マンション管理業界のトレンドは、管理委託費の値上げと第三者管理方式の増加

11月15日付けの「不動産経済オンライン」に、「7割が直近5年で管理委託費の値上げ ―分譲マンション組合調査、値上げ受入は10%まで」と題した記事が掲載されていました。

 

<参考記事>

fk-online.jp

本記事の要約は以下の通りです。

=====

 マンション管理支援アプリ「クラセル」を提供するイノベリオスは、分譲マンションの管理組合にマンション管理に関するアンケート調査を行った。(本年9月、分譲マンションの区分所有者253名に実施。)

1)管理委託費の水準について

「高い」:42%、「妥当」:34%、「安い」:10%

2)直近5年間で管理委託費の値上げ要請があったか?

「ある」:68%、「ない」:27%

3)今後、管理委託費の値上げ要請があったらどうするか?

管理会社の変更や自主管理への移行を検討する」:53%

「ある程度の金額までは値上げを受け入れる」  :31%

4)受け入れられる値上げ幅について

「10%アップ程度」:82%

5)管理会社に期待すること

「管理組合目線での提案力」:56%で最多。

その他は、「管理員のレベルの高さ」と「フロント担当者の対応の迅速さ」が多かった。

6)管理会社による「第三者管理方式」について

「利益相反の問題がネックで反対」:61% が多数を占めた。

「管理組合の負担軽減は魅力。費用が増えないならOK」:21%、

「費用が増加してもお願いしたい」:5%。

7)電気自動車の充電器を設置する必要性について

「将来は必要になると思うが当面は様子を見たい」:40% と最多

「一部の人しか恩恵を受けないので設置は反対」:19%

「早めに設置すべき」:12%

=====

もっかのマンション管理業界のトレンドは、

「管理委託費の値上げ」と「第三者管理方式の増加」の2つでしょう。

 

管理員などの人手不足や最低賃金の上昇等で、管理会社が管理委託費の増額改定を要請する事例が増えているのは間違いありません。

 

特に30戸以下の小規模のマンションに対しては、得られる売上収益に対して、理事会の運営サポートなどの手間がかかるのは大規模物件とあまり変わらないため、「解約もやむなし」という覚悟で増額を要請したり、新規の受託も辞退するケースが増えています。

 

ただ、ほとんどのマンションでは委託当初の管理委託費が割高な水準にありますから、管理員業務費は多少上がっても、他の経費を見直すことでトータルで減額できるケースも少なくありません

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

一方、第三者管理方式の増加も、管理会社側からすれば、理事会の運営をはじめとする事務管理業務の負担を軽減したいという思惑が背景にあるように思います。

 

 

役員の成り手不足に悩むマンションでは、輪番制も機能しなくなり、総会を目前に控えて管理会社が何人もの候補者に電話でお願いしながら断られて苦労しているという声も聞きます。

 

区分所有者の高齢化が急速に進行する中、これまでの「管理組合の自治」を前提とした運営スタイルが次第に成り立たなくなっているのです。

 

こうした事情もあり、従来の理事会方式に代わって、管理会社に管理者の業務も委託するスキームの新築マンションが現れ始め、一部の管理会社では既存物件でも「第三者管理方式」への移行を勧める事例も見られるようになりました。

 

ただ、Jリート、賃貸ビル、賃貸マンションなどに見られるとおり、

不動産の運営において「所有と経営の分離」は業界の常識です。

 

しかしながら、なぜか分譲マンションだけ、いまだにそれができていない。

管理組合(=区分所有者)が主体になって運営することが前提となっています。

 

なので、第三者管理への移行自体は、「所有と経営の分離を実現する近道」という点で、基本的には賛成します。

 

ただし、管理会社に管理者を委託するのはかなりリスキーです。

管理会社の「お手盛り」になる可能性が高いからです。

 

もし「理事にならなくて済むならいいんじゃない」としか思っていないなら、

率直に言ってかなり「おめでたい」です。

 

管理会社による第三者管理方式の課題を考えるうえで、以下の質問について考えてみてください。

・誰が管理者の業務状況をモニタリングするのですか?

・組合口座の通帳と印鑑を管理会社にセットで預けても大丈夫ですか?

・将来、管理者を解任して新たに選び直す余地が管理規約にありますか?

・修繕工事の必要性の判断や発注金額は管理者(管理会社)にお任せでよいのですか?

 

こうした課題をクリアするために、国交省は今年の8月に策定した「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ」にもとづいて、第三者管理方式における留意事項を示したガイドラインの整備等に向けた検討を行うべく、10月に「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を設置しました。

 

www.mlit.go.jp

第三者管理方式に関心のある方は、上記サイトを覗いてみてください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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