マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
横浜市の大規模マンションで発覚したデータ偽装に関連する報道が、連日のようにマスコミで流れていますね。
最近は、もっぱら偽装した業者をターゲットに、別件でも偽装がないか調査の進捗状況を報告しているようです。
ただ、この問題の本質は「データ偽装」だけではなく、杭打ちが強固な地盤面に達していないことやコンクリートの注入量の不足といった「手抜き工事」が行われたことにあります。
ただ残念ながら、こうした「手抜き工事」は古くて新しい問題であり、特に珍しいわけではありません。
今回の横浜のマンションについても、比較的大きな地震によって手摺りがズレるなどの不具合が生じたという偶然をきっかけに、問題が明るみになったに過ぎません。
まさに「氷山の一角」だと言えるでしょう。
私が顧問を務めている管理組合のマンションでは、大規模修繕を実施する段階で広範囲にわたる外壁タイルの浮きが見つかりました。不具合と判定された面積の大きさから考えて、おそらく施工業者の故意によるものではないかと思われます。
その結果、この管理組合としては修繕積立金が将来不足することが確実な状況の中、当初の工事予算を4割以上も超過して補修しなければならなかったのです。
発覚当初は売主のデベロッパーを訴えようと考えたようですが、すでに築10年を超え保証期間を経過しており、訴訟を起こしても勝ち目はないだろうという弁護士の見解から、結局は泣き寝入りした格好になったわけです。
かつて福岡県のマンションでは、本来必要な耐震強度基準の2割しか満たされていないことが発覚しましたケースもありました(参照:福岡発・耐震偽装マンションはなぜ建替えが認められないのか?)。
加水コンクリート(必要なコンクリート量を減らして水で薄めた生コンクリート)の使用や、地盤強度に関する虚偽申請が行われていたようです。ちなみに、施工業者は誰もが知っている大手スーパーゼネコンです。
こうした手抜き工事が横行する要因とは何でしょうか?
私は、かねてより建築業界の商慣習の中に構造的な問題があると考えています。
(1)元請けゼネコンからの発注における複層的な下請け構造
ゼネコンを頂点とする元請け→下請け→孫請け→ひ孫請け…という業界のピラミッド構造の中での業者間の力関係が影響していると思われます。
しかし、そのピラミッドの頂点に君臨する元請けゼネコンさえも、デベロッパーなどの発注主に対しては請負を「請け負け」だと卑下するほど立場が弱いと言われています。
その元請けが発注主に厳しいコストダウンや納期を要求された場合に、そのしわ寄せがより立場的に弱い下請け業者や孫請け業者に影響するのは想像に難くありません。
(2)第三者の専門家のチェックを受けない責任施工方式
いわゆる「一括下請け」はすでにご法度であるものの、下請けへの「丸投げ」が業界の体質的な問題として存在しているのは事実でしょう。
その中で、特にわが国の場合、いわゆる「責任施工方式」として工事仕様の作成(設計)から施工、工事監理(品質のチェック)までのすべてを施工会社1社にすべて任せる方式が採用されるのが一般的でしょう。
このスキームの場合、技術的なチェックや判断を施工会社1社に委ねてしまう形になるため、どうしてもチェック機能が働きにくいという問題があります。
こうしたリスクをなるべく回避するには、設計監理を施工業者との利害関係がない設計事務所に依頼するなど、外部からのインスペクションを活用するしかないと思います。
さて、
冒頭の横浜のマンションについては、売主側から全棟一括建替えを基本方針とした区分所有権の買取り等の補償プランが提示されているようです。
提示を受けた管理組合では、売却処分で関係を断ち切ろうとする区分所有者のグループと、建替え後も居住を希望するグループで大きく二分される可能性が高いと思われます。
もしそうなら、売却を希望する前者の区分所有権を売主(デベ)が買い取り、大口所有者として後者のグループと建替え計画を協議して進めることになります。
管理組合全体で捉えると、買取の進捗が進むにつれデベの発言権が大きくなり、最終的に8割のシェアを握ればデベ側の裁量で建替えを推進できる理屈になります。
管理組合の役員さんたちは、一区分所有者・生活者としての立場と、管理組合の代表者としての立場の狭間でどう行動すべきか苦悩されているのではないでしょうか。
さぞご心労のことと拝察するしだいです。
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