民泊トラブル増加中! 管理規約の改正が難しい場合の「次善の策」とは?

先日の毎日新聞に、都内のマンション管理組合(全46戸・ワンルームマンション)が、組合員の一人が無断で「民泊」の営業をしていたとして、所有者に営業停止と損害賠償を求めて東京地裁に提訴したという記事が掲載されていました。

記事の内容によると、

■ 部屋の所有者は、一泊5千円で旅行者に部屋を提供していた。
■ 旅館業の登録はしていなかった。
■ マンションの管理規約では、「居住目的の利用は禁止」されていた。

とのこと。

また、大阪のマンションでは、これとほぼ同様の民泊の無断営業が「不法行為に当たる」として、今年1月、賠償金(50万円)の支払いを部屋の所有者に命じたという判例が発生しています。

この管理組合では、2年前に管理規約を改正し、住戸を「不特定多数が宿泊する施設として使用することを禁止」していたとのこと。

ホテルや旅館以外でも、「民泊」のように「宿泊料金を取って人を宿泊させる営業行為」を行うには、旅館業法に基づき営業許可を取ることが必要です。

ただ言い換えると、その営業許可さえあれば不法行為を理由に民泊利用を禁止することができなくなってしまいます。

そのため、民泊利用を排除するには、マンションの管理規約で明確に禁止条項に定めておくことが必須条件とされているのです。

ただ、管理規約の改正は「特別決議事項」に該当するため、区分所有者全体の4分の3以上の賛成を取り付けることが必要です。

無関心層の割合の高い管理組合では、全体の4分の1が委任状すら集まらないというマンションも少なくないため、規約の改正をしたくてもできないというジレンマがあります。

このような場合には、使用細則の改正で対応するという「次善の策」があります。

一般的な管理規約に定められている「居住目的以外の利用禁止」については事務所等での利用がどこまでOKで、どこからがNGなのか曖昧になっており、この条項では民泊利用もグレー的な位置づけにとどまってしまいます。

そのため、規約の内容を補足するために、使用細則で「禁止に該当する事例を具体的に列挙する」とよいでしょう。

たとえば、「当マンション管理規約 第××条に定められた専有部分及び専用使用部分の用途につき、次の各号に掲げる行為をしてはならない。」として、以下のような事項を定めます。

■ インターネット等の広告媒体を利用し、専有部分を1ヶ月未満の短期で借受ける者を募集する行為
■ 不特定の第三者を対象とした旅館業及びこれに準じる行為

使用細則改正の利点は、管理規約の改正に比べるとかなりハードルが低いという点にあります。

と言うのも、使用細則の改正は「普通決議事項」のため、総会に出席した組合員の過半数の承認が得られれば成立するからです

つまり重要なのは、

管理組合のルールとして民泊を明確に禁止したという既成事実を作っておくことで、管理規約の改正が難しい場合には使用細則を改正で手当てしておけば、ほぼ同様の効果が得られるのではないかと思われます。

<参考記事>

 


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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