マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
3月9日付けで、住宅金融支援機構が事務局を務める「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」において、今年度の取組結果と今後の方向性をとりまとた内容をリリースしました。
その中でめぼしいニュースとしてメディアで取り上げられたのは、
修繕積立金を一括払いする区分所有者向けリバースモーゲージ融資の開始
です。
記事の要約は以下の通りです。
■ 高経年マンションでは、入居者の高齢化が収入の低下を引き起こし、修繕積立金の支払いが滞るケースがある。一方、高経年になれば修繕積立金の引き上げが課題となる。
■ リバースモーゲージは借入人が死亡したときに担保としていた不動産を処分し、借入金を返却する仕組みで、借入人は融資金額の利息のみを支払う。
■ たとえば、毎月の修繕積立金が2万円、20年間で480万円の場合、金利1.0%の設定で月々の支払いを4000円程度に抑えることも可能。
■ 管理組合は融資金を修繕積立金の前払い金として代理受領し、将来の滞納不安を払しょくする。
■ 「管理規約の改正など管理組合側でしっかりと準備を行ったうえで合意形成することが条件。まずは、前向きに考えている管理組合と事前の相談から始めたい」と機構は説明している。
リバースモーゲージと呼ばれる金融商品の仕組みは、以下の図で表すことができます。
自宅を担保に生活に必要な資金等の融資を受ける→ 利息分のみを返済→借り手の死亡時に担保の自宅を売却した資金で融資元本を返済 という流れです。
ただ、今回支援機構が検討しているのは、借り手の区分所有者に融資金を渡すのではなく、一括で管理組合に前払いするというスキームです。
また、この融資を利用する際しては、資金使途や管理組合の会計処理等について以下の条件も満たす必要があり、管理規約の改正等の合意形成が組合側に求められます。
具体的には、
(1) 当該融資金は、修繕積立金の前払金として組合が一括して代理受領する。
(2) 融資金は修繕積立金のみに充当できる。
(3) 充当された修繕積立金は、共用部分リフォーム工事のために使用すること。
(4) 借入者がマンション退去などの事情で融資金を完済しても、組合からお金は返還されないこと。
大規模修繕を円滑に実施できるよう 高経年マンションでは修繕積立金の不足問題に直面しているものの、区分所有者の反対で増額改定の議案が通らないケースもあります。
今後、分譲マンションの老朽化ストックが急増する中、ますます資金不足に悩む管理組合が増えることが予想されます。
管理組合からすれば、苦労の末、総会決議で修繕積立金を増額改定にこぎつけても、区分所有者の経済事情を理由に滞納されてしまっては、元も子もありません。
その点で、この制度の場合は管理組合側は将来の修繕資金を「前受金」として一括で受け取れるので、滞納リスクが払拭され財政状況が安定するというメリットがあります。
一方、区分所有者についてはどうでしょう?
所有する住戸を担保に融資を受け、毎月金利分の返済するだけよいので、日常の経済負担は大幅に軽減されるというメリットがあります。
固定の年金収入に頼らざるをえない高齢者にとっては助かることでしょう。
ただ、下記の通り、その裏返しに留意すべき点もあります。
(1)融資金の元本返済分は、将来(相続発生時の)売却資金で充当することになるため、自身の配偶者や子らへの相続はできなくなります。
(2)将来何らかの都合で事情が変わって、住戸を売却して融資金を完済しても、前払いされた修繕積立金は組合から返還されないため、手取りのお金は減ってしまいます。
(もちろん、買い手との売買金額の調整によって実質的に回収することも可能でしょう)
この商品がどこまで実際にニーズがあるかはまだわかりませんが、区分所有者にとって新たな選択肢が増えたことは歓迎すべきでしょう。
ただ、管理組合としては、このような金融商品に頼らずに済むよう
将来の修繕積立金の増額改定を回避する対策として
・管理委託費をはじめとする維持管理コストの適正化
・発注する修繕工事費の適正化
に日々取り組んで行くことが望ましいことは言うまでもありません。
<参考記事>
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