管理の「見える化」が進むと、中古マンションの評価軸が変わる!?

2月3日付けで、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を提供する(株)ライフルが、以下の内容のプレスリリースをしました。

 

 

prtimes.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 日本マンシヨン管理士会連合会と提携し、国内不動産ポータルサイトで初となる、国家資格を持つマンション管理のプロが評価した管理状況の結果をサイト上で確認できる新サービス『マンション管理評価』の提供を今月3日から開始した。

 

■ 本サイトでは、管理組合の運営状況や共用部分をはじめとする建物設備の維持管理状況、修繕計画といった複数の項目をマンシヨン管理士が評価し、その結果をサイト上で誰でも確認できる。

 

​■ 国内中古住宅の物件数(約6,240万戸)のうち約850万戸が空き家となっているほか、国交省によると築40年超のマンションが、2040年には現在の4.5倍(約367万戸)まで急増するとされている。

 

■ その結果、今後は老朽化対策の不備や管理組合の担い手不足、資金不足の顕著なマンションが急増すると予想され、保安・衛生上での危険や災害時のリスクの顕在化が予想される。

 

■ ただ、これまでは物件の専有部分の情報が中心で、共用部の管理状況や修繕履歴、給排水管の状態といった管理に関する重要な情報はほとんど公開されず、買主となるユーザーにとって購入前に確認することが難しい情報であった。

 

■本サービスによってマンションの管理状況を「見える化」することによって、買主が自ら確認できるだけでなく、売主側や管理組合も、自らのマンションの管理を適正化することで資産価値を維持向上させようというインセンティブが働くのではないかと考える。

 

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本記事の目玉となっているマンション管理評価のデータとは、

日本マンシヨン管理士会連合会(=日管連)が実施している「マンション管理適正化診断サービス」の判定結果のことを指しています。

 

www.nisshinfire.co.jp

この診断サービスの主たる目的は、もともと管理組合の運営や共用部分の修繕の状況に応じてマンション保険料の割引優遇を受けられることにありました。

 

地震や台風などの大規模災害の頻発等によって、近年、損害保険料の増額改定が頻繁に実施されていますが、特に設備の老朽化に伴う漏水事故等のリスクを抱える高経年マンションでは保険料の負担増に悩まされています。

 

ただ、高経年でも管理や修繕をしっかり実施しているマンションは、そうでないマンションよりも事故発生のリスクが低いと考えて通常の保険料から割引く仕組みを持つ新たな保険商品が2015年に登場しました。

 

それが、日新火災の「マンションドクター火災保険」です。

その後、診断の依頼数、契約実績数とも右肩上がりに増え続け、2020年3月時点では診断依頼数は累計1万件を突破しました。

 

その後、日管連が(株)ライフルと提携し、「LIFULL HOME’S」上に診断結果をフィードバックすることになったわけです。

もちろん、サイトへの掲載については管理組合側から事前に了承を得ています。

(組合が掲載を拒否することも認められています。)

 

本記事にもあるとおり、中古物件のストックがこれほど増えているにもかかわらず、流通市場で公開されているマンションの物件情報の範囲は非常に限定されていると感じます。

 

購入を検討するユーザー側も、築年数、最寄り駅からの距離、採光の向き、管理費や修繕積立金の負担額くらいしか一次スクリーニングできないのが一般的で、候補先を絞りこんだ後は、数物件を対象に現地に赴き、内見した印象で意思決定しているのがほとんどではないでしょうか。

 

管理組合の財政状況がどんな具合なのか、計画修繕がきちんと実施されているのかといった情報は、ごく一部の「通な人」しかチェックしていないと思います。

 

そういう意味では、中古マンション市場において画期的な変化をもたらす可能性があるように思いますし、同じ築年数のマンションでも、今後は優勝劣敗の「明暗」がはっきりしてくるのではないでしょうか。

 

そんな中、今月に入って、神戸市が分譲マンションの適正な管理を促すために、管理組合に管理状況の届け出や情報開示を求める制度運用を始めたというニュースを目にしました。

 

分譲マンションの適正管理で全国初の制度 神戸市|総合|神戸新聞NEXT

 

記事の要約は以下の通りです。

■ 神戸市は、マンション管理組合に管理規約や修繕積立金、防災マニュアルの有無などについて報告してもらう。

■ 管理組合の同意が得られれば、市のホームページで上記情報を公開する。届け出を受け付ける自治体は他にもあるが、情報開示もセットで行うのは全国初。

■  同市内の分譲マンションは約20万戸あるが、築35年超の物件がすでに約3割を占め、今後5年間でさらに急増すると見込まれる。

■  マンションの管理状況が周辺に与える影響が大きいため、管理組合による自主的な取り組みを重視し、管理状況の届け出を受けて、必要に応じて専門家の派遣を通じたす助言や支援を行う。

■  神戸市は、優良なマンションの情報を公開することによって流通市場で評価され、資産価値の保全にもつながると期待する。

 

冒頭で紹介した、「LIFULL HOME’S」と神戸市の制度で共通しているのは、情報の公開が管理組合側に適正な運営を促すインセンティブになるという期待が含まれていることでしょう。

 

ただ、マンション「保険料の割引優遇」と、専門家による「無料診断」という「アメ」を提供して情報を収集している前者の方が、今のところ「一枚上手」かもしれません。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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