マンションの修繕積立金が足らなくなる理由を間接的に明らかにした日経新聞

10/19付けの「マネー研究所|NIKKEI STYLE」で、「資産か廃虚か 日本のマンションの未来予想図」という記事が掲載されていましたので、紹介します。

 

style.nikkei.com

本記事を要約すると、概ね以下の通りです。

■ なぜ修繕積立金は不足するのか?

・たとえば、都内にある中古のワンルームマンションでは、修繕積立金は月1500円で全然足りない。20平米のマンションなら月4000円はためないと2回目、3回目の大規模修繕に対応できない。

 

・マンションの購入者は、ローン返済の他に管理費と修繕積立金を支払わなければならない。修繕積立金を高く設定したらマンションが売りにくくなくなるので、限りなくランニングコストを安く見せたいと考える販売側(デベロッパー)の都合によって安く設定されている

 

・修繕積立金は、一般的には1平米当たり毎月200円ほど必要。例えば100平米のマンションだったら、1年目から毎月2万円ためていれば足りる。

■ マンションの空き家リスクは大きな課題

・マンションの動向は日本経済にとっても大きな影響がある。修繕や管理がおぼつかなくなると、マンション1棟全部がスラム化していく。特に郊外の不便な場所にある物件は深刻。

・都心から遠いところにばかりに住宅を造ってきたのは、1970年代に深刻な住宅不足に見舞われたため、法律を作って5年ごとに何戸造るという計画を進めてきたから。また、普通の勤め人は郊外の物件しか買えなかった。

・しかし、今は人口減少と少子高齢化のせいで、郊外でバス便のマンションだと1棟50戸の中に5戸とか10戸しか人が住んでいない建物がたくさんある。これが全国的に広がりそう

 

バブル崩壊後、景気対策として新築住宅の購入を促す政策を20年ほどやってきた結果、全国に空き家が増えた。住宅の総量をコントロールする政策が不可欠だ。

■マンション管理組合がぼったくられる理由

マンションの管理は管理会社がやるものという意識が長らく住民にあった。いつの間にか管理会社がすべてコントロールするようになった。

 

・マンション管理会社は、12年目などの時期になると、大規模修繕の見積もりを管理組合に送りつけていました。これまで組合はそれを鵜呑みにしてきた。

 

・それはよくないと、新たに設計コンサル会社が登場するようになった。修繕項目をチェックし、工事業者の相見積もりを取り、ベストな業者に依頼するよう仕切るのが仕事。 しかも、コンサル報酬が非常に安い。

 

・実は、そのコンサル会社は工事会社とグルになっていて、工事の受注を落札した会社から10~20%のバックマージンを受け取っている

 

先日も、顧問先のマンション(築21年目)で今後30年間の長期修繕計画の更新案について管理会社から説明がなされました。

 

均等積立方式で徴収するなら、現在平米単価で200円の修繕積立金を400円以上に増額する必要があるとのこと。

 

つまり、「将来資金がショートするから、2倍にしなさい」というわけです。

(もちろん立場上「しなさい」とは言いませんが・・・。)

 

このマンションでは、

3年前に修繕積立金の徴収額を平米単価90円から200円に倍増したばかりです。

 

しかし、それでも足らないので今回さらに2倍、つまり当初に比べて4倍にしなければならないのです。

 

<一般的なマンションの長期修繕計画における修繕積立金の増額プラン>

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20160524145815p:plain

 

こうした状況を招いた責任は、管理組合側にはないと思います。

 

本記事にも必要な積立金の「目安」が紹介されていますが、

たしかに国交省の「修繕積立金ガイドライン」によると、平米単価で月額200円が必要とされています。

 

しかし、それはマンションの建物本体の部分だけの金額です。

 

機械式駐車場が附設されている多くのマンションでは、その設備の修繕費も加算する必要があるのです

 

このマンションには全戸分の機械式駐車場があるため、必要な修繕積立金を算定したところ、大幅に加算されて月額340円になってしまいました。

 

マンション販売時においても、当初の設定金額(90円)では将来足らなくなるのは「想定内」だったわけで、「あとは野となれ、山となれ」という発想のデベロッパーの道義的な責任は免れないでしょう。

 

しかしながら、

このマンションでは3年前に割高だった管理委託費を3割削減できたため、その経済効果によって収支剰余金が毎年大幅に増え、平米単価に換算すると80円近い経済効果が得られました。

 

つまり、管理費会計の剰余金を繰り入れることで、実質的には280円の修繕積立金を徴収できており、さすがに倍増までの必要はなくなったのです。

 

マンション管理組合が修繕積立金の不足問題をソフトランディングさせるのに、管理コストの適正化は不可欠な手段なのです。

 

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com


The following two tabs change content below.
村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

関連記事

コメントは利用できません。

セミナー案内

  1. 【終了しました】11月度マンション管理セミナー開催のお知らせ

イロドリストなブロガーたち

ページ上部へ戻る