見直しは必至?タワーマンションの相続税評価と議決権割合

1/24付けの日経新聞に、「マンション節税防止 高層階、相続税の評価額上げ 総務省・国税庁、18年にも」と題する記事が掲載されていました。

この記事によると、

◆ 政府は、2018年にも価格の割に相続税が安くて済む高層マンションを節税目的で購入する動きに歯止めをかける検討に入った。

◆全国の20階以上の住戸の評価額を調査したところ、平均して市場価格の3分の1にとどまっていた。

◆15年1月から相続税が引き上げられたことで、タワーマンション投資による節税対策への人気が高まった。

◆ただ、高層階の税負担を大幅に増やすと購入を手控える動きが強まり、マンション市場を冷え込ませる恐れもある。当局は市場への影響も慎重に考慮しながら検討する。

 

購入したタワーマンションの購入金額(時価)がたとえば1億円なのに、相続税算出のベースになる土地(敷地権)の路線価額と建物持分の固定資産税評価額の合計が時価の3割にしかならないなら、差引き7千万円もの評価減になります。

その結果、累進課税にもとづく税額ベースでは7割以上の削減メリットを享受できることになります。

原因はシンプルで、上記のマンションの評価額全体を単純に各住戸の専有面積ベースで按分している現状の制度にあります。

と言うのも、

高層タワーマンションが登場するまでは、同じ1棟のマンションの中で面積あたりの価格差がそれほど大きくなかったため、資産税の評価において考慮する必要性が小さかったからです。

今回の方針は、富裕層と庶民層の間の格差を是正するための「再分配機能」を相続税が果たすために必要な措置であると言えます。

 

ところで、この「高層階住戸の評価」に関連して「マンション標準管理規約」にも改正の動きが見られます。

昨年秋に国交省から公表された、標準規約改正検討のための「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の報告書によれば、これまで各住戸一律であった総会議決権の割合の設定方法について見直すべき、との考えが表明されているのです。

マンションの高層化・大型化によって、間取りや仕様、眺望等が異なるため住戸間に大きな価値の差が生じるようになった現状を踏まえると、住戸の価値割合をベースとする議決権割合の設定の導入を検討すべきである、というわけです。

具体的には、「専有部分の大きさ・立地からくる効用の違い」などから総会議決権を配分する方法や、階数や部屋の方角などにより別途基準となる価値を設定して、それをベースに議決権割合を設定する余地もあることを標準規約に併記することを検討しているようです。

つまり、タワマンの高層階住戸の評価を「時価」に近づけようとする中で、今2つの異なる動きが見られる、ということです。

 

相続税評価が高まることで節税対策上はどうも不利になりそうですが、管理組合内の議決権割合も時価に応じて見直されるために今後高層階の区分所有者の発言権は相対的に大きくなるメリットも出てきそうです。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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