マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
昨年12月23日付の朝日新聞に、『「割高」修繕費に国が対策指針 理事会なしマンション管理に「監事」』と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
■ 分譲マンションでは通常、管理組合が区分所有者の中から選任した役員で構成される理事会が運営を担う。
■ ただ、組合活動の煩わしさに加えて、住民の高齢化などで役員のなり手が少ないことから、理事会(筆者注:区分所有法上の「管理者」を含む)の役割を管理業者に委ねる「第三者管理方式」が増えている。
■ マンション管理業協会の今春の調査では、第三者管理を「受託している」「今後の受託を検討」とした業者は167社で、3年前に比べて約3割増えている。
■ 第三者管理方式のマンションについて、国土交通省は、管理業者の運営状況をチェックする「監事」を設けるよう管理指針を見直す。
■ 第三者管理では、住民の目が管理業者に行き届かなくなりがち。また、その立場を利用して管理業者が修繕工事を同じグループの会社に割高な金額で発注する例もある。
■ そのため、管理組合に不正や不当なもうけがないかをチェックする監事を設置し、税理士やマンション管理士などの専門家から選ぶよう求める。
■また、 大規模修繕を手がける施工会社は、監事と住民でつくる「修繕委員会」が選び、管理業者は関与しないようにする。小規模な工事でも業者が関連会社と取引する場合は、住民の決議を得るようにする。
■ 管理者の任期は原則1年とし、管理組合の総会で再任するかどうかを決めるようにする。また、組合口座の通帳などは管理業者だけに管理させないようにする案も出ている。
■ 国交省が「外部専門家の活用ガイドライン」の改訂案を12月26日の有識者会議で示しており、来春にも運用を始める見込み。
区分所有法では、管理組合の代表者として「管理者」が設置することを想定しています。(設置自体は義務ではありません)
管理者の資格要件は特になく、区分所有者以外の外部からも選任が可能です。
ただ、管理組合自治主義の考えにもとづき、国の「標準管理規約」では、管理者(理事長)を区分所有者の中から選任するとともに、理事会による組合運営を想定しています。
しかしながら、管理組合の運営には一定の専門知識が求められること、また昨今の高齢化等に伴う役員の成り手不足の深刻化を背景に、マンション管理会社(管理業者)が「管理者」を兼ねる運営方式のマンションが増えているのです。
このスキームを「第三者管理者方式」と呼びます。
【国交省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ」資料より】
このスキームの場合、上図のとおり、管理業者(マンション管理会社)が管理者を兼ねることによって、管理組合内に理事会(理事長)を設置する必要がなくなります。
そのため、管理組合の立場からすると、
区分所有者が理事会役員の就任義務から解放されるというメリットがあります。
一方、「管理会社が管理者を兼ねる第三者管理者方式」の場合は、理事会のチェックやモニタリング機能が働かなくなるため、性悪説で考えると「管理会社によるお手盛り運営」に陥る大きなリスクが潜んでいます。
その最大のリスクとは、管理組合との利益相反の問題です。
上の記事でも紹介されていますが、大規模修繕工事において発注側(管理者)と受注側(施工業者)が実質的に同一グループとなる場合に不適切な発注が行われることによって、以下のとおり区分所有者が不利益を蒙るリスクが生じると考えられます。
マンションの管理者には「管理組合の代表者」として広範囲な権限が与えられており、以下のような重要な議案を総会に上程することができ、原則として総会で出席者の過半数の賛成さえがあれば実行できてしまいます。
・管理費や修繕積立金、専用使用料の改定
・長期修繕計画の更新
・大規模修繕・設備更新を含む諸々の工事の発注
・管理規約の改定(特別決議事項:4分の3以上の賛成が必要)
・使用細則の改定
・今期決算報告と来期予算案
・管理委託契約の締結・更新
極端に言えば、
管理会社が自己の利益拡大を図るために管理委託費を増額したり、さほど必要性のない修繕工事を実施する。
その結果、管理組合の財政状況が逼迫したら、管理費や修繕積立金の増額改定を提案する・・といった「お手盛り経営」になる陥る可能性がないとは言えません。
こうした事情から、国はマンション管理組合が大きな不利益を蒙ることがないよう以下の論点でガイドラインの策定を進めているので、その概要を記しておきます。
利益相反リスクをどこまで低減できるかについては、
組合財産の管理方法、監事の権限と資格要件、管理規約の条文規定、大規模修繕工事等の実施方法をどこまでルール化できるかにかかっているように思います。
<参考記事>
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