附置義務条例がマンションの駐車場問題解決の妨げになるか?

1月6日付けの「東洋経済オンライン」に、「知られざる地雷、「マンションの駐車場」問題 行政の「付置義務」が解決を難しくしている」という記事が掲載されています。

toyokeizai.net

本記事を要約すると、

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■  高齢化の進展でクルマを手放す住民が増える一方、若者のクルマ離れで新たに駐車場を借りる住民は減っている。このためマンション内の駐車場で空きが目立ち始めている。

■  東京都江戸川区のマンション(築10年・160戸)では、機械式駐車場が54台分設置されているが、すでにうち15台が空いている。

■  今から20年後に迎える大規模修繕計画では、立体駐車場をリプレースする費用として約2億円弱が予定されている。このまま放置していれば、年間490万円、20年間で9,800万円も資金が不足する。収入不足はそっくり将来の駐車場の更新費用不足となる。

■ このマンションでは、駐車場分だけでなく全体の修繕費が不足していた。理事長は理事会で修繕積立金の値上げを訴えたが、「まだ先の話」と値上げ案は却下された。

■神奈川県横浜市にある築2年のマンションでも、竣工当初から駐車場の稼働率は7割程度だったため、外部への貸し出しなどを検討した。

■しかし、マンション敷地内へ外部者が立ち入ることがネックとなり、セキュリティ面から断念。そこで長期修繕計画の見直しと合わせて、立体駐車場の一部を潰して平面式に転換することで、負の遺産とならないよう模索している。

■ただ、こうして早くから見直しに着手できるのは異例中の異例。そもそも危機意識が薄く、潰す決断そのものができるマンションは少ない。

■  空き駐車場を潰す際の問題として、各自治体の条例による「付置義務」が大きな足かせとなっている面もある

■ 東京都の場合、延べ床面積が1万平方メートル超など一定規模以上の集合住宅では、原則として居住戸数の30%以上の台数の駐車場の付置が必要とされる。 千葉県浦安市でも、100戸以上のマンションの場合には住戸数に対して100%以上が必要。

■国土交通省は2017年末に商業ビルや事業用ビルに対しては、付置義務台数の緩和に乗り出したが、マンションに関しては「各自治体が考えるべき」と素っ気ない。

■その間、空き駐車場はじわじわと管理組合の財政をむしばみ続ける。少なくとも過大な付置義務は早急の見直しが必要だ

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昨年、本ブログでも取り上げましたが、都区部の新築マンションの駐車場については平均附置率が3割を下回っているというデータが出ていて、駐車場の空き問題に対してデベロッパー各社が適切に対処している傾向が窺えます。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com本記事では、駐車場附置義務条例が、既存マンションにおける機械式駐車場の廃止の「足かせ」になっているとの見解ですが、本当でしょうか?

 

当然、新築マンションの開発においてもその地域の条例に従わねばならないはずで、それが3割程度の附置率で容認されているならば、既存マンションが駐車場を一部廃止したとしても特に問題にはなるとは思えません。

 

浦安市の条例は例外的に厳しい部類に入ると思いますが、「附置義務条例の存在が駐車場の(一部)廃止のネックになる」という見方はさすがに「穿ち過ぎ」なのではないかと思います。

 

ただ、管理組合の財政にとって、駐車場の空き問題が「地雷」化しているのは間違いないでしょう。

 

その最大の原因は、(毎度の話ですが)区分所有者の「無関心」が問題の気づきと解決を遅らせていることにあります。

 

駐車場収入が管理費とともに管理組合の貴重な収益源となっているケースが多く見られますが、稼働率低下に伴って収入も減るものの、保守点検費や修繕費は変わらず必要なため、さらに収支が悪化すれば管理費等の値上げリスクに直面することになります。

 

そのため、管理組合内での関心を高めるためにも、機械式駐車場の空き問題を抱えている場合には、総会の場でこの問題を取り上げて組合内で共有することがまず必要です。

 

そして、空きが多い原因として使用料や利便性の問題、あるいは(賃借人が利用できないなど)規約や使用細則に原因がないかなどを確認するためにアンケートを実施することをお勧めします。

 

もしマンション内に「実需」がないことを確認できたうえで、空き区画を外部に貸し出す検討をする場合には、以下の2点に留意して慎重に進めましょう。

 

1)マンション内のセキュリティ面で譲歩せざるを得ない部分が出てくるため組合内でのコンセンサスが得られにくいこと

2)サブリース業者等に貸し出しても市価に比べてかなり低めの条件になるうえ、法人税の課税対象になるので実際の「実入り」はそれほど期待できないこと

 

そして外部貸しの実現も難しい場合には、既存設備を一部撤去して平面化するという「荒療治」も視野に入れることも必要でしょう。

既存設備を撤去して鋼製板敷きにするなどの平面化工事にはここ数年でかなり普及し始めています。

もちろんそれにも相当の費用がかかりますが、将来の設備更新の負担に比べれば割安(半分程度で済む)ですし、平面化した区画については、定期保守点検費用も節約できるというメリットもあります

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.comただ、こうした解決案もすべて管理組合の総会決議を経ないと実現できないため、区分所有者全体の理解が欠かせません。

それには、理事会を中心としたリーダーシップをもとに、日々の広報にも努力を惜しまず説明責任を果たしていく活動が大切だと思います。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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