マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
今年も、マンション管理士の国家試験は11月下旬に実施予定なので、受験者の皆さんは勉強の追い込みに余念がないことと思います。
もう6年前の話になりますが、
私もこの時期には受験生の一人として苦闘していました。
最後まで苦しんだテーマの一つが、区分所有法と管理規約の相違点です。
区分所有法を学習した後に、国交省の「標準管理規約」を学ぶというのが通常の順序なのですが、それぞれを理解できても、その後両者のどこに共通点と違いがあるかを考え出すとかなり複雑なことに気づきます。
試験でも、その辺を「重箱の隅をつつく」ように問われるため、曖昧な理解だとなかなか正答に結びつかないようになっています。
区分所有法との比較という観点から整理すると、管理規約の条文は以下の3つに分類できます。
(1)区分所有法の通りに定めないとNGなもの(強行規定)
<例>
・組合員の資格要件
・特別決議事項の要件
・年1回の総会開催
・総会議事録の作成 など
(2)管理規約で「別段の定め」が可能なもの
(区分所有法の認める範囲内で変更可)
<例>
・管理者の設置
・共用部分の持分割合
・議決権の持分割合
・普通決議の要件 など
(3)特に制限がないため管理規約で自由に定められるもの
<例>
・理事会の設置
・理事の人数や任期
・管理費や修繕積立金の算定方法など
そんな中、先日、SUUMOジャーナルから「マンション購入者向けに区分所有法の基礎知識について記事にしたいので取材させてほしい」との依頼を受けました。
そのため、ライターさんと電話で30分程度話して、その後それをまとめた原稿をチェックしたところ、その小見出しに「区分所有法と管理規約という2つのルールがある」というくだりがありました。
案の定というべきか、両者の違いが理解されていませんでした。
また、区分所有法における総会での議決要件等の説明を設けていましたが、実際には標準管理規約の定めとは異なるのが一般的なため、違和感が生じていました。
そこで、
・区分所有法は「法律」なので、最低限遵守しなければならないもの。
・その制約の範囲内で管理組合の「ルールブック」として具現化したのが管理規約
と説明したら、ようやくわかってもらえました。
しかし、「現実」はさらに複雑です。
と言うのも、国交省の「標準管理規約」と各管理組合の「管理規約」の間にも違いがあるからです。
マンションの管理規約は、当初は分譲会社や管理会社が個々に作成していました。
そのため、内容に統一性がないばかりか、中にはいい加減なものや不合理なものも見られるようになりました。
そのため、1982年に、国交省(当時の建設省)が「標準管理規約」を作成し、個々のマンションにおいて管理規約を作成する際の「指針」として活用するよう通達したのが始まりです。
その結果、個々のマンションの管理規約は、ほぼ標準管理規約に沿った構成と内容を備えるようになりました。
しかし、標準管理規約は近年だけでも、下記の通り複数回改正されています。
主な改正のポイントを含めてご紹介しておきましょう。
■ 2004年の改正
・マンション管理士など「専門知識を有する者の活用」の条文が追加される。
・普通決議で実施可能な範囲を「共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」と規定し、通常の大規模修繕工事の実施は普通決議事項と定められた。
・未納管理費等の請求を機動的に行えるよう、理事会決議があれば、理事長が管理組合を代表して訴訟その他法的措置を追行することができる旨を規定。
■ 2011年の改正
・組合役員の資格要件の緩和するため、「現に居住する」という要件を削除。
・組合総会における代理人出席の要件(組合員の同居人、賃借人など)を大幅に緩和
■ 2016年の改正
・管理組合の業務から「地域コミュニティの形成」を削除。
■ 2017年の改正
・住宅宿泊事業法成立に伴い「専有部分における民泊利用可否」に関する条文を追加
言い換えれば、
個々の管理規約は「マンション竣工時点での標準管理規約」に則って作成されているはずなので、規約が古いほど現行の標準管理規約の内容とギャップ(乖離)が大きくなっているのです。
もちろん、標準規約の改正のたびにアップデートされていれば両者はシンクロ(同期)しているわけですが、義務でもないのでそこまで対応はできていないはずです。
要は、プロのマンション管理士としてコンサルティングする場合には、区分所有法、標準管理規約、そして個々のマンションの管理規約の3次元で知識を整理しておくことが求められるのです。
<参考記事>
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