賃貸戸数の増加で、管理組合役員のなり手はますます少なくなるばかり。しかし、すべて管理会社任せでも問題がある。

管理会社も営利目的でやっているので居住者側も意識を高く持っていないとダメです。やらなくてもいい工事を受けていたら、お金がかかって仕方がないからだ。

修繕するに越したことはないですが、大規模修繕工事のときに一緒にやったほうが安くすんだり、いま工事すべきかを自分たちで見極めることも大切だ。

 

大問題(7)人気の高級タワマン修繕費もケタ違い!?

2000年前後から急増したタワーマンションも、大規模修繕が必要になる時期を迎えている。豪華なプールやジム、最上階のラウンジなど、魅力的とされているが、使用の有無にかかわらず管理費がかかるだけでなく、修繕時期が近づくにつれて、当初の予想よりも大幅に費用がかかる可能性もある。

 

マンション管理の問題が、女性週刊誌でこんな風に取り上げられるというのはとても珍しいのではないでしょうか。

 

この記事で挙がったテーマのほとんどはこのブログでも全て取り上げてきたものなので、特に目新しさはありません。

 

ただ、現在ほとんど注目されていないものの、近い将来に必ず大きな問題になりそうなのが、4つ目の「相続放棄」の問題です。

 

これは、すでに日本全土のうち九州の大きさに相当すると言われている、不動産の所有者不明の問題ともリンクしています。

 

不動産を担保にローンを設定する際には、当然登記を求められるため当たり前と考える人が多いでしょうが、そもそも所有者移転等の登記移転手続きに法的義務はなく、必要な手続きをしなかったからとしても罰則もありません。

 

そのため、移転登記にかかる登録免許税等の負担を免れるために放置しているケースも少なくありません。

 

したがって、マンションの区分所有者に相続が発生しても、現在の所有者をリアルタイムで正しく把握することができなくなっても、何ら不思議なことではないのです。

 

そのうえ、亡くなった被相続人に負債があったり、引き継ぐマンションが遠隔地にあったり、その資産価値に対して管理費や修繕積立金等の維持費の負担が大きい場合などは、「相続するのは割りに合わない」と判断して相続を放棄することも十分考えられます。

 

では、実際にマンション内に相続放棄された住戸が発生したらどうすればよいのでしょうか?

次の区分所有者(承継人)が決まるまで管理費や修繕積立金が滞納されることになるため、管理組合としては、早急に債権を回収するには「相続財産管理人制度」を利用する必要があります。

 

具体的には、家庭裁判所に相続財産管理人(弁護士や司法書士が一般的)の選任を申し立て、財産の清算を依頼します。

 

ただその際、管理組合は「予納金」(数十万円〜100万円)を家裁に納めなくてはなりません。

 

そうなると、こうした支出が発生することに伴って総会の決議も必要になってきます。

 

こうした一連の対応については、もっぱら素人で構成される管理組合(理事会)が対処できる事案でありませんし、そんな時に頼りにしたい管理会社も現時点ではおそらく相続管理人制度の活用についてはほぼ無知な状況でしょう。

 

相続放棄に伴う管理費等の滞納リスクは、何も古いマンションに限った話ではありません。

 

いざという時にどう行動すればよいか、今からシミュレーションくらいはしておいた方が良いでしょう。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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