マンション管理組合が守るべき資金運用の「基本スタンス」とは?

昨今、物価高騰と工事費の上昇が続くなか、マンション管理組合の資金不足問題が現実味を帯びています。

<参考記事>

www.nikkei.com

news.yahoo.co.jp<

1. 「預金」「すまい・る債」に代わる「第3の選択肢」!?

そんな中、最近では、資産運用サービス会社が「預金」や「すまい・る債」に代わる第3の選択肢」としてマンション管理組合向けに独自の金融商品を提案する動きも見られます。

 

<参考記事>

prtimes.jp

<

p data-path-to-node=”5″>上記のケースでは、管理組合の修繕積立金修繕積立金を「上場企業等の優良企業への資金を貸付用の資金」として運用し、
そのリターンとして管理組合に「分配金」が支払われるという商品です。

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p data-path-to-node=”5″>「利回り」と「運用期間」が
あらかじめ決まっており、
「投資をしたら運用を待つだけ」というのが謳い文句になっています。

また、信託スキームの導入によって、管理組合の資産はサービス会社の保有する資産とは切り離して運用・管理されるため、サービス会社の財務・信用リスクの影響は受けない、としています。

「預金より高い利回り」かつ「価格変動がない固定利回り」の金融商品

積立金不足に悩む管理組合にとって「救世主」が現れたようにも見えます。

ただ、「マンション管理組合の資金」という特殊な性格を考えたとき、

本当にこのスキームはうまくマッチするのでしょうか?

なぜなら、「スキームとして優れていること」と

「管理組合の運用方法として適切なこと」とは、

まったく別の問題だと思うからです。

2.  管理組合が注目すべき本スキームの特性

本スキームの肝は、投資家から集めた資金を「信託」という器に入れ、運用サービス会社の資産とは法的に切り離して管理する点にあります。

万が一、運用サービス会社が倒産しても、預けた管理組合の資産は保護されます。

しかしながら、ここで重要なのは、

「運用会社の倒産リスク」はなくとも、

「貸付先のデフォルト(債務不履行)リスク」はゼロではない

という点です。

3. 「リスク」と「リターン」の確認

【リスク】 

それは、貸付先企業の倒産リスクです。

過去のダイエー、そごう、SHARP、JALといった有名企業の例を思い出してください。

たとえ貸付先が上場企業であっても、「絶対安全」とは言えません。

本スキームは、「元本保証のない金融商品」であり、

もちろんペイオフの対象外でもあるため

銀行預金のように「1千万円以内なら保護される」という保証もありません。

【リターン】

一方、このスキームにおいて

管理組合に提示されている利回りは、年1〜2%程度です。

確かに、他の伝統的な運用手段に比べると有利な水準かもしれません。

ですが、この「わずかな上乗せ利息」のために、元本保証のない運用リスクを負担することに果たして合理性があるのでしょうか。

4. 「換金性」にも注意が必要!

管理組合の資金運用において、

意外と見落とされやすいのが「換金性・流動性」です。

このスキームでは、多くの案件が運用中の「中途解約」が原則として不可です。

もし運用中に震災等が発生し、

緊急修繕工事のために数千万円の資金が必要になったら?

銀行預金や国債であれば、利息を放棄さえすれば即座に換金できますが、

この「出口」がないことは、管理組合にとって大きなリスクになり得ます。

5.修繕積立金は、「減らすことが許されない」もの

強調したいのは、管理組合の資金は「余剰資金」ではないという点です。

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事などのために

確実に支出が必要になる資金です。

 

言い換えれば、「投資に回せる余剰資金」ではなく、

確定した債務のための準備金です。

したがって、運用の目標としては、

「利回りの最大化」よりも「資産価値の維持」を優先させる必要があるのです。

この「大原則」を忘れると、運用の舵取りは誤った方向に進みかねません。

6.資金運用方針のためのチェックリスト

管理組合で資金運用の方針を議論するなら、

最低限以下の項目についてチェックしながら検討することをお勧めします。

□ 元本保証の有無

□ ペイオフの対象か?

□ 中途解約が可能か?

□ 信用リスクの分析資料

□ 運用期間と長期修繕計画が整合しているか?

□ 運用上限額の設定

□ 総会決議の取付け

管理組合はリスクを取りに行く主体ではありません。

以上の観点を踏まえると、メガバンクの定期預金のほかに

現時点で推奨できる運用先は、以下の通りです。

(1)マンションすまい・る債

住宅金融支援機構が発行する、管理組合のための「王道」と言える運用先。

中途換金も可能で、利回りも底堅いですが、

確実に利息を手にするには「10年満期」で預ける覚悟が必要です。

また、「一括」だけでなく、「10回分割」でも預けられるので、

長期修繕計画とにらみながら運用方法をきめてください。

また、一口(50万円)保有しているだけで、支援機構から大規模修繕工事等の際に融資を受ける際には0.2%分金利が優遇されるという隠れたメリットもあります。

(2)管理組合限定の「優遇定期預金」

一部の地方銀行(横浜、香川、千葉、静岡など)では、

マンション管理組合専用の優遇金利」を提供しています。

たとえば、香川銀行の場合は、以下の通りです。

◾️ 預入期間:1年、3年、5年から選択可能

◾️ 預入金額:300万円以上 1億円以内

◾️ 利 率 :定期預金の店頭表示金利に「上乗せ利率」(+年0.2%〜0.3%)を適用

(3)「個人向け国債プラス」(2027年1月以降)

個人向け国債の購入者は、これまで個人に限定されていました。

 

しかしながら、財務省は国債の安定保有層の拡大を図るため、

対象を「一部の法人等」にも拡大し、商品名も「個人向け国債プラス」に変わります。

これに伴い、2026年12月募集分(2027年1月発行分)からマンション管理組合も購入できるようになる見込みです。

 

また、個人向け国債(変動10年)の利回りは、2026年2月募集分で税引前約1.48%となっています。

 

半年ごとに市場金利に応じて変動するため、金利上昇局面では利回りが高くなる点が強みです

 

そのため、個人向け国債は、

インフレ(金利上昇)への対応力」(変動金利の場合)

国債がゆえの安全性」(ただし、元本保証は無し)

を兼ね備えており、今後の資金運用先の「目玉」になるのは確実でしょう

7. まとめ

修繕積立金は、

「将来の安心・安全なマンションライフ」を実現するための必要資金です。

「高い利回りと引き換えにしたリスク」はなるべく避けて、

「安全性」・「持続可能性」により重点を置くべきです。

これが、資産運営主体として

マンション管理組合のあるべき基本スタンスだと思います。

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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