マンション修繕積立金の増額幅を大幅に圧縮できたワケ
2025/01/06
月2日付の東京新聞に、「マンションの大規模修繕積立金 定期的に計画見直しを」と題する記事が掲載されていました。
本記事を要約すると、以下のような内容です。
■マンションの維持に欠かせないのが、10数年ごとの大規模修繕工事だ。毎月住民が支払う修繕積立金が工事に使われるが、その金額は将来予想される工事をまとめた長期修繕計画が根拠となる。
■しかしながら、計画の漏れが判明して修繕積立金の値上げに踏み切る管理組合もあり、定期的に見直しをしておきたい。
■名古屋市内にある築30年の分譲マンションの管理組合では2017年1月から、毎月の修繕積立金を一律8千円値上げした。
■値上げ前の修繕積立金は専有面積に応じて7,500~8,000円だったので、ほぼ倍増したことになる。
■値上げに踏み切ったのは、長期修繕計画に漏れがあったため。数年前に給排水管のメンテナンスをした際、将来的に管の取り換えをする必要があると分かったが、計画には入っていなかった。
■新築で計画期間30年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は約65%。また、修繕積立金だけで工事費がまかなえた組合は約80%。残りは住民から臨時でお金を集めたり、融資を受けたりしている。
■長期修繕計画の見直しなどで修繕積立金の値上げが必要だと分かった場合は、管理組合は根拠を示して住民の合意形成を進めていくことが大切である
このテーマについては本ブログでも実例をご紹介しましたが、このように新聞に取り上げられるということは、世間的には珍しいわけではなさそうです。
<参考記事>
今春からコンサルを開始した、都内の某大規模タワーマンション(約400戸)の長計をチェックしていた時のことです。
現在徴収している修繕積立金は、1㎡あたり150円/月。
新聞記事にも紹介されている、国交省が示したガイドラインよりも低いにもかかわらず、計画期間の資金収支上は大きく「黒字」になっていました。
どうにも腑に落ちないのでその長計をつぶさに調べてみたところ、謎が解けました。
30年間の長期修繕計画(築6年目から築35年目まで)の中に、エレベーターや機械式駐車場、給排水設備といった主要な共用設備の更新にかかかる費用(約10億円)が除外されていたのです。
そして、これら一切合切の実施時期が、計画期間の翌年である「築36年目」(!)に設定されていました・・・。
築36年目を対象期間に加えた場合には、明らかに資金ショートしてしまいます。
これは、きっと作成者(管理会社)が意図したものだろうと思います。
ここまで酷いのは例外としても、
給排水管の更新時期を計画期間の対象外に設定してしまうケースは時々見られます。
この背景には、管に使われる材質が、時代とともに耐久性の高いものに進化しているからです。
マンションの給水管の場合、70年代の中盤までは鉄管の内面に「亜鉛めっき」が施されているだけのため15年~20年程度で腐食し、赤水や漏水などの発生原因となっていました。
その後登場したのが「硬質塩化ビニルライニング鋼管」で、現在最も多くのマンションで使用されているとされています。
そして2000年以降は、より耐久性の高い「ステンレス管」を採用する事例が増えました。
ステンレス鋼管はその耐用年数が30年超とされているため、新築当初の長期修繕計画で見込むのは時期尚早と判断し、その費用をあえて計上しないことがあるのです。
とは言え、ステンレス管でも経年劣化は避けられず、いつかは取替えざるをえないでしょうからどこかの段階でその資金を工面する算段をしておく必要があるでしょう。
つまり、共用設備全体の更新費用をカバーするための必要資金総額を確認したうえで、それを長期的に無理なく賄えるような修繕積立金の徴収方法を選択することが大切なのです。
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