マンション管理組合が守るべき資金運用の「基本スタンス」とは?
2026/03/05

築25年を超えるマンション管理組合で直面する大きな悩みの一つが、
「機械式駐車場の空き区画問題と設備更新」です。
機械式駐車場は、経年劣化により築25年〜35年を目安に設備の更新期を迎えます。
その費用は設備の規模によって異なりますが、
1パレットにつき@140万円程度かかるとされているため、
数千万円規模に及ぶことも珍しくありません。
しかしながら、多くのマンションでは、
「そろそろ更新時期だから」という理由で、
半ば当然のように更新が検討されます。
しかし、本当にその設備は今後も必要なのでしょうか。
最近のコンサル会社の調査によると、機械式駐車場の稼働率は平置きに比べて低く、
「更新ありき」に疑問を持つ住民が増えていることが明らかになっています。
<参考記事>
本記事では、顧問先マンションの事例をもとに、このテーマについて考えてみます。
上記調査結果の内容を要約すると、以下のとおりです。
・築25年前後のマンションで、機械式駐車場の更新問題が顕在化しており、更新費用は5千万円超にのぼるという想定だった。
・一方、現状の駐車場の稼働率は7割台にとどまり、使用料収入とランニングコストがほぼ同水準の状況であった。
・アンケート調査の結果、以下のことが判明した。
イ)機械式駐車場への不満として、「所有する車が入らない」「出し入れが不便」「技術的に使用する自信がない」などの声あり。
ロ)設備更新の提案に対しては、「高齢化で⾞が不要な人が増える」「適切な台数に⾒直すべき」との声が上がった。
ハ)住民の多くが「更新ありき」の提案に疑問を持っており、「設備の撤去・平面化工事」を支持する割合が最多の54%を占めた。
・管理組合内で合意形成を図るには、下記の「3つのプロセス」が重要。
1)実態調査 :現在の稼働率の確認だけでなく「使われていない理由」を分析
2)アンケートの実施:「将来の利⽤動向」を含めて潜在的な需要を可視化
3)コストの見える化:更新費のほか、維持管理費を含む長期的な資金計画で比較
昨年、顧問先のマンション(都内・70戸)でも、機械式駐車場(36台)の老朽化に伴う修繕工事の問題が顕在化しました。
このマンションの機械式駐車場は、東側と西側で各18台(昇降式3段×6列)分のパレットがあります。
西側の装置は、現在もメーカーの部品供給が継続しており、現設備のまま修繕が可能な状況でしたが、東側は、メーカーが純正部品の生産をすでに終了しているため、設備の入れ替えが避けられないことがわかりました。
一方、このマンションでは、空き区画が増えており、サブリース業者を通じて賃貸している状況です。ただ、格安な賃料や税負担を考えると現状の区画数を維持することについては疑問の余地がありました。
その後、東側装置に関する改修プランの検討に着手し、
・修繕費の見積もり取得
・駐車場の需要調査のためのアンケートの実施
・今後の維持修繕コストの試算
などを進めながら理事会で審議を重ねました。
その結果、2つのプラン
<A案>機械式駐車装置の入替え案
<B案>既存装置を撤去のうえ平面化する案
に候補を絞り込みました。
ただ、<A案>については、現状のオール昇降3段式ではなく、
「昇降3段式と2段式の混成プラン」で検討することになりました。
アンケート結果を踏まえ、台数を減らしても「車両の高さ制限が緩和されるメリット」を優先させることにしたからです。
一方、今後30年間の維持管理費用を比較した場合、
<B案>の撤去平面化は、<A案>の5分の1の水準に抑えられるという
無視できないメリットがありました。
そのため、総会にどちらかのプランを上程するかを決める際に再度アンケートを実施したところ、悩ましい集計結果となりました。
A案(14票)とB案(15票)はほぼ拮抗し、
「理事会に一任」の回答が最多(19票)となりました。
そのため、再度理事会で審議した結果、多数に支持された<A案>が選定されたため、
総会に議案を上程し、4分の3以上の賛成が必要な特別決議が可決されたのです。
本件では、最終的な判断に至るまでに、以下の3つの観点から検討を行いました。
既存設備の中には基板等の重要部品の生産が終了しているケースもあるので、確認しましょう。
設備を更新する場合には、事故予防のための開閉ゲートの設置など新たな制約条件が生じたり、3段式から2段式へコンバージョン、撤去・平面化などの選択肢も増えます。
このような場合、同一仕様での更新が困難になるため、将来的な維持管理にも大きな制約が生じます。
現在の契約状況に加えて、将来の見込みも含めて需要動向を把握しましょう。
特に空き区画が目立っている場合、利用されない理由が
ア)単純な需要不足か
イ)機械式設備によるサイズ制限等が影響していないか
ウ)現状の使用料金が高すぎないか
など考えられる可能性をアンケートの選択肢に加えて確認するようにしてください。
当面の設備更新費だけでなく、保守点検費を含む今後30年間の維持修繕として集計し、各プランの比較をしましょう。
もっとも重要なことは、
「意思決定の順番」を間違えないことです。
これまでの経験から、
以下の順序でステップを踏むのがもっともリスクが低いと思います。
マンション内の駐車場の需要動向を把握する
設備更新の制約条件や他の選択肢を確認し、それぞれの見積もりを取る
検討対象の選択肢についてライフサイクルコスト(30年)を積算し、比較する
上記情報を可視化したうえで全住民に開示し、その意向を確認する
組合総会で決議する(平面化や台数が減る等、仕様が変わる場合は特別決議)
機械式駐車場の問題は、単なる設備更新の問題ではありません。
それは「意思決定の質」が問われる問題です。
大切なのは、前例を踏襲することではなく、自分たちのマンションにとって最適な選択が何かをフラットに見直すことだと思います。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.