タワーマンションの財政状況を改善するのが難しい2つの理由

8月25日付のプレジデント・オンラインに、「タワマンが積立金不足でスラム化の可能性」という記事が掲載されていました。

 

president.jp

本記事の要約は以下の通りです。

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■近い将来、多くのタワーマンションで顕在化してくるのが、修繕工事費不足の問題だ。タワーマンションの修繕コストは、通常のマンションの約1.5倍はかかる。

■十分な修繕費が準備されていない主な理由は、デベロッパーが新築マンションを販売する際、修繕積立金を低めに設定する傾向があるからだ。

 

■1回目の大規模修繕工事は、積立金で何とか乗り越えられる確率が高い。問題なのは、築後30年前後で行われる2回目の大規模修繕工事で、エレベーター、機械式駐車場、空調など設備機器の更新が必要になるなど、莫大な資金が必要になる。

 

■修繕資金が足りない場合、一戸あたり50万~100万円の一時金を徴収する、または管理組合全体でローンを組むなどの方法がある。しかし、多くのマンションでは、「積立金の範囲内でできることだけをする」というもので、これだと建物が劣化していく。

 

■最近建てられたマンションは適切なメンテナンスがなされていれば100年以上は余裕でもつものも少なくないが、管理を怠れば資産価値は暴落し、ゆくゆくはスラム化することにもなりかねない。

 

■現在、国土交通省は都市計画情報、取引価格、管理情報などを盛り込んだ不動産のデータベースづくりを行っている。これらの情報開示が進めば、一般の人たちにもマンションの管理組合の運営状況が可視化されていく。マンションも管理の状況次第で価格格差が広がるはずだ。

 

■早くから修繕積立金を適正価格に上げる策をとっているタワーマンションは、住民のリテラシーが高く、維持管理が行き届いている可能性が高い。またホームページを持ち、管理組合が継続的に情報を更新しているマンションも優良であるケースが多い。

・・・・・・

分譲マンションにおける修繕積立金の不足問題は、街中で普通に見かける中低層マンションにも当てはまる重要なリスクで、何もタワマンに限ったことではありません。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

分譲デベロッパーが均等積立てを前提とした修繕積立金の半分以下の水準で設定しているのはタワマンと同様の事情だからです。

 

したがって、2回目の大規模修繕やエレベーター等の設備更新などが重なる25年目~30年目あたりで修繕資金がショートするのは、ほとんどの分譲マンションが直面する問題なのです。

 

そのため、なるべくそうした憂き目に遭わないよう、早期に管理委託費をはじめとする割高なランニングコストを適正化(削減)して毎年の剰余金を増やすことを管理組合が着手すべき「一丁目一番地」の対策として強く勧めているのです。

 

しかしながら、タワマンの場合、こうした「管理見直し」の効果が一般のマンションに比べてあまり期待できないケースが少なくありません。

 

その理由は、大きく2つあります。

 

(1)「過剰仕様」のために人件費が嵩むというコスト構造

先日も都内のタワマン(400戸超)について管理委託費の適正化診断を行ったのですが、現在の管理仕様を変えない限り、ほとんど下がらない、という結果になりました。

 

このマンションの場合、管理委託費全体として約8千万円弱かかっていますが、その7割強に相当する5千万円強が、管理員・コンシェルジュ・警備員・日常清掃に充てられていたのです。

 

各要員の時間当たり単価は、現在の労働市場の需給状況に鑑みればほぼ妥当であることが分かり、削減余地はほぼありませんでした。

 

ただ、下図で示した各スタッフの勤務体系のように、朝から夕方までのデイタイムは毎日管理員2名とコンシェルジュ1名、警備員の合計4名が待機しています。(夜間も管理員と警備員の2名が駐在。なお、機械警備は別途付帯されている・・)

 

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どう見ても治安のリスクがあるエリアでもないのに、ここまでスタッフを張り付ける必要があるのか甚だ疑問です。

 

これはマンション販売時のいわゆる「ホテルライクな生活」というキャッチフレーズの反映なのでしょう・・。

 

ただ「過剰な仕様」だからと言っても、入居当初からの仕様を多少でも落とすことについて多数の居住者がいる管理組合内で合意形成を図るのはなかなか容易なことではありません。

 

(2)保守点検費が下げらないハイエンドな共用設備の存在

このタワマンでは、分速120メートルの高速エレベーターが5台設置されています。

また、駐車場としてタワー式の設備が2基(各60台収納)も付帯しています。

 

この2種類の設備の維持管理費の合計だけで年間約1千万円かかっています。

しかし、現状ではこれらの設備の保守点検費用はほとんできません

 

その理由は、それぞれの設備に付帯している制御関係の装置がハイエンドな仕様になっているため、それを製造したメーカー系の保守会社でないと取り扱いができないからです。

 

つまり、他の保守会社に任せる選択ができないため、競争原理が働かないのです。

 

こうした2つの理由から、一般的なマンションと比べると、タワマンでは「管理見直しによる剰余金の創出」という武器が思うほど有効に働きにくいわけです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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